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神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』あらすじと感想~この戦争がなければロシア革命もなかった

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ベレ出版、神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』

前回の記事ではロシア革命の入門書として最適な神野正史著『世界史劇場 ロシア革命の激震』をご紹介しました。

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神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』あらすじと感想~ロシア革命とは何かを知るのにおすすめの入門... 神野氏の本はいつもながら本当にわかりやすく、そして何よりも、面白いです。点と点がつながる感覚といいますか、歴史の流れが本当にわかりやすいです。 ロシア革命を学ぶことは後の社会主義国家のことや冷戦時の世界を知る上でも非常に重要なものになります。 著者の神野氏は社会主義に対してかなり辛口な表現をしていますが、なぜ神野氏がそう述べるのかというのもこの本ではとてもわかりやすく書かれています。 この本はロシア革命を学ぶ入門書として最適です。複雑な革命の経緯がとてもわかりやすく解説されます。

今回も同じく神野正史氏の著作をご紹介していきます。

というのも、ロシア革命は第一次世界大戦がなければ起こっていなかったかもしれないほどこの戦争と密接につながった出来事でありました。

『世界史劇場 ロシア革命の激震』でもそのあたりの事情は詳しく書かれているのですが、やはりこの大戦そのものの流れや世界情勢に与えた影響を知ることでよりこの革命のことを知ることができます。

早速この本の「はじめに」の文章を見ていきます。歴史を学ぶ大切な視点をここでは教えてくれます。

はじめに

「もはや戦後ではない」(1956年の年次経済財政報告)

そう言われて久しい。

しかし、これはあくまで経済均な観点から、

「戦前の水準にまで回復した」

「戦後復興が一段落した」

…という意味合いであって、歴史的・政治的・文化的・社会的には、現在に至るまで第二次世界大戦から脱皮できておらず、その意味において、日本はいまだ「戦後」にあると言ってよいでしよう。

したがって、「現代日本」を理解しようと思うなら、「太平洋戦争」を理解することは必要不可欠となります。

しかしながら。

哀しいかな、「太平洋戦争」を正しく理解できている人はあまり多くありません。

つまり、日本の現状を理解できている人もたいへん少ない、ということです。

でもどうしてでしょうか。

毎年夏になるたびに、太平洋戦争関連の本が書店を埋め尽くし、たくさんの人がこれを読んでいるのですから、ある程度の「知識」は持っているはずです。

しかし、どれほど多くの本を読んで「知識・・」を蓄積しようとも、「本質・・」がまるで見えていません。

なぜ「知識量」が「洞察力」につながらないのでしょうか。

理由は複合的で、ここで言い尽くすことは不可能ですが、その大きな理由のひとつとして、「物事の本質を理解するためには、その前提や背景から学ぶことが絶対不可欠なのに、それを怠っている」ことが挙げられます。

つまり。

「太平洋戦争」にまつわる本を何十冊、何百冊、何千冊読もうとも、それだけではけっして太平洋戦争の本質を理解することはできない、ということです。

「急がば回れ」

太平洋戦争を理解したくば、太平洋戦争そのものについて学ぶ前に、まず、その背景となった第二次世界大戦や日中戦争を、そして、第二次世界大戦や日中戦争を理解するためには、その背景となった第一次世界大戦や日清・目露戦争をそれぞれ学ばなければなりません。

ところが、実際には、ほとんどの日本人は、日清・目露戦争や第一次世界大戦にはあまり興味を示しません。

とくに、第一次世界大戦などは「忘れられた戦争」と言われるほど。

巷間、太平洋戦争に関して、見当ハズレな意見がまことしやかに飛び交うのもこのためです。

日清・日露戦争や第一次世界大戦を知らぬ者に、太平洋戦争を語る資格はないのです。

すでに「日清・日露戦争」については、本シリーズで触れました。

したがいまして、本書では、「第一次世界大戦」について解説していきたいと思います。

奇しくも、本書が世に出る7月は、第一次世界大戦勃発(1914年7月28日)より数えて、ちょうど100年目です。

今まで疎かにしていた「第一次世界大戦」を学ぶひとつのきっかけとなるかもしれません。

本書が、歴史というものを広い視野で学び、考える、ひとつの契機となってくれることを願ってやみません。

2014年7月 神野正史

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』

歴史を知るにはその背景も知らなければならない。

複雑な世界情勢があったからこそロシア革命が勃発した。

いや、そもそも遡ればフランス革命からナポレオン戦争、1870年の普仏戦争やその後のビスマルク体制とその崩壊などなど、歴史的にさまざまな要因が絡み合って第一次世界大戦やロシア革命が起こることになります。

歴史上のある地点の出来事だけを見ても、その本質はつかめないのです。

というわけでこの本はそうした歴史の流れを知る上では最適の入門書となっています。

学校の歴史の授業では1914年にサラエボ事件でオーストリア皇太子が殺害され、第一次世界大戦が始まったとしか習いません。

しかしこのサラエボ事件ひとつにせよ、ものすごく複雑な事件です。当時の社会情勢の縮図と言ってもいいくらい、大国間のぎりぎりの駆け引きがあったのです。

こうした単なる年号と出来事の暗記ではなく、歴史がどのように動いていったのかを知るには本当に最高な入門書です。しかもとにかく面白くて一気に読めてしまう。これは本当にありがたい本です。

ロシア革命や当時のロシアが置かれていた状況を知る上でもこの本はおすすめです。

以上、「神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』―この戦争がなければロシア革命もなかった」でした。

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世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃

世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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