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ウナムーノ『ドン・キホーテとサンチョの生涯』あらすじと感想~ドン・キホーテ愛溢れる名著!読めば元気が出るおすすめ作品!

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ウナムーノ『ドン・キホーテとサンチョの生涯』概要と感想~ドン・キホーテ愛溢れる名著!読めば元気が出るおすすめ作品!

今回ご紹介するのは1905年にウナムーノによって発表された『ドン・キホーテとサンチョの生涯』です。私が読んだのは1972年に法政大学出版局から発行された佐々木孝訳の『ウナムーノ著作集2 ドン・キホーテとサンチョの生涯』1985年第3刷版です。

ミゲル・デ・ウナムーノ(1864-1936)Wikipediaより

著者のウナムーノはスペインの哲学者で「南欧のキルケゴール」の異名を持つ人物です。

ウナムーノについては前回の記事「佐々木孝『ドン・キホーテの哲学 ウナムーノの思想と生涯』南欧のキルケゴールと呼ばれたスペインの哲学者とドン・キホーテ」でご紹介しました。

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佐々木孝著氏の『ドン・キホーテの哲学 ウナムーノの思想と生涯』の表紙には、

現代に乗り遅れたスペインは、逆に後進性ゆえの不思議な魅力と可能性を秘めている。

そのなかでウナムーノは、ドン・キホーテの狂気と憂愁をとおし、スペイン精神の再生と不滅の生を終生の課題とした。

オルテガをはじめヨーロッパの思想家に多大な影響を与えた異才の生涯をはじめて世に問う本書は、同時にわれわれが持つ近代文明の精神的脆弱さをあらためて認識させてくれる。

講談社、佐々木孝著『ドン・キホーテの哲学 ウナムーノの思想と生涯』表紙より

と書かれていますが、今作『ドン・キホーテとサンチョの生涯』もまさに、ウナムーノのドン・キホーテへの溢れる愛とスペイン、そして人類への熱い思いが語られた作品となっています。

こちらは『ドン・キホーテとサンチョの生涯』の目次の一部なのですが、『ドン・キホーテ』を読んだことがある方はきっと驚くと思います。

なんと、この作品は原作の『ドン・キホーテ』と同じ構成で書かれているのです。

ちなみに『ドン・キホーテ』の目次が以下になります。

つまりこれはどういうことかと言いますと、ウナムーノは『ドン・キホーテ』の章立てに沿ってひとつひとつその思いを語っていくのです。

ですので、正直『ドン・キホーテ』を読んだことがない方にとってはさっぱりわからない作品となっています。

ですが『ドン・キホーテ』を読み、その面白さを共有できる人にとってはこれ以上ないくらいシンパシーを感じる作品と言うことができます。この本は『ドン・キホーテ』の解説書ではありません。南欧のキルケゴールと呼ばれる大哲学者の作品に対してこう言っていいのかわかりませんが、どちらかというと、「『ドン・キホーテ』のファンブック」と言えるような作品です。とにかくドン・キホーテへの愛が溢れています。

そして『ドン・キホーテ』からこんなにも豊かな教えを見出すことができるのかと驚くことになります。「なるほど!ここはそう解釈することができるのか」と、ウナムーノの深い洞察には何度も唸らされることになりました。

私はこの作品を読んで感激しました。「こんなに『ドン・キホーテ』を読み込み、熱き思いを語る人がいるんだ!」と胸が熱くなりました。「愛」そのものですね!それが伝わってくるんです!これはすごい作品です。

この作品は『ドン・キホーテ』ファン必読の名著中の名著です。

ただ、先ほども述べましたがこの作品は『ドン・キホーテ』そのものがわからなければさっぱりわかりません。

ですのでまずは『ドン・キホーテ』を読むことが第一です。ですが『ドン・キホーテ』はいきなり読んでもその面白さがわかりにくいというのは当ブログでもこれまで述べてきました。

というわけでまずは牛島信明氏の『ドン・キホーテの旅』がおすすめです。

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これを読めば『ドン・キホーテ』がいかに素晴らしい作品か、そしてその面白さがどこにあるかがはっきりわかります。これはありがたいです。

そしてそこから『ドン・キホーテ』を堪能し、流れが分かった上でウナムーノの『ドン・キホーテとサンチョの生涯』を読めばもう完璧です。

タイトルにも書きましたが、この作品は読めば元気が湧いてくる名著です。私も精神的にかなり落ち込んでいた時にこの本を読んだのですが、とても勇気づけられました。

まずは『ドン・キホーテ』を読まねばならないというハードルがあるかもしれませんが、この作品はぜひおすすめしたい名著中の名著です。現代日本においてもこの作品は圧倒的に大きな意味があると私は信じています。私はこれからも折に触れてこの本を読み返していきたいなと強く感じています。それほどこの作品のパワーはすさまじいです。

ぜひ『ドン・キホーテ』を読んでみて下さい。そしてウナムーノの『ドン・キホーテとサンチョの生涯』を読んでみて下さい。そうすれば私の言わんとすることがきっと伝わるのではないかと思います。

以上、「ウナムーノ『ドン・キホーテとサンチョの生涯』~ドン・キホーテ愛溢れる名著!読めば元気が出るおすすめ作品!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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