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(2)インドに仏教はない?仏教発祥の地におけるその実態とは

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『シン日本仏教史』(2)インドに仏教はない?仏教発祥の地におけるその実態とは

羽田空港からデリー空港に到着した私はいきなり驚くことになりました。空港内の巨大な手のモニュメントにも面食らったのは事実ですが、何より、インドの匂いがしないのです。これは完全に私の偏見なのですが、インドに来ればスパイスの匂いがすると思い込んでいたのです。しかしどうでしょう、この空港にはそんな匂いはありません。無臭です。開発が進むインドにはもはやスパイス臭は存在しないのでしょうか。それともそもそもそんな匂いなど存在しないのでしょうか。ですが、答えを知るにはまだ早い。まだ入国して数時間も経っていないのです。じっくり確かめていこうではありませんか。

2023年8月某日。私は人生で初めてインドへとやって来ました。これまで世界一周の旅ヨーロッパのドストエフスキーゆかりの地を巡る旅をしてきた私でありましたが、実はこれが初めてのインドだったのです。

なぜ2019年の世界一周の旅の段階でインドに立ち寄らなかったのか、たしかに不思議ですよね。ですが、当時の私としてはインドはラスボス的な存在であったのです。世界の宗教を学び、そこから自分なりに仏教の研究を進めてから満を持してインドに挑みたい。そんな思いがあったのです。だからこそ2019年にはインドを訪れなかったのです。(それに、行ったら体調を崩しそうで、世界一周の旅程に組み込むことはあまりに危険という現実的な判断もありました)

ですが2023年、いよいよ機は熟しました。私はここから3度に分けてインドに渡航し、仏跡やヒンドゥー教の聖地を巡ることにしたのです。

さて、日本仏教史と言いながら前回の記事ではアフリカの話をし、ここからしばらくはインドについてお話ししていくのでありますがここで皆さんに質問です。

現在のインドの主要な宗教は何でしょうか。そしてそれは全体の約何パーセントを占めるでしょうか。

いかがでしょう。いきなり問われると意外とわからないですよね。

答えはヒンドゥー教です。そしてこのヒンドゥー教は全体の約80%ほどを占めています。

ちなみにですが私達日本人からすればインドと言えば仏教の故郷のようなイメージがありますが、その仏教の占める割合はと言いますと、なんと1パーセントにも満たないのです。しかも現代インドにおける仏教は1956年に始まった新仏教がそのほとんどですので、事実上インドにおいては昔から続く伝統的な仏教というのは存在しないのです。なぜ仏教発祥の地であるインドで仏教が存在しないのかはこれからじっくりお話ししていきますが、現代インドの宗教事情とはこういうものなのだということをまずはご紹介しました。

さて、いよいよここから本題です。

インドといえばきっと多くの方がガンジス川の沐浴をイメージするのではないかと思います。

ヴァーラーナシー Wikipediaより

しかしインドは広い。ガンジス川の聖地と言っても、実はインドにはいくつもあるのです。

私が向かったのはガンジス川上流のハリドワールという聖地です。ここはデリー空港から北に250キロ弱ほどの距離にあり、車で行くならば6時間半ほどの道のりです。ちなみに、ヴァーラーナシーはガンジス川の中流域にあたります。

ヴァーラーナシーの早朝の沐浴場。筆者撮影

ヴァーラーナシーの汚さに関してはすでに日本人も皆何らかの媒体で耳にしたことがあるはずです。指をつけただけで体調を崩すとか、沐浴したら数週間入院したとかの逸話にも事欠きません。

それもそのはず、ガンジス川中流域ともなると様々な街の生活排水が流れ込んできています。さらにここヴァーラーナシーの下水設備も壊滅的で汚水がそもそも垂れ流し状態です。そしてその川で皆洗濯し、さらにはその他諸々の必要なこと(ここではあえて書かない)をするのです。無菌消臭に慣れ切った日本人がこんな所に浸かり、少しでもその水が体内に入り込もうものならどうなるかは想像するも恐ろしいです。

ただ、最近は政府肝入りの事業として下水処理の整備が行われていて、そこに日本企業も関わっているそうです。つまり、あまりの汚染ぶりにインド人も最近はお腹を壊しているらしいのです。ガイドさんもそう言っていました。

とまあこういうわけでヴァーラーナシーのガンジスの汚さについてはここまでにしておいて、そのはるか上流、ヒマラヤの麓のガンジスはどうかといいますと、これがものすごくきれいだというのです。川の底が見えるほどのきれいさだとのこと。このきれいさもあって、近年はインド人がヴァーラーナシーよりもハリドワールに行きたがるという話もあるのだそう。

ふむ、そうであるならば私もまずはこちらから行ってみるのもありではないか。いきなりどぎついインドを見るよりもきれいなガンジスを見た方が精神的にも安心なのではないかと私は考えたのです。(それが実に甘い考えだったことをこの後すぐに私は知ることになりました)

ここから先の記事では私が体験したガンジス川上流のヒンドゥー教聖地ハリドワールの様子を皆さんにご紹介します。

私自身、ここでの経験があったからこそブッダの独自性や偉大さをさらに感じることになりました。やはり比較対象があるとものごとがよりはっきりと見えてきます。インドの仏教とは何か、日本仏教とは何かを考える上でもこれは非常に役に立ちます。遠回りのように思えるかもしれませんがこれが大切なのです。

では、これよりディープなヒンドゥー教世界をこれから皆さんにお目にかけましょう。

主要参考文献一覧

〇インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧
〇インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧
〇仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧
〇中国仏教・中国思想のおすすめ解説本一覧
〇親鸞聖人や日本仏教を学ぶためのおすすめ参考書一覧

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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