松村昌家『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』幕末明治の日本人が見たイギリスとは!

産業革命とイギリス・ヨーロッパ社会

幕末明治の日本人が見たイギリスとは!松村昌家『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』

今回ご紹介するのは2008年に柏書房より発行された松村昌家著 『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』 です。

早速この本について見ていきましょう。

英国と日本に残された資料を駆使して、英国内における日本使節団の足跡を再現し、彼らの体験と衝撃を歴史的・文化史的に検証する。THE ILLUSTRATED LONDON NEWSの図版など69点収録。

Amazon商品紹介ページより

松村昌家氏はイギリスヴィクトリア朝の研究者で以前当ブログでもドストエフスキーとのつながりから「松村昌家『水晶宮物語 ロンドン万国博覧会1851』世界初の万国博覧会とドストエフスキーのつながり」の記事でもご紹介しました。

そして今回の『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』 では、幕末維新期の使節団から見たヴィクトリア朝、そして万国博覧会を見ていくことになります。鎖国していた日本から飛び出て、初めて見るヨーロッパの機械文明を見た我らが使節団はどのような反応をしたのでしょうか。ちょうど2021年の大河ドラマではまさしく主役の渋沢栄一が1867年のパリ万国博覧会を訪れています。

圧倒的な文化の違いを見せつけられた日本人がそこで何を思い、そして何を持ち帰ってきたのか。そのことをこの本では学ぶことができます。

この本について、著者はあとがきで次のように述べています。

幕末から明治にかけての近代化の黎明期に、日本にとって最も影響力が大きかった外国をあげるとすれば、まずはイギリスであろう。

幕末の遣欧使節団がイギリスを訪れたのは一八六二年、そして明治新政府の全権大使としての岩倉具視の率いる使節団が、イギリスの主要都市を回覧したのは、それから十年後の一八七二年だ。水面下の、あるいは裏側の現実はともあれ、歴史の上ではヴィクトリア朝の最盛期であった。世界に先んじて産業革命を成し遂げ、工業化、機械化への移行に伴う大変動期の混乱が治まり、飢餓の一八四〇年代の危機を無事に乗り越えたイギリスは、一八五一年に世界初の万国博覧会を開くことにより、その進歩と繁栄を世界に向かって誇示した。その後をついで、二回目のロンドン万博が開かれた年一八六二年に遣欧使節団はイギリスを訪れて、大英帝国の偉大さを目の当たりにしたのである。

そして、ジェイムズ・モースの言葉を借りていうならば、「自信の高まり」の時代(一八五〇-七〇年)から「帝国の強迫観念」の時代(一八七〇-九七年)への移行期に、岩倉使節団はイギリスを訪れたのである。

このような驚嘆の国であり、かつ脅威の国でもあったイギリスに、初めて足を踏み入れた時の使節団は、その国のどこへ行き、何を見、何を考えたのだろうか。大いに想像をかきたてられる問題であり、また想像するだけでも興奮を禁じ得ない問題である。

もともと文学を主たる研究対象として、ヴィクトリア朝の歴史と文化の領域へ眼を向けつつあった私が、ヴィクトリア朝イギリスにおける日本使節団の足跡をたどり、彼らの見聞を文化史的に検証してみようと思い立ったのは、多分にこのような動機からであった。

柏書房、松村昌家著 『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』P295

この本では1862年のイギリス派遣第一弾と1872年の第二弾をそれぞれじっくりと見ていくことになります。

1862年の第一弾は後に倒幕へと向かって行く非常に緊迫した時代でした。そこで見聞を広めた者たちがそこからどのように日本を捉えようとしていったのかは興味深い所ですよね。また西欧の進んだ文明は当然ながら強力な兵器を擁しています。これら強力な兵器を目にした幕末志士はどう動くのか。幕府と薩長の戦いは、こうした西欧とどう関わっていくのかという問題が勝敗を分かつ大きな要因となっていきます。こうした面からもヴィクトリア朝を見ていくことができるのはとても面白かったです。

そしてドストエフスキーを学んでいる私としてはさらに胸が熱くなることに、彼ら使節団とドストエフスキーがあと少しで出会っていたかもしれないということでした。

1862年の使節団は4月30日から6月12日までイギリスに滞在していたそうです。

それに対しドストエフスキーは7月の上旬頃にロンドンを訪れています。

あとほんの少し互いに日にちがずれていれば同じ空間に日本人とドストエフスキーがいたかもしれないのです。

これはドストエフスキーファンとしては熱いものが込み上げてきました。

もちろん、当時のドストエフスキーはそこまで世界的に知名度があったわけではありませんし、シベリア流刑から帰って来たばかりの政治犯です。たとえ同じ期間に両者がいても会談することはありえないことだったでしょう。しかしヨーロッパ人たるドストエフスキーからすれば、もし彼らとすれ違えば日本人使節団の異様な服装や雰囲気はきっと記憶に残ったのではないかと思います。そんなことを想像しながら私はこの本を読んでいました。

日本の近代化にとっても非常に重要なこの2つの使節団。

彼らが何を見て、何を感じ、そして何を持ち帰り日本の国づくりに役立てようとしたのか。

これは非常に興味深いものでありました。

ぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「松村昌家『幕末維新使節団のイギリス往還記―ヴィクトリアン・インパクト』幕末明治の日本人が見たイギリスとは!」でした。

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