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『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』あらすじと感想~19世紀後半のロンドン市民の生活を知るのにおすすめ!

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ルース・グッドマン『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』概要と感想~19世紀後半のロンドン市民の生活を知るのにおすすめ!

今回ご紹介するのは2017年に原書房より発行された ルース・グッドマン著、小林由果訳『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』 です。

早速この本について見ていきましょう。

ヴィクトリア朝の英国人の生活を目覚めから就寝までレポートするという形式のかつてない歴史書。文献を駆使するのは勿論、生活様式を自分でも実践した著者が、労働者から貴族まであらゆる階級の真の姿をいきいきと描きだす。

ヴィクトリア朝の英国人になる方法!?
住居から衣類、食べ物まで再現する
BBCの歴史ドキュメンタリー番組で人気を博した歴史研究家が、多彩な資料とみずからの実践によってときあかす、ヴィクトリア朝の人々の生活、起床から就寝まで。

Amazon商品紹介ページより

この本は著者のルース・グッドマンが実際にヴィクトリア朝の生活を再現し、その経験も交えながら19世紀後半のロンドンの人々の生活を描きだしていく作品となります。

「訳者あとがき」ではこの本について次のように述べられています。少し長くなりますがこの本の魅力がわかりやすく解説されていますのじっくり見ていきましょう。

ヴィクトリア朝へようこそ。

本書はHow to be a Victorianを翻訳したものである。イギリスの黄金時代であるヴィクトア朝の人々の生活を朝から晩まで順に追っていく形で紹介している。

著者のルース・グッドマンはイギリスの家政史と社会史を専門とする歴史家で、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムなどの博物館や、歴史的名所、劇場、映画などでアドバイザーを務めたり、テレビ番組に出演したり、国じゅうでワークショップを開いたりと、精力的に活動している。中でもルース・グッドマンの名前を一躍有名にしたのはBBCの歴史ドキュメンタリー番組だ。(中略)

番組は主に、テーマとする時代の生活を、住居から衣類、食べ物まで、当時手に入った物だけを使って(あるいは作って)さまざまな専門家とともに再現するという内容である。出演者全員が当時の服装をしているので、見ているほうまでタイムスリップした気分になれる。

普通の歴史番組にも、映画やドラマにもない、独特のおもしろさがある。

本書の土台となっているのはVictorian、Farm(ニ〇〇九年放映)とVictorian Pharmacy(ニ〇一〇年放映)での著者の経験だ。本書下巻の口絵1の写真は前者の、ヴィクトリア朝の農場生活をテーマにした番組の一場面で、真ん中に写っている女性がルース・グッドマンである。この番組では家政を担当し、本書に書かれているような料理や洗濯、裁縫などに奮闘している。特に洗濯の場面でかき回し棒を使って懸命に衣類を攪拌する様子は非常に迫力があり、同時に、体力が大きく奪われていることが伝わってくる。

ヴィクトリア朝の洗濯がいかに重労働だったかを本書の中で著者が綿々と詳しく語っているのも納得だ。また、後者の番組の舞台はヴィクトリア朝の薬局である。ルース・グッドマンは水療法を試したり、薬草を摘んだり、コンドームを作ったりと、ここでもさまざまなことに挑戦している。そんな自らの身で体験したことを折に触れて紹介しているところが、無数に存在する、ヴィクトリア朝関連の本の中で、本書だけが放っている魅力のひとつだろう。

原書房、ルース・グッドマン著、小林由果訳『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』下巻P239-240

ここで紹介されているBBCの番組Victrian Farmの映像がYoutubeにありましたので以下に紹介します。11分頃から出てくる洗濯している女性が著者のルース・グッドマンのようです。見て頂ければわかりますように、ものすごい重労働です。現代の洗濯機のありがたさたるや!

では、引き続きこの本について見ていきます。

さて、本書のテーマはヴィクトリア朝の日常生活である。とはいえ個人の生活には社会が密接に関わっているため、時には俯瞰してざっと時代の流れを追い、時には完全に当時の人々になりきって細部をじっくりと見つめている。内容はじつに幅広い。服や髪型の流行、手作り化粧品の作り方、ダイエット、体の洗い方、トイレ、赤ん坊の服、料理、教育、スポーツ、社会問題、家事、性事情など、わたしたちが「当時の人々はどうしていたのだろう?」と疑問を持ちそうな事柄や、「へえ!」と思わず声を上げたくなる話が取り上げられている。目覚まし時計なしで定刻に目を覚ます方法とは?クリノリン着用時はどうやって椅子に座るのか?『大いなる遺産』のピップはどんなふうに授乳されていたのか?当時の水着の着心地は?―本文を読んで少しでも楽しんでいただけたら、訳者としてとてもうれしく思う。

つい現代の常識で考えてしまわないように、翻訳作業中は先入観をはずすことを心掛けていた。来る日も来る日も当時の文献に目を通していても、驚くことが何度もあった。とりわけ、当時の医療の世界でいかに換気の重要性が叫ばれていたか、閉め切った部屋の空気が恐れられていたかについては、そうした記述を見かけるたびに、自分が想像していた以上だったと認識をあらためた。その一方で、夢や不安を抱く心の動きはいつの時代も同じであり、人は知識や教育、経験によって、信じることが変わるだけなのだと実感している。一年間ヴィクトリア朝式の生活を送ったルース・グッドマンはそれこそ数え切れないほど多くの気づきを得ただろう。

ヴィクトリア朝はイギリス史の中で大変人気のある時代であり、日本にも多くのファンや研究者がいる。それでいてまだあまり知られていないことや翻訳されていない文学作品がたくさんあるので、今後日本で紹介されることを願う。

原書房、ルース・グッドマン著、小林由果訳『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』下巻P 241-242

ここで訳者が述べているように、この本ではヴィクトリア朝の人々の日常生活が描かれます。100年以上も前のロンドン市民がどんな生活を送ってたかがかなり詳しく語られます。しかも日常生活に密着していますので小説や映画などでもなかなか見られない部分まで知ることができます。

この本では意外な発見がたくさんあります。

この記事でそれを紹介してしまうとかなりの分量になってしまいますので、次の記事で改めて私が気になった箇所を紹介していきたいと思います。

きっと皆さんにとっても意外な発見になると思いますのでぜひ引き続きお付き合い頂けますと幸いです。

以上、「ルース・グッドマン『ヴィクトリア朝英国人の日常生活 貴族から労働者階級まで』~19世紀後半のロンドン市民の生活を知るために」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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