MENU

『ビジュアル選書 ナポレオン』あらすじと感想~ナポレオンの入門書としておすすめの図版多数のガイドブック!

目次

『ビジュアル選書 ナポレオン』概要と感想~ナポレオンの入門書としておすすめの図版多数のガイドブック!

今回ご紹介するのは2011年に新人物往来社より発行された『ビジュアル選書 ナポレオン』です。

早速この本について見ていきましょう。

ビジュアル選書シリーズ。貧乏貴族からフランス皇帝、そしてヨーロッパの覇者へと上り詰めたナポレオン。その生涯、主な戦い、覇業をともに歩んだ家族の実像を美しいビジュアルとともに紹介。

KADOKAWA商品紹介ページより
ダヴィッド『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』。皇后となるジョゼフィーヌにナポレオンが自ら冠を授けている。Wikipediaより

ナポレオン・ボナパルト(1769-1821)は言わずと知れたヨーロッパ史に残る大人物です。

ナポレオンについては以前当ブログでも神野正史著『世界史劇場 駆け抜けるナポレオン』を参考にその生涯をざっくりと追ってみました。

あわせて読みたい
ナポレオンってどんな人?その出自と下積み時代 ドストエフスキー『罪と罰』とナポレオンの関係を考察 ナポレオンといえばその知名度は抜群ではあるものの、実際にいつ頃活躍し何をした人物かと問われれば意外とこれに答えるのは難しいのではないでしょうか。 正直に申しますと、今回フランスのことを学ぶまで私もよくわかっていませんでした。知れば知るほどなるほどなるほどと面白い発見でいっぱいでした。

ナポレオンはヨーロッパの政治経済、軍事、国際情勢にとてつもない影響を与えましたが、その影響は文学にも及んでいます。

トルストイの『戦争と平和』しかり、バルザックの『ゴリオ爺さん』しかり、ユゴーの『レ・ミゼラブル』しかり、そして何と言ってもドストエフスキーの『罪と罰』にも巨大な影響を与えています。

あわせて読みたい
やはり『罪と罰』は面白い…!ナポレオンという切り口からその魅力を考える 私がドストエフスキーにおいて「面白い」という言葉を使う時は、アハハと笑うような「面白い」でもなく、あ~楽しかったいう「面白い」とも、スカッとするエンタメを見るような「面白い」とも違います。 時間を忘れてのめり込んでしまうような、それでいてなおかつ、読んだ後もずっと心にこびりつくような、そういう読後感があるような面白さを言います。 『罪と罰』にはそのような面白さをもたらしてくれる思想的な奥行きがこれでもかと描かれています。 そのひとつがラスコーリニコフの言うナポレオン思想です。

さて、そんなナポレオンとは一体どんな人物だったのか、どんな生涯を送ったのかを知るのにぜひともおすすめしたいのが今回ご紹介する『ビジュアル選書 ナポレオン』になります。

「ビジュアル選書」シリーズは以前当ブログでも『レンブラントとフェルメール』を紹介しました。

あわせて読みたい
岡部昌幸『レンブラントとフェルメール』あらすじと感想~オランダ絵画の二大巨匠を比べて学べるおすす... フェルメールに関してはこれまで様々な作品を読んできたのでその生涯や特徴については知ってはいましたが、意外とレンブラントに関してはあまり手が伸びなかったというのが正直なところです。 そんな中でフェルメールと比べながらレンブラントの生涯や作品をわかりやすく語ってくれるこの本はとてもありがたいものとなりました。 オランダ絵画を代表する2人についておおまかな概要を知れるこの作品は多くの方にとってもかなり参考になると思います。オランダ絵画入門としても格好の作品かもしれません

このシリーズの特徴は何と言っても図版の充実ぶりにあります。このシリーズはタイトル通り、ビジュアルと共に人物とその特徴を追っていきます。

解説の文章も初学者でもわかりやすいように書かれ、当時の時代背景も語ってくれるのもありがたいです。

こちらが目次になるのですが、第一部、第二部の面白さ、わかりやすさはもう言わずもがななのですが、私がこの本で特に印象に残ったのが第三部「ボナパルト一族とナポレオンをめぐる人々」でした。

ナポレオン自身については様々なところでその解説を目にすることになりますが、彼の一族についてわかりやすくまとめられたものは意外と少ないです。

ナポレオン自身は次男坊です。

彼の他にも7人の兄弟がいてそれぞれがナポレオン帝政において何らかのドラマを演じています。それらもコンパクトながらわかりやすく知ることができたのは非常に興味深いものがありました。

また、第二部「ナポレオン戦記」はそれこそ戦争の雰囲気を多数の図版でビジュアル的に学ぶことができるので入門書として格好の作品となっています。第一部も彼の生涯が時代背景と合わせて語られますのでとてもありがたいです。

この作品はナポレオンを知る入門書として非常におすすめです。

分量も150ページ弱と、とてもコンパクトなものとなっています。

気軽に手に取れる本でありながらも内容はかなりしっかりしたものとなっていますので安心して読むことができます。

これはぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「『ビジュアル選書 ナポレオン』ナポレオンの入門書としておすすめの図版多数のガイドブック!」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

ナポレオン (ビジュアル選書)

ナポレオン (ビジュアル選書)

次の記事はこちら

あわせて読みたい
A・ホーン『ナポレオン時代』あらすじと感想~ナポレオンの生涯と特徴、社会への影響をコンパクトに学べ... この本の特徴はナポレオンその人だけでなく、この時代の社会の様子も知れる点にあります。ナポレオンの登場によって社会はどのような影響を受けたのか、人々の暮らしはどのように変わったのかということを知ることができます。 軍人ナポレオンの足跡はもちろん、文化面まで幅広く見ていけるのはとてもありがたいです。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
P・マクフィー『フランス革命史 自由か死か』あらすじと感想~フランス革命の背景を大きな視点で捉える... この本を読んで特に感じたのは革命のカオスぶりです。 あまりに多様な人々をどうひとつにまとめていくのか、何かひとつのことをする度に、必ず不利益を被る人が出てくる。そしてその人達は政府の反対者となり、革命の歩みは難しくなる。ではどうするのか?ギロチンか・・・ こうした問題にどうしてもぶつかってしまうのが革命なのかという事を考えさせられました。

関連記事

あわせて読みたい
フランス革命やナポレオンを学ぶのにおすすめの参考書一覧~レミゼの時代背景やフランス史を知るためにも 『レ・ミゼラブル』の世界は1789年のフランス革命やその後のナポレオン時代と直結しています。これらの歴史を知った上でレミゼを観ると、もっともっと物語を楽しめること間違いなしです。
あわせて読みたい
『ナポレオン言行録』あらすじと感想~読書は世界を制す?文学青年ナポレオンと読書~文豪達はなぜナポ... この作品を読んでいて印象に残ったのはやはりナポレオンの言葉の強さでした。ナポレオンといえば軍人というイメージが強いかもしれませんが、驚くべきことに圧倒的な文才も兼ね備えていたのです。 ナポレオンが鬼のような読書家であったこと。そしてそこから多くのことを学び、人々の心を動かし皇帝にまでなったということ。 そのことをこの作品では知ることができます
あわせて読みたい
マイク・ラポート『ナポレオン戦争』あらすじと感想~ナポレオン戦争の特徴を様々な観点から見ていくお... この本は「ナポレオンの天才的な軍事作戦」を解説するタイプの本ではありません。それよりもこの戦争が起きた背景や、戦争遂行に必要な様々なものをじっくりと見ていく作品になります。 ナポレオン一人の存在で戦争が起こったのではなく、すでに十八世紀の国際状況がそれを誘発するものをはらんでいたということ。そしてナポレオンの天才ぶりばかりが強調されがちな中で、実はその戦勝の背景にある個々の兵士たちの存在が大きな意味を持っていたこと。それらをこの本では学ぶことができます。
あわせて読みたい
P・マクフィー『ロベスピエール』あらすじと感想~フランス革命恐怖政治の独裁者は本当はどんな人物だっ... 政敵を無慈悲に断頭台に送り込んだ精神異常者ロベスピエール。そんな単純な話で還元できるものではありません。 その姿勢こそ本書の最も特徴的なポイントであり、私が感銘を受けた点でした。 この本は人間の複雑さ、そして置かれた環境によって人間はどうなりうるのかということを考えさせられる名著です。
あわせて読みたい
バルザック『ゴリオ爺さん』あらすじと感想―フランス青年の成り上がり物語~ドストエフスキー『罪と罰』... この小説を読んで、私は驚きました。 というのも、主人公の青年ラスティニャックの置かれた状況が『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフとそっくりだったのです。 『ゴリオ爺さん』を読むことで、ドストエフスキーがなぜラスティニャックと似ながらもその進む道が全く異なるラスコーリニコフを生み出したのかということも考えることが出来ました。
あわせて読みたい
コレンクール『ナポレオン ロシア大遠征軍潰走の記』あらすじと感想~ナポレオンのロシア遠征を詳しく... 著者のコレンクールはナポレオンのロシア遠征を最も近くで見ていた人物です。 この本ではロシア遠征においてナポレオンが何を考え、どう行動したかを知る上ではこの上ない記録です。 特に、書名にもありますようにナポレオン軍のモスクワからの無残な敗走の姿をこれでもかと描写しています。
あわせて読みたい
トルストイ『戦争と平和』あらすじ解説と感想~ナポレオン戦争を舞台にしたトルストイの代表作 ドストエフスキーが人間の内面の奥深く奥深くの深淵に潜っていく感じだとすれば、トルストイは空高く、はるか彼方まで広がっていくような空間の広がりを感じます。 深く深く潜っていくドストエフスキーと高く広く世界を掴もうとするトルストイ。 二人の違いがものすごく感じられたのが『戦争と平和』という作品でした。 万人におすすめできる作品ではありませんが、凄まじい作品であることに間違いはありません。一度読んだら忘れられない圧倒的なスケールです。巨人トルストイを感じるならこの作品です。
あわせて読みたい
鹿島茂『馬車が買いたい!』あらすじと感想~青年たちのフレンチ・ドリームと19世紀パリの生活を知るな... この本ではフランスにおける移動手段の説明から始まり、パリへの入場の手続き、宿探し、毎日の食事をどうするかを物語風に解説していきます。 そしてそこからダンディーになるためにどう青年たちが動いていくのか、またタイトルのようになぜ「馬車が買いたい!」と彼らが心の底から思うようになるのかという話に繋がっていきます。
あわせて読みたい
ユゴー『レ・ミゼラブル』あらすじと感想~ミュージカルでも有名なフランス文学の最高傑作! 『レ・ミゼラブル』は分量も多く、原作はほとんど読まれていない作品ではあるのですが、基本的には難しい読み物ではなく、わかりやすすぎるほど善玉悪玉がはっきりしていて、なおかつ物語そのものもすこぶる面白い作品です。 しかも単に「面白過ぎる」だけではありません。この作品にはユゴーのありったけが詰まっています。つまり、ものすごく深い作品でもあります。私もこの作品のことを学ぶにつれその奥深さには驚愕するしかありませんでした。 ぜひミュージカルファンの方にも原作をおすすめしたいです

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次