Shigeru Kashima, "Paris Time Travel" - A collection of gems of essays to experience 19th century Paris. Full of eye-opening discoveries!

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19世紀パリを体感する珠玉のエッセイ集 鹿島茂『パリ時間旅行』概要と感想

今回ご紹介するのは1999年に中央公論新社より発行された鹿島茂著『パリ時間旅行』です。

Let's take a quick look at the book.

Paris has a dense "Paris time" that never ceases to fascinate those who set foot there. ...... This is a brilliant time travel that takes you back to the original Paris of the 19th century, before the Haussmann reforms. A collection of essays that vividly brings back to life the sounds and smells of Paris in the era in which Baudelaire and Proust lived.

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In this book, French literary scholar Shigeru Kashima takes us on a time-traveling tour of 19th-century Paris, giving us a realistic account of the conditions and culture of the time.

鹿島氏もあとがきで次のように述べています。

本書では、基本的には、どのエッセイでも、パリの中に穿たれた、パサージュ、街灯、あるいはたんに光、音、匂いなどという時間隧道タイム・トンネルを通ってこの時間都市に旅をして、たっぷりと十九世紀の空気を吸い込んでくることを目的としている。時間旅行というと、最近ではもっとも陳腐なSFガジェットと化してしまった感があるが、私は冗談抜きで、H・G・ウェルズのこのアイディアを、プルーストのマドレーヌと並ぶ文学史上の最高の発明品だと思っている。それどころか、もしどこかの天才がタイム・マシンを発明したら、私は、真っ先に実験台となって十九世紀のパリに行ってみることだろう。もちろんそのまま帰ってこれなくてもいっこうにかまわない。

中央公論新社、鹿島茂『パリ時間旅行』p269-270

著者のパリ愛が伝わってきますよね。そんな熱量たっぷりの著者が愛すべき19世紀パリの世界を語っていきます。

また、巻末の小川洋子氏による解説ではこの本の魅力について次のように書かれています。

八年ほど前の晩秋、生まれて初めてのヨーロッパ旅行の行き先がパリだった。その第一印象は、もし作家になる前にここを訪れていたら、自分でも思い及ばない種類の小説を、もっともっとたくさん書けたかもしれないのに、というものだった。サンジェルマン・デ・プレ教会の告解室で、チュイルリー公園のべンチで、あるいは名もない路地に面した、クリーム色の明かりがもれる窓辺で原稿用紙を広げたら、きっと傑作が書けるに違いない、そんな気持になった。

パリが持つこの魔力とは一体何なのか、本書は解き明かしてくれる。しかも、堅苦しい学問だの理論だのを振りかざすようなことはしない。魅惑的でロマンティックな仕掛けによって、パリという不思議にアプローチしてゆく。

題名が示す通り、読者がさかのぼるのは歴史ではなく、時間である。たた文献のページをめくって、平面的に移動するのとは違う。私たちはまさに、タイム・マシンに乗って時間を旅するのだ。だから五感すべてを全開にし、身体丸ごとで前世紀のパリをさ迷い歩くことができる。

各章はパサージュ、音、匂い、光、馬車、写真、スポーツなどをキーワードに展開してゆくが、共通しているのは、あたかも見てきたかのように、十九世紀のパリを再現している点である。もちろん確かな研究、調査の上に成り立ったリアリティではあるけれど、鹿島さんはむしろ、ご自分が持つ触角の感度の方に信頼を寄せている。もしかしたらこの方は、自分は十九世紀の人間だと、本気で思い込んでいるのかもしれない。だとしたら、何とうらやましく幸福な錯覚だろう。

ショー・ウィンドーの奥の静寂、ふっと漂う香り、写真に浮かび上がるぼやけた人影、そういうものたちとの一瞬の接点が、すぐさま過去への入口を開く。筆者が自由自在にそこを出入りするのにつられ、読者も現在と過去、こちら側とあちら側を知らず知らずのうちに行き来することとなる。そしていつしか、今自分の居る場所がどちらなのか分からなくなって、わずかでも筆者と錯覚を共有できたような気分になれる。(中略)

鹿島さんはパリの秘密を語りながら、同時に物語の秘密まで解き明かしてくれる。

中央公論新社、鹿島茂『パリ時間旅行』p277-282

The charm of this book lies above all in Mr. Kashima's storytelling.

In the commentary, the author says, "I don't pretend to be a rigid scholar or to have a theory. It approaches the wonder of Paris through fascinating and romantic devices.

The book looks at various Parisian scenes using keywords such as "passages, sounds, smells, light, carriages, photographs, and sports," and I was particularly interested in the section on "smells.

Paris is famous for its luxury brand perfumes. The book describes the process of how these perfumes became popular in Paris.

It is often said that "perfume was developed to hide bad smells," but I was surprised to learn from Mr. Kashima's explanation that this cannot be simply said. Paris was originally a city of unbelievable stench. The streets were filled with filth, and since people did not have the custom of washing their bodies, the strong smell was commonplace. Moreover, people didn't seem to care much about it.

In fact, their strong body odor was even considered sexually attractive.

So it was not precisely for this reason that perfume was created to mask the smell.

So why were perfumes created?

This is also very interesting. Please read this book to find out the answer.

また、もう一つ気になったところがありました。

それが「パリの光」に関する部分でした。それはこれまで紹介してきた『レ・ミゼラブル』とも大きなつながりがあります。

次の記事「レミゼのミリエル司教の燭台と蝋燭の大きな意味~暗闇を照らす光のはたらきー鹿島茂『パリ時間旅行』より」ではその光について見ていきます。ジャン・バルジャンが物語の冒頭でミリエル司教に食事に招かれるシーンで銀の燭台にロウソクが灯されます。このロウソクの火が大きな象徴的な意味を持っていたのです。これを知った時私は鳥肌が立ちました。ユゴーはそこまで考えて物語を作りこんでいたのかと驚嘆しました。

This book is one of the most useful and knowledgeable books on French literature. Highly recommended.

以上、「鹿島茂『パリ時間旅行』19世紀パリを体感する珠玉のエッセイ集」でした。

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