MENU

中村元『インド思想史』概要と感想~仏教の学びに大いに役立つ名著!インド思想の流れを概観できるおすすめ参考書

インド思想史
目次

中村元『インド思想史』概要と感想~仏教の学びに大いに役立つ名著!インド思想の流れを概観できるおすすめ参考書

今回ご紹介するのは1968年に岩波書店より発行された中村元著『インド思想史 第2版』です。私が読んだのは1994年第30刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

数千年の伝統をもつ思想の簡潔な概説書.初版後の研究の進歩に基づき,全面改訂を行い,バラモン教,仏教,ジャイナ教,ヒンドゥー教,イスラム教など諸思想の特質を明らかにするとともに,内容の一層の充実をはかった.

岩波書店商品紹介ページより

今作『インド思想史』は仏教研究における古典中の古典とも言える名著です。

中村元先生の著作についてはこれまでも『古代インド』『中村元の仏教入門』など当ブログでも様々な本を紹介してきました。

中村元先生の著書の特徴は、単に思想や哲学理論を語るのではなく、時代背景や実際の現地での生活と絡めて説く点にあります。今作『インド思想史』もまさにそうした中村節を堪能できる名著となっています。

インダス文明から始まりアーリア人の侵入、バラモン教の始まり、仏教の興隆、ヒンドゥー教の定着、そしてイスラーム侵入から現代へという、あまりに盛りだくさんなインド思想史をこの本一冊で概観することができます。

仏教も仏教単独で独自に生まれたわけではありません。あらゆる宗教や思想はその当時の時代背景と共に生まれてきます。

仏教も広大なインドの大地において、長い時を経て形成された文化の土壌の上で生まれています。仏教はなぜ生まれたのか、なぜインド中に広まり、最後には衰退していってしまったのか、そのことを知るにはインド思想の全体像や時代背景を知る必要があります。

仏教そのものを学ぶ入門書を求めている方にはまず仏教用語やブッダの生涯が説かれている解説書をおすすめしますが、今作『インド思想史』はそこからさらに仏教をもっと知りたいという方にぜひおすすめしたい名著です。

以上、「中村元『インド思想史』~仏教の学びに大いに役立つ名著!インド思想の流れを概観できるおすすめ参考書」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

インド思想史 (岩波全書 213)

インド思想史 (岩波全書 213)

次の記事はこちら

あわせて読みたい
中村元選集第23巻『仏教美術に生きる理想』概要と感想~仏教学の泰斗によるインド美術の名解説を聞ける... 中村元先生といえば仏教思想においても当時の時代背景と絡めたわかりやすい解説で有名ですが、今作のテーマである仏教美術においてもその名解説は健在です。 ガンダーラ仏像やマトゥラー仏像など最初期の仏像や、5世紀頃のサールナートの仏像などの比較も行われ、それぞれの特徴も非常にわかりやすいです。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
肥塚隆、田枝幹宏『美術に見る釈尊の生涯』概要と感想~中村元推奨!仏伝をインド美術のビジュアルで見... この本はブッダの生涯をインドにある仏教美術を通して見ていく作品です。ブッダの生涯を説く本は数多くあれど、本家本元のインド美術を中心にそれを解説していく作品は実はかなり貴重です。

関連記事

あわせて読みたい
【現地写真から見るブッダ(お釈迦様)の生涯】⑴ネパール、ルンビニーでの王子様シッダールタの誕生! 今回の記事から全25回の連載を通してゴータマ・ブッダ(お釈迦様)の生涯を現地写真と共にざっくりとお話ししていきます。 私は2024年2月から3月にかけてインドの仏跡を旅してきました。 この連載では現地ならではの体験を織り交ぜながらブッダの生涯を時代背景と共に解説していきます。
あわせて読みたい
平川彰『インド仏教史』概要と感想~仏教学の不滅の古典!仏教の歴史や教義が網羅された名著! 一つの著作でここまで教えを網羅し、ひと流れの仏教史として書き上げられた本書は驚異としか言いようがありません。 これはものすごい本です。初学者に気軽におすすめできる本ではありませんが、仏教をより深く学びたいという方にはぜひおすすめしたい一冊です。
あわせて読みたい
新田智通「大乗の仏の淵源」概要と感想~ブッダの神話化はなかった!?中村元の歴史的ブッダ観への批判と... 今作では浄土経典について説かれるということで浄土真宗僧侶である私にとって非常に興味深いものがありました。 特に第二章の新田智通氏による「大乗の仏の淵源」は衝撃的な内容でした。これは仏教を学ぶ全ての人に読んで頂きたい論文です。
あわせて読みたい
奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』概要と感想~葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著! 文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。
あわせて読みたい
植木雅俊『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』あらすじと感想~日本を代表する仏教学者の桁外れのス... この本を読んで、大きな視点で世界を見ていく中村元先生のあり方に私も心打たれるものがありました。 この本は仏教とは何かを考えさせられる、非常に大きな意味を持った作品です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。先生の異次元の業績に驚くこと間違いなしです。
あわせて読みたい
中村元選集第14巻『原始仏教の成立』概要と感想~仏教はどのようにして生まれたのか。最初期の教団を取... 以前紹介した『古代インド』は初学者でもわかりやすく読むことができる入門書として非常におすすめな作品でしたが、本作ではさらにかっちりと古代インドと原始仏教教団のつながりを見ていくことができます。
あわせて読みたい
中村元『古代インド』あらすじと感想~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書! 仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。
あわせて読みたい
保坂俊司『インド宗教興亡史』あらすじと感想~仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャ... インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。
あわせて読みたい
中村元『中村元の仏教入門』あらすじと感想~仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけ... 中村元先生の教えは仏教を思想だけでなく、時代背景や実際にインドを訪れた体験を通して語るところにその特徴があります。初学者でもわかりやすい言葉で興味深い内容をたくさん語ってくれる中村元先生です。仏教の入門書としてまず間違いないでしょう。
インド思想史

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次