MENU

V・ザスラフスキー『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』あらすじと感想~ソ連が隠蔽した大量虐殺事件とは

目次

ヴィクトル・ザスラフスキー『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』概要と感想

今回ご紹介するのはみすず書房より2010年に出版されたヴィクトル・ザスラフスキー著、根岸隆夫訳の『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』です。

この本を読むきっかけとなったのは2019年の私の旅でした。

私は2019年にアウシュヴィッツを訪れるためにポーランドのクラクフへ向かいました。

あわせて読みたい
死の収容所アウシュヴィッツを訪れる①~ホロコーストから学ぶこと ポーランド編④ 2019年4月14日。 私はポーランド最大の目的地、アウシュヴィッツに向かいました。 幸い、朝から天候にも恵まれ、前日までの凍てつくような寒さも少し和らいだようだ。 クラクフのバスターミナルからバスでおよそ1時間半。 アウシュヴィッツ博物館前で降車します。 この記事では私のアウシュヴィッツでの体験をお話しします。

そして帰国後に北海道ポーランド文化協会の方とお話しする機会があり、その時にカチンの森事件のことを知ったのでありました。

第二次世界大戦中に起きたポーランドでの虐殺事件。大戦中の虐殺というとアウシュヴィッツのホロコーストがまず浮かんできがちですが、ソ連による虐殺も実はたくさんあったということを知りました。

そしてソ連史、特に独ソ戦を学んでいる今こそ改めてカチンの森事件について学びたいと思いこの本を手に取ったのでした。

では、この本の内容について見ていきましょう。

1939年8月の独ソ不可侵条約、それにもとづく両国の相次ぐポーランド侵攻、こうして第二次大戦ははじまった。

1940年春、ソ連西部、スモレンスク郊外のカチンの森で、ソ連秘密警察は約4400人のポーランド人捕虜将校を銃殺した。犠牲者数は、同時期に他の収容所などで殺されたポーランド人と合わせて22,000人以上。職業軍人だけでなく、医師、大学教授、裁判官、新聞記者、司祭、小中学校教師など、国をリードする階層全体におよんだ。

しかしソ連は、犯人はドイツであると主張。さらに連合国もすべてソ連の隠蔽工作に加担し、冷戦下も沈黙を守りつづけた。

ソ連が事実を認めたのは1990年、ゴルバチョフの時代。92年になるとスターリンの署名した銃殺命令書も閲覧可能になる。

スターリンが、ボーランドという国自体を地図から抹消しようとした理由は何か。

なぜゴルバチョフは、もっとも重要な文書の公開に踏み切れなかったのか。著者は簡潔にバランスよく、独ソ不可侵条約とカチン虐殺の関係、欧米列強の対応と思惑、歴史家の責任、さらにはカチンに象徴されるソ連全体主義の根本的を問題と、ふたつの全体主義国家(ナチ・ドイツとソ連)の比較まで、最新資料を駆使しながら解析する。

日本では類書はきわめて少ないが、欧米では蓄積がある。本書はそのなかでも決定版として評価が高い。今後、20世紀ソ連の全体主義見直しのなかで、ますます重要度を増すことだろう。 2008年、ハンナ・アーレント政治思想賞を受賞。

Amazon商品紹介ページより

カチンの森で見つかった大量の遺体。巨大な穴に埋められた遺体は銃殺されたポーランド将校たちでした。

ソ連は1939年独ソ不可侵条約に基づき、ポーランド東部を自国の支配下に置いていました。

そして戦後のポーランド支配を睨み、ソ連は国の指導者層の抹殺を目論んだのでした。軍の将校は当然、軍を指導する立場の人間です。そのため、彼らがいなくなれば軍は顕著に弱体化します。将来、いや今もソ連に抵抗する可能性のあるポーランド軍を弱体化させることはソ連にとって非常に重要な問題でした。

そして上の引用にもありますようにカチンの森以外の場所でもたくさんの方が犠牲になっています。

「職業軍人だけでなく、医師、大学教授、裁判官、新聞記者、司祭、小中学校教師など、国をリードする階層全体におよんだ。」とありますように、国を支える知識人層、文化人が標的にされたのです。

ある国を支配するためにはまずはその国の文化や制度を支える知識人層を殺す。そうすることで国を守ろうにもリーダーがいないポーランド人は抵抗することができないだろうということなのです。

実はこれはソ連自身が自国民に対して行ったことでもあります。ソ連は知識人や高級将校を大量に粛清しています。ロシア正教もレーニン時代から継続して弾圧されています。

スターリンに歯向かう可能性のある者は根こそぎ粛清し、スターリンに忠誠を誓う者しか生き残れませんでした。そうすることでスターリンは圧政を続けることができたのです。(このことについては以前紹介したノーマン・M・ネイマーク著『スターリンのジェノサイド』に詳しく説かれています)

そしてこの本で興味深いことがもうひとつあります。上の引用の後半部分にありますように、ソ連はこの事件の全貌を隠蔽し続けました。

そしてさらに不都合なことに、それに連合国側も加担していたという事実です。

「連合国は正義であり、解放者であり、真実を明るみに出す」と私たちは考えてしまいがちです。

ですが国際情勢とは同盟側であろうと連合国側であろうと、複雑怪奇な怪物同志の戦いに他なりません。どちらかが絶対的な正義などということはありえません。

ソ連の影響力は戦後圧倒的なものになり、連合国側もうかつに手出しはできません。こうした背景を利用してソ連はカチンの森事件の隠ぺい、改ざんに成功したのでした。

歴史とは何かを考える上でこのことは非常に大きな示唆を与えてくれます。

私たちが知っている歴史は誰が作ったものなのでしょうか。私たちが歴史の真実だと思っていることは本当に正しいものなのでしょうか。私たちには知りえない「真実」が歴史上には数え切れないほどあるのではないか。歴史は「誰かが」編纂するものです。そこに「誰かの」意図がどうしても入らざるをえない。そのようなことを改めて考えさせられました。

最後にもう一つ、この本を読んでいて度肝を抜かれた箇所をご紹介します。

ドストエフスキーやトルストイも訪れたロシアで最も有名な修道院の一つ、オプチーナ修道院が強制収容所として利用されていた

一九三九年十月、将校を主として約一万五五〇〇人の捕虜がモスクワの西約二五〇キロのコゼルスク(五〇〇〇人)、北西約三二〇キロのオスタシュコフ(六五〇〇人)、それにキエフのハリコフから東に約ニニ〇キロのスタロべルスク(四〇〇〇人)の三つの特別収容所に抑留された(本書巻末の地図を参照)。どの収容所もロシア正教の僧院跡に設けられていた。かつてトルストイ、ゴーゴリのような作家が修道僧に混じって瞑想にふけったところだ。コゼルスクのオプチマ僧院に行く道は『カラマーゾフの兄弟』に描写がある。

みすず書房、ヴィクトル・ザスラフスキー著、根岸隆夫訳『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』P160-161

カチンの森事件の犠牲者が収容された強制収容所がロシア正教の僧院跡に設けられていたというのはなんとも衝撃的でした。ソ連はロシア正教を弾圧しその財産や土地を没収しました。彼らはその土地をこうして活用していたのです。

正教の祈りを捧げる場所を強制収容所として用い、さらには虐殺が行われていくという現実・・・

そして一番私が驚いたのはコゼルスクの強制収容所がオプチーナ(本文ではオプチマ)修道院であったという記述でした。

なぜこのことがそんなにも驚きかというと、この修道院はあのドストエフスキーが訪れ、彼の晩年の最高傑作『カラマーゾフの兄弟』にも大きな影響を与えた場所だったからなのです。

あわせて読みたい
S・チェトヴェーリコフ『オープチナ修道院』あらすじと感想~『カラマーゾフの兄弟』ゾシマ長老はここか... 『オープチナ修道院』ではこの修道院の歴史や高名な長老達の思想や生涯を知ることが出来ます。写真や絵も豊富なので、この修道院がどのような場所なのかをイメージするには非常に便利な本となっています。 『カラマーゾフの兄弟』、特にゾシマ長老と主人公アリョーシャの関係性をより深く知りたいという方にはぜひともお勧めしたい1冊です。

以前このブログでも紹介しましたが、オプチーナ修道院はロシア正教における最も権威ある修道院のひとつであり、多くの著名な長老を輩出している聖地です。そしてさらに、ここはロシアを代表する作家、ゴーゴリやトルストイが訪れたことでも有名です。

いつか私も訪れてみたいと思っているこのオプチーナ修道院ですが、まさかここがカチンの森事件の犠牲者の収容所となっていたとは本当に驚きでした。

※2023年7月15日追記

ソ連時代のロシア正教弾圧については高橋保行著『迫害下のロシア教会―無神論国家における正教の70年』で詳しく解説されています。オプチーナ修道院をはじめとして多くの修道院が収容所として転用されていくその過程などもこの本で知ることができます。ソ連国内における宗教弾圧もすさまじいものがありました。

あわせて読みたい
高橋保行『迫害下のロシア教会―無神論国家における正教の70年』あらすじと感想~ソ連時代のキリスト教は... ソ連が崩壊した今だからこそ知ることができるソ連とロシア正教の関わり。 そのことを学べるこの本は非常に貴重な一冊です。 ドストエフスキーを知る上でもこの本は非常に大きな意味がある作品だと思います。

おわりに

アウシュヴィッツのホロコーストに比べて日本ではあまり知られていないカチンの森事件ですが、この事件は戦争や歴史の問題を考える上で非常に重要な出来事だと私は感じました。

歴史が隠蔽され続け、連合国側もそれに加担していたというのは無視できない問題だと思います。無条件に連合国あるいは国連を信じる危険性を感じました。国際情勢においてはこうしたことが実際に起きているということを忘れてはいけないと改めて思ったのでありました。歴史の怖さを感じる一冊です。

そしてこの本では写真もたくさん掲載されています。かなりショッキングな写真です。埋められた遺体が発見された時の写真やミイラ化した死体、穴の中で積み重なっている無残な遺体の写真など、かなりストレートな写真がいくつもあります。目をそらしたくなってしまうような凄惨な写真ですが、この事件の恐ろしさをより伝えるために筆者が意図して掲載した写真です。「こうした事件があったことについて目を背けてはいけない」と筆者から警告されているような気がしました。

この事件については映画化もされています。

日本ではあまり知られていない事件ですが、これを学ぶ意義は非常に大きいものと思われます。

国の指導者、知識人層を根絶やしにする。

これが国を暴力的に支配する時の定石であるということを学びました。非常に恐ろしい内容の本です。ぜひ手に取って頂ければなと思います。

以上、「V・ザスラフスキー『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』ー独ソ戦中のソ連による隠蔽された虐殺事件」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺【新装版】

カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺【新装版】

次の記事はこちら

あわせて読みたい
ゴールドマン『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』あらすじと感想~日本はなぜ悲惨な敗北... この本はものすごいです。 ノモンハン事件という、私たちも名前だけは知っている歴史上の出来事が想像もつかないほど巨大な影響を世界に与えていたということがこの本で明らかにされています。 日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか、なぜ軍部が暴走し無謀な戦闘を繰り返したのかもこの本では分析されています。読むとかなりショックを受けると思います。私もこの本を読んでいて何度も「嘘でしょ・・・」と唖然としてしまいました。それほどショッキングな内容となっています。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』あらすじと感想~独ソ戦を体験した女性達の声に聴くー... この本はアレクシエーヴィチが独ソ戦に従軍、あるいは戦禍を被った女性にインタビューし、その記録を文章化したものになります。独ソ戦という巨大な歴史の中では個々の人間の声はかき消されてしまいます。特に、女性はその傾向が顕著でした。戦争は男のものだから女は何も語るべきではない。そんな空気が厳然として存在していました。 そんな中アレクシエーヴィチがその暗黙のタブーを破り、立ち上がります。アレクシエーヴィチはひとりひとりに当時のことをインタビューし、歴史の闇からその記憶をすくいあげていきます。

独ソ戦おすすめ参考書一覧はこちらです

あわせて読みたい
独ソ戦のおすすめ参考書16冊一覧~今だからこそ学びたい独ソ戦 この記事では独ソ戦を学ぶのにおすすめな参考書を紹介していきます。 独ソ戦は戦争の本質をこれ以上ないほど私たちの目の前に突き付けます。 なぜ戦争は起きたのか。戦争は人間をどう変えてしまうのか。虐殺はなぜ起こるのかということを学ぶのに独ソ戦は驚くべき示唆を与えてくれます。私自身、独ソ戦を学び非常に驚かされましたし、戦争に対する恐怖を感じました。これまで感じていた恐怖とはまた違った恐怖です。ドラマや映画、ドキュメンタリーで見た「被害者的な恐怖」ではなく、「戦争そのものへの恐怖」です。

関連記事

あわせて読みたい
ノーマン・M・ネイマーク『スターリンのジェノサイド』あらすじと感想~スターリン時代の粛清・虐殺とは この本ではスターリンによる大量殺人がどのようなものであったかがわかりやすく解説されています。 ナチスによるホロコーストは世界的にも非常によく知られている出来事であるのに対し、スターリンによる粛清は日本ではあまり知られていません。なぜそのような違いが起きてくるのかということもこの本では知ることができます。
あわせて読みたい
私達日本人が今あえて独ソ戦を学ぶ意義ー歴史は形を変えて繰り返す・・・ 戦争がいかに人間性を破壊するか。 いかにして加害者へと人間は変わっていくのか。 人々を戦争へと駆り立てていくシステムに組み込まれてしまえばもはや抗うことができないという恐怖。 平時の倫理観がまったく崩壊してしまう極限状態。 独ソ戦の凄まじい戦禍はそれらをまざまざと私たちに見せつけます。 もちろん太平洋戦争における人々の苦しみを軽視しているわけではありません。 ですが、あえて日本から離れた独ソ戦を学ぶことで戦争とは何かという問いをより客観的に学ぶことができます。だからこそ私はあえて独ソ戦を学ぶことの大切さを感じたのでした。
あわせて読みたい
大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』あらすじと感想~独ソ戦の全体像が分かりやすく解説されたおすすめの入... この本では独ソ戦がなぜ始まったのか、そしてどのように進んで行ったかがわかりやすく解説されています。 そしてこの戦争における巨大な戦闘、モスクワ攻防戦、レニングラード包囲戦、スターリングラード攻囲戦についても解説していきます。独ソ戦の勝敗を決定づけるこれらの巨大な戦いとは一体どんなものだったのか。信じられないほどの犠牲者を出した圧倒的な戦いを私たちは知ることになります。
あわせて読みたい
神野正史『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』あらすじと感想~WW2の流れを掴むのに... 複雑怪奇な国際情勢をこの本では学べます。そして単に出来事の羅列ではなくなぜ歴史がそのように動いたのかという「なぜ」を神野氏は強調していきます。ここが『世界史劇場』シリーズの素晴らしいところだと思います。単なる暗記ではなく、「なぜ」を考える思考力を鍛えてくれるところにこの本の特徴があると私は思っております。非常におすすめな一冊です。
あわせて読みたい
神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』あらすじと感想~ヒトラーの権力掌握の過程を知... 民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。 これは日本においても当てはまる事象です。 ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。 この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。
あわせて読みたい
A・ナゴルスキ『モスクワ攻防戦ー20世紀を決した史上最大の戦闘』あらすじと感想~独ソ戦をもっと知るな... 本書は独ソ戦をもっと知りたい方にはとてもおすすめな本です。 写真や図も豊富で当時の様子をイメージしやすくなっています。 そして何より、読み物としてとても面白いです。なぜモスクワ攻防戦は世界最大規模の戦闘となったのか。なぜ兵士たちは無駄死にしなければならなかったのか。 無敵と思われたドイツ軍がなぜ敗北したのかということがドラマチックに語られていきます。
あわせて読みたい
『レニングラード封鎖 飢餓と非情の都市1941-1944』あらすじと感想~80万人以上の餓死者を出したサン... この本はあまりにショッキングです。かなり強烈な描写が続きます。地獄のような世界でレニングラード市民は生きていかなければなりませんでした。市民が飢えていき、どんどん死んでいく様子がこの本では語られていきます。生き残るために人々はどんなことをしていたのか。そこで何が起きていたのか。その凄まじさにただただ呆然とするしかありません。80万人以上の餓死者を出したというその惨状に戦慄します・・・
あわせて読みたい
『スターリングラード―運命の攻囲戦1942-1943』あらすじと感想~独ソ戦最大級の市街戦を描いた戦争ノン... モスクワ攻防戦が郊外での防衛戦であり、レニングラードの戦いは包囲戦でした。それに対しこの戦闘はスターリングラード周辺地域だけでなく大規模な市街戦となったのが特徴です。空爆と砲撃で廃墟となった街の中で互いに隠れ、騙し合い、壮絶な戦闘を繰り広げたのがこの戦いでした。スターリングラードの死者はソ連側だけで80万人を超えると言われています。 独ソ戦のあまりの規模に衝撃を受けることになった読書でした。
あわせて読みたい
A・ビーヴァー『ベルリン陥落 1945』あらすじと感想~ソ連の逆襲と敗北するナチスドイツの姿を克明に描... 著者のアントニー・ビーヴァーは前回の記事で紹介した『スターリングラード運命の攻囲戦1942‐1943』の著者でもあります。今作でも彼の筆は絶品で、ぐいぐい読まされます。ソ連の逆襲とナチスが決定的に崩壊していく過程がこの本では語られていきます。 ナチス、ソ連両軍ともに地獄のような極限状態の中、どのような行為が行われていたのか。この本で目にする内容はあまりに悲惨です。
あわせて読みたい
ボスニア紛争で起きた惨劇、スレブレニツァの虐殺の地を訪ねて ボスニア編⑩ 2019年4月29日、私は現地ガイドのミルザさんと二人でスレブレニツァという町へと向かいました。 そこは欧州で戦後最悪のジェノサイドが起こった地として知られています。 現在、そこには広大な墓地が作られ、メモリアルセンターが立っています。 そう。そこには突然の暴力で命を失った人たちが埋葬されているのです。 私が強盗という不慮の暴力に遭った翌日にこの場所へ行くことになったのは不思議な巡り合わせとしか思えません。 私は重い気持ちのまま、スレブレニツァへの道を進み続けました。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次