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麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』あらすじと感想~シベリア出兵について学ぶのにおすすめの参考書

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麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』

麻田雅文著『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』は中央公論新社より2016年に出版されました。

早速この本の概要を紹介します。

1917年11月に勃発したロシア革命。共産主義勢力の拡大に対して翌年8月、反革命軍救出を名目に、日本は極東ロシアへ派兵、シべリア中部のバイカル湖畔まで占領する。だがロシア人の傀儡政権は機能せず、パルチザンや赤軍に敗退を重ねる。日本人虐殺事件の代償を求め、北サハリンを占領するなど、単独で出兵を続行するが……本書は、増派と撤兵に揺れる内政、酷寒の地での7年間にわたる戦争の全貌を描く。

Amazon商品紹介ページより

ドストエフスキー亡き後のロシアを知るためにロシア革命の歴史を学んでいた私でしたが、ふと「ではそのとき日本とロシアはどのような関わりがあったのだろうか」という疑問が起こってきました。

そこで調べてみると中学高校の歴史でも出てきたシベリア出兵という出来事がちょうどロシア革命と並行して起こっていたことがわかりました。

ですがシベリア出兵とは何かと言われると名前だけは思い出せるもののその内容まではまったくわからないことに気づきました。そこでこの本を読んでみることにしたのです。

著者の麻田氏は「はじめに」でこう述べます。

二〇世紀に、シべリアには多くの日本の軍人が足を踏み入れた。一度目は占領軍として、二度目は捕虜として。前者がシべリア出兵、後者がシべリア抑留である。

シべリア出兵は、ロシア革命の混乱に乗じ、一九一八(大正七)年に日本海に面したロシアの港町、ウラジオストクに日本を含む各国の軍隊が上陸して始まった。ウラジオストクからは、日本軍は二二年に撤兵する。だが本書は、二五年にサハリン島(樺太)の北部から日本軍が撤退するまで、足かけ七年に及んだ長期戦と定義する。

麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』中央公論新社Pi,ii

日本人にとってはたしかにシベリア抑留の方がよく知られています。特に北海道ではその傾向が強いです。

あとがきでも著者は次のように述べています。

本書は、シベリア出兵をテーマとする、初の新書である。(中略)

以前より関心のあるテーマだったものの、名だたる先行研究がそびえることもあり、執筆には迷いがあった。だがこのテーマで、全体を見渡せる新書となると皆無だった。またソ連崩壊後に、日本でもロシアでも研究は細分化し、全体像はかえって見えにくくなっている。あらためて、最新の知見を盛り込んだ通史を編むのに、中公新書こそふさわしいと考えてお受けした。

シべリア出兵は学界では論じられるものの、人びとからは忘れられている、という危機感も執筆を後押しした。教壇に立つようになってから、その思いはより一層深まっている。シベリア出兵と言えば、米騒動との関連で教えられてきただけの学生は多い。学生に限らず、多くの日本人にとって、日露戦争とアジア・太平洋戦争に挟まれたシべリア出兵の印象は薄い。二〇一八年には、出兵が始まって一〇〇周年を迎える。読者諸賢のさらなる好奇心で、この忘れられた戦争に、新しい知見が付け加えられるのを期待したい。

麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』中央公論新社P251

歴史においてあまりクローズアップされないシベリア出兵ですが、実は後の第二次世界大戦にもつながっていく非常に重要な出来事でありました。

共産主義のソヴィエトを警戒する意図だけではなく、欧米諸国からの圧力、そして第一次世界大戦の分け前を得るために欧米諸国にアピールしなければならなかった背景など、この本を読んでいると知らなかった意外な発見に驚くことが多々あります。

そして出兵が泥沼化し悲惨な戦闘が続き、日ソ相互の不審や憎しみが募っていく流れも後の日中戦争を彷彿とさせます。

シベリア出兵は日本の歴史を考える上で実は大きな意味を持った事件だったということをこの本では感じさせられました。

具体的にそれがどのような内容なのかはぜひこの本を読んで確かめて頂きたいなと思います。ロシアと日本の関係を知る上でもとても興味深い一冊となっています。

読みやすくてすいすい進んで行けますのでとてもおすすめです。

以上、「麻田雅文『シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争』」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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