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セルゲーイ・ボルシャコーフ『ロシアの神秘家たち』概要と感想~ロシアの偉大なる修道士たちの歴史
本日はあかし書房出版の古谷功訳、セルゲーイ・ボルシャコーフ『ロシアの神秘家たち』をご紹介します。
著者のセルゲーイ・ボルシャコーフは1901年サンクトペテルブルグに生まれ、1943年にオックスフォード大学で哲学博士となり、その後スイスのオウストリーヴ修道院に在住という経歴です。
この本の特徴はロシアの偉大なる修道士の生涯と思想をひとりひとり丁寧に紹介しているところにあります。
著者は15世紀末頃までさかのぼり、そこから20世紀に至るまでどのように思想が継承されていったかをこの本で解説します。
特に18世紀に名を馳せた聖ティーホンについて書かれた章は重要です。聖ティーホンの思想は後の修道僧や長老に大きな影響を与え、ドストエフスキーも彼の思想や生涯に感銘を受け、その印象は『カラマーゾフの兄弟』や『悪霊』の執筆に反映されています。
本文から引用します。
聖ティーホンの人格はロシアにおいて、大衆や修道者たちばかりでなく、数名の高名なロシア人たちによって、大いに称賛された。特にそれは偉大なロシアの天才、フョードル・ドストエーフスキイを感動させ、その最大の小説「カラマーゾフの兄弟」において、ゾシーマ長老の像を彼をモデルに作り上げた。
ゾシーマの中にドストエーフスキイはティーホン的霊性を表現しようとしたが、部分的にしか成功しなかった。ゾシーマには偉大なオープティナの長老アムブローシイ神父のいくつかの特徴も含まれていて、ドストエーフスキイは彼を個人的に訪問している。
きわめて対称的な二人の人間の結合の中に、ドストエーフスキイは彼自身の人格のいくつかの要素を注ぎ込んだ。それでもなおドストエーフスキイ自身が認める通りゾシーマ長老は疑いもなく、聖ティーホンによって触発されたものである。
ドストエーフスキイの全小説は、今ソ連で再版されており、きわめて広く読まれている。宗教書や神学書の出版が許されていなかったり、書店で売ることが全くできない時代に、ドストエーフスキイの偉大な小説は、ロシアの大衆や特に青年たちの前に、キリストの像やロシアの長老の像を掲げ続ける。
あかし書房出版 古谷功訳、セルゲーイ・ボルシャコーフ『ロシアの神秘家たち』P168-169
前回の『オープチナ修道院』の記事でもお話ししましたが、ドストエフスキーはここを訪れたことで大きなインスピレーションを受けています。
聖ティーホンはそのオープチナ修道院の修道士に大きな影響を与えています。この修道院がどのような教えを重んじているかを知るにはこの本は最適です。
内容はかなり専門的になっているので、初学者には厳しいかもしれません。ロシア正教に関する入門書を読み、さらに興味が湧いた方にはとても読み応えのある著作であると思います。
以上、 「セルゲーイ・ボルシャコーフ『ロシアの神秘家たち』~ロシアの偉大なる修道士たちの歴史」でした。
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