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ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』あらすじと感想~劇団四季のミュージカルの原作はサスペンス感満載の作品だった!

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ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』あらすじ解説と感想~劇団四季のミュージカルの原作はサスペンス感満載の作品だった!アンドリュー・ロイド=ウェバーの天才ぶりを実感!

今回ご紹介するのは1910年にガストン・ルルーによって発表された『オペラ座の怪人』です。私が読んだのは2000年に角川書店より発行された長島良三訳の『オペラ座の怪人』2022年第42刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

十九世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跳梁する人影…“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は一体何者なのか?オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウルは、この怪異に巻き込まれる。そしてその運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれてゆく。オペラ座の地下で、闇を支配する怪人と対峙したラウルが目にした、想像を絶する光景とは?そして怪人と歌姫の真実とは?不朽の名作『オペラ座の怪人』の新訳決定版、ついに刊行。

Amazon商品紹介ページより
ガストン・ルルー(1868-1927)Wikipediaより

著者のガストン・ルルーは『黄色い部屋の謎』などの探偵小説でも有名なフランス人作家です。

そんなガストン・ルルーの代表作こそ、あの『オペラ座の怪人』になります。

『オペラ座の怪人』といえば何と言ってもミュージカルですよね。

私もこのミュージカルが大好きです。

学生時代、『オペラ座の怪人』の長年の大ファンであるおばに連れていってもらったのがきっかけで、私もこの作品の魅力にすっかりはまってしまったのでした。

それ以来、私は劇団四季さんの『オペラ座の怪人』を何度も観劇しています。

映画『オペラ座の怪人』を観た時も、息もできないほど号泣したのを覚えています。

そしてそんな『オペラ座の怪人』の原作をいよいよ読んでみようと思い、今回この本を手に取ってみたのでありました。

さて、この小説の舞台であるパリのオペラ座。(写真はブログ筆者撮影)

この建物についてフランス文学者鹿島茂氏は興味深い解説を『文学的パリガイド』という本で述べています。

一八五八年にナポレオン三世の暗殺未遂事件が起きると、ナポレオン三世は、事故の原因はオぺラ座が警備のしにくい路地にあることだと考え、折から大改造中のパリにふさわしいオぺラ座の建設を決意する。一八六一年にコンぺが行われ、新鋭シャルル・ガルニエのプランが採用された。ヴィオレ・ル・デユックと親しかったウージェニー皇妃はこのガルニエのプランが気に入らず、「これは何なの・古典様式ではないし、ルイ十六世様式でもないわね」と不満をもらした。すると、ガルニエは「いや、これはナポレオン三世様式です」と答えたという。

ガルニエの予言通り、新オぺラ座は第二帝政を代表する建築物となり、その折衷様式がナポレオン三世様式とか第二帝政様式と呼ばれるようになったが、ナポレオン三世の在位中には辛うじてファサードが間に合っただけで、ついに完成をみなかった。

その原因は、この巨大な建築物の基礎工事に多くの時間と費用を要したことにある。というのも、地下を掘り進んでいくとローマ時代の巨大な採石場跡にぶち当たり、そこに地下水が流れ込んで、「湖」のようなものができてしまったからである。この「オペラ座の地下の湖」というエピソードに着想を得て、一九一〇年に『オペラ座の怪人 Le Fantôme de l’Opéra』を書き上げたのがガストン・ルルーである。

中央公論新社、鹿島茂『文学的パリガイド』P54-55

実際にパリのオペラ座の地下が湖のようになっていたというのは驚きですよね。しかもそれが古代ローマの遺跡だったというのですからさらにロマンチックです。そして鹿島氏は解説を続けます。

『オぺラ座の怪人』は、語り手の新聞記者がオぺラ座の古い記録を調べていくうちに、裏方たちが噂していた「オぺラ座の怪人」が実在していたと確信するところから始まる。

「それはほんの三十年ほど前の出来事だから、オぺラ座の楽屋へ行けば、当時の状況をいまでも昨日のことのように覚えている人たちが容易に見つかるはずだ。クリスチーヌ・ダーエが誘拐され、シャニー子爵が行方不明になり、兄のフィリップ伯爵が殺害され、遺体がオぺラ座の地下スクリブ街の近くに広がる湖のほとりで発見されるという、不可解で悲劇的な事件について、信頼できる話を聞かせてくれる謹厳な老人たちがいるにちがいない。しかし、そのような証人のなかには、今日まで、あの悲惨な事件を〈オペラ座の怪人〉という、いわば架空の人物と結びつけて考えたことのある者は一人もいなかった」 (『オぺラ座の怪人』長島良三訳・角川文庫)

中央公論新社、鹿島茂『文学的パリガイド』P55-56

原作の『オペラ座の怪人』を読んで何より驚いたのは、「オペラ座の怪人は何者なのか?本当に存在するのか?」というミステリー的な雰囲気でストーリーが展開していく点でした。

そして物語の後半ではまるでパニック映画さながらの展開が続いていきます。「ラウルははたして無事にクリスティーヌを救えるのか?その冒険の結末はいかに!?」というような筋書きはミュージカルから入った私からするとかなり面食らうものがありました。

というのも、ミュージカルではそもそも「怪人は本当にいるのかどうか」という問題は存在しません。なぜなら舞台上でかなり早い段階で登場するため、怪人の存在はすでに自明のものだからです。

しかもミュージカルでは「はたしてラウルはクリスティーヌを救えるか」というハラハラする冒険物語というより、怪人とラウル、クリスティーヌの恋の物語であるわけです。

私はこのガストン・ルルーの原作を読んで改めて思いました。

「このミュージカルを作り上げたアンドリュー・ロイド=ウェバーはなんて偉大なんだろう!」と。

原作のサスペンス的なストーリーから感動的なミュージカルへ。しかもミュージカル音楽の素晴らしさたるや!

原作で語られた怪人の歌声をここまで忠実に再現したアンドリュー・ロイド=ウェバーにはただただ驚くしかありません。

そして劇団四季のHPでは彼へのインタビューが掲載されています。これがまた面白いのでぜひともここで紹介したいと思います。

『オペラ座の怪人』を作曲したときの思いや苦労された点をお聞かせください

多くの作品がそうであるように、この作品もある意味で偶然から生まれました。

偶然に原作と出会い、”ここに面白い何かが潜んでいるのではないか”と感じたのです。

なぜ原作との出会いが偶然かといえば、それは原作が必ずしも歴史的名作ではないからです。

『オペラ座の怪人』は初め、大衆小説として出版されました。殺人小説なのかホラー小説なのか、歴史小説なのか恋愛小説なのかテーマも曖昧で、また当時出版された他の作品から様々な案も拝借しているようです。実は、『ノートルダムのせむし男』の映画化が成功したことで気を良くした映画会社のユニバーサル・ピクチャーズが、それに続くヒット作はないかと当時のフランス文学の中から面白い作品、それもフリークを題材にした作品を探し始めたのです。それにより『オペラ座の怪人』が発見されました。

ですから、『ノートルダムのせむし男』の成功がなければ『オペラ座の怪人』の舞台は生まれず、数ある大衆小説の中のひとつとしてやがてこの世から忘れ去られていたと思います。

劇団四季HPより

ここでロイド=ウェバーが述べるように、原作の『オペラ座の怪人』はそのままでは舞台として大ヒットするかと言われれば何とも難しい作品であったのです。ですがそこからインスピレーションを受けて新たに創造したミュージカルは空前の大ヒットとなります。

原作からの再創造。その最大の成功例がこの『オペラ座の怪人』と言えるのではないでしょうか。

劇団四季さんのHPでは他にもこの作品についてたくさんの解説がなされていますのでぜひご覧になって頂ければと思います。

私も大好きなミュージカル『オペラ座の怪人』。その原作を読めたのは非常に楽しい読書となりました。ミュージカルとはまったく別物と考えた方がいいです。これはこれでひとつの物語として楽しめます。読みやすく、ハラハラする展開であっという間に読み切ってしまいました。

ミュージカルファンの方にもぜひおすすめしたいです。この原作をミュージカル化したアンドリュー・ロイド=ウェバーの怪物ぶりがよくわかります。これは私にとっても非常に興味深いものがありました。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

また、2019年にブロードウェイで『オペラ座の怪人』を観劇した際のレポを以前当ブログでも紹介しましたのでこちらも見て頂けますと幸いでございます。

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以上、「ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』あらすじと感想~劇団四季のミュージカルの原作はサスペンス感満載の作品だった!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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