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石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』あらすじと感想~ローマの天才のおすすめ伝記!これを読めばローマがもっと好きになる!

目次

石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』概要と感想~おすすめ伝記!これを読めばローマがもっと好きになる!

今回ご紹介するのは2010年に吉川弘文館より発行された石鍋真澄著『ベルニーニ バロック芸術の巨星』です。

早速この本について見ていきましょう。

バロック美術の天才ベルニーニ。サンピエトロ広場、アポロとダフネなど建築・彫刻・絵画作品、祝祭の演出など境界を超えた多彩な芸術と生涯を時代背景と共に描く。図版・解説も充実した永遠の都市ローマの美術入門。

Amazon商品紹介ページより
ベルニーニ(1598-1680)Wikipediaより

この作品は17世紀のローマで活躍した天才芸術家ベルニーニについて語られた伝記です。

ベルニーニといえば何と言ってもサン・ピエトロ大聖堂にありますこちらの作品が有名です。

バルダッキーノ(手前)とカテドラ・ペトリ(後方) ブログ筆者撮影

初めて見た時、その独特な姿に言葉を失ってしまうほどの衝撃を受けたバルダッキーノ。

そしてそのバルダッキーノの先にはカテドラ・ペトリというこれまたベルニーニの傑作が配置されています。

そして「ミケランジェロとベルニーニが設計したサン・ピエトロ大聖堂の美の秘密を解説 イタリア・バチカン編⑥」の記事でもお話ししましたが、ベルニーニはこの大聖堂内の装飾やバチカン広場の設計も担当しています。

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なぜバチカンはこんなにも美しいのか、そこにはベルニーニという偉大な天才がいたからこそなのでした。

この伝記はそんなベルニーニとは何者だったのか、そしてこの人物が生まれてくる時代背景とはどのようなものだったのかを知ることができる素晴らしい作品です。

著者は本書の「序」でこの作品について次のように述べています。

本書は、べルニーニについての研究書というより、ベルニーニとローマ・バロック美術の世界への入門書イントロダクションである。だから筆者は、諸家の研究に、てきるだけ公正な態度で接し、その中から信ずるに足ると思われる説や解釈を採用するとともに、可能な限りそれを自分の眼で確かめるように努めた。また、作品の分析だけでなく、べルニーニの人柄や当時の時代背景にも留意し、ベルニーニの芸術について総合的な理解が得られるように心がけた。

こうした本書に幾汗かの取り柄があるとすれば、それは第一に、彫刻や建築だけでなく祝祭の演出や演劇などにわたる、広汎なべルニーニの活動全体を扱っているという点、そして第二に、このところ急速に進んだベルニーニ研究の成果を、できるだけとり入れたという点、の二点だといえよう。現在のところこの二点を充たす書物は外国語でもないからである。

また、著者は一年間にわたるローマ滞在中に、ほとんどの作品を実地に見ながら本書を著わした。この実地の体験や感動が記述に少しでも反映しているならば、それも取り柄といえるかもしれない。

吉川弘文館、石鍋真澄『ベルニーニ バロック芸術の巨星』P3-4

「著者は一年間にわたるローマ滞在中に、ほとんどの作品を実地に見ながら本書を著わした。この実地の体験や感動が記述に少しでも反映しているならば、それも取り柄といえるかもしれない。」

著者が「序」で述べるように、本書ではこれら珠玉のベルニーニ作品が解説されていきます。

この語りが素晴らしく、読んでいてすぐに引き込まれてしまいました。

しかも当時のローマの時代背景を知れる点も非常にありがたいです。なぜベルニーニはこのような傑作を残すことができたのか、その裏側を知ることができるこの作品はとにかく刺激的です。

芸術とはそもそも何なのか。なぜ私たちはローマに惹き付けられるのか。

その鍵がベルニーニにある。

ベルニーニを知れば新たに見えてくるものがあるということを強烈に感じた1冊でした。

またローマに行く時には前回とは違ったローマが見えてくるのは間違いないと思います。

ローマにこれから行かれる方、そしてローマに興味のある方にぜひぜひおすすめしたい名著です!ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』~ローマの天才ベルニーニのおすすめ伝記!これを読めばローマがもっと好きになる!」でした。

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ベルニーニ: バロック美術の巨星 (歴史文化セレクション)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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