蜷川幸雄演出『ムサシ』あらすじと感想~武蔵、小次郎の舟島の決闘の後日談を描いた衝撃の舞台!圧倒的面白さ!

名作の宝庫・シェイクスピア

蜷川幸雄演出『ムサシ』あらすじと感想~武蔵、小次郎の舟島の決闘の後日談を描いた衝撃の舞台!圧倒的面白さ!

今回ご紹介するのは2009年に公演された蜷川幸雄演出、原作井上ひさしの『ムサシ』のDVDです。

早速この作品について見ていきましょう。

「ムサシ」見参!!
2009年演劇界を揺るがす話題作!!
井上ひさしvs.蜷川幸雄の集大成
新作書き下ろし時代劇!!

【セールスポイント】
●2009年演劇界をゆるがした話題作「ムサシ」がついにDVDで登場!
公演チケットが、近年稀に見る争奪戦になった「ムサシ」が待望のDVD化!
●作・井上ひさし×演出・蜷川幸雄が贈る集大成新作書き下ろし時代劇!!
「天保12年のシェイクスピア」「藪原検校」「道元の冒険」「表裏源内蛙合戦」で
タッグを組んだ演劇界の至宝、井上ひさし×蜷川幸雄の最新作!
●キャストには藤原竜也、小栗旬、鈴木杏、辻萬長、吉田鋼太郎、白石加代子の理想的な俳優陣が勢揃い!

【公演データ】
埼玉公演 2009年3月4日(水)~4月19日(日)
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
大阪公演 2009年4月25日(土)~5月10日(日)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

【スタッフ・キャスト】
作:井上ひさし(吉川英治「宮本武蔵」より)
演出:蜷川幸雄
音楽:宮川彬良
(出演)
藤原竜也
小栗 旬
鈴木 杏
辻 萬長
吉田鋼太郎
白石加代子

大石継太
塚本幸男
高橋 努
堀 文明
井面猛志

DVD2枚組 本編196分+特典映像ディスク139分
【ムサシ特典映像ディスク内容】
記者発表から千秋楽まで舞台「ムサシ」の裏側を大公開!
キャスト・スタッフで赴いた鎌倉建長寺での座禅体験や井上ひさし邸訪問など貴重な映像を紹介。
蜷川幸雄をはじめとする主要キャストによるスペシャルインタビューなど豪華映像が満載(139分)!

Amazon商品紹介ページより

このDVDを手に取ることになったのはシェイクスピアを学ぶ過程で出会った蜷川幸雄さんがきっかけでした。

ですが正直に申し上げますと、実はこの『ムサシ』本編よりも特典のドキュメンタリーを観たいがために私はこのDVDを購入したのでありました。

と言いますのも、私はこれまで当ブログで紹介してきたように、ここ最近蜷川幸雄さん関連の本を読んできました。蜷川さんの演劇論や舞台制作の様子を活字で学んできたわけです。そして蜷川さん演出のシェイクスピア作品も観ることになりました。

いやあ面白い!蜷川さんのシェイクスピア作品のDVDを観ながらその面白さにすっかりはまってしまった私でしたが、ある日私はふとこんなことを思ったのです。

「あれ?これまで蜷川さんの本を読んできたけど、蜷川さんってどんな声をしてるんだろう」と。

蜷川さんの舞台稽古はもはや伝説と化しているほど有名です。その様子はどの本にも書かれていたことでした。私はそれらを活字で見てきたわけですが、ふと「その声」を聴きたくなってしまったのです。

稽古場で蜷川さんはどんな声で役者さんたちに語りかけていたのか、そのトーンは?激しさは?優しさは?

活字で読むということは、私の脳内で再生された音(のようなもの)の流れに過ぎません。私は蜷川さんの言葉を自分の音声で再生していたにすぎないのです。

そう考えるとあの伝説の稽古場の雰囲気を知るにはやはり蜷川さん本人の声を聴くしかない。そう思いドキュメンタリー映像が収録されているこのDVDを購入したのでありました。

この、読書における「脳内の声」という問題にここまで心が向いたのは初めてのことかもしれません。蜷川さんの声を聴きたいという思いをきっかけに、これまでの読書すべてにも同じ疑問が浮かんできました。私は「親鸞とドストエフスキー」をテーマにこれまで学んできましたが、私は親鸞の声も、ドストエフスキーの声も知りません。なのに彼らの著作や書簡などを「彼らの言葉」として読んでいた。

ですが「活字の言葉」は意味は伝えられても、本人の声では決してない。それを読んでいる自分自身の脳内の声でしかない。おぉ!そもそも脳内の声って自分の声なのか!?録音した声が自分のものとは思えないように、脳内の声すら得体の知れないものではないか!皆さんもいかがでしょうか?自分の心の声はどんな音をしていますか?これはやってみるとかなり難しいです。私も今混乱状態です。

さて、話は妙な方向に行ってしまいましたが、私は蜷川さんの声を聴くべくこのDVDを視聴し始めたのでした。

ドキュメンタリーでは出演者一同と蜷川さんが鎌倉の禅寺を見学し、井上ひさしさんのお宅に伺った映像を観ることができました。後半では蜷川さんのインタビューもあり、このDVDでは蜷川さんの声をたっぷり聴くことができました。オープンな雰囲気ながらその声はシャープで知的な雰囲気。これが蜷川さんの声、話し方なのかと見入ってしまいました。

そしてこのドキュメンタリーとインタビューを見てから私はいよいよ本編に突入しました。

ドキュメンタリー目当てで購入したという不届き者の私でしたが、この舞台を観始めてすぐに声を大にして謝りたくなりました。ものすごく面白い!宮本武蔵と佐々木小次郎の決戦は吉川英治の小説で有名ですが、その二人が後に再会したらどうなるのかというのがこの作品の大きな流れです。

永遠のライバルたる二人は今度こそ決着を付けるのか。激しい立ち合いをこの舞台は観ることになるのか。

いやいや違うんです。二人はなかなか戦わない。周りの人たちも彼らが戦うことを心底止めたく思っている。

そして役者さんたちの演技にはとにかく圧倒されっぱなしでした。シリアスシーンでは息もつけぬほどの緊張感、喜劇的なシーンでは思わず笑ってしまうコミカルな演技。

「とんでもないものを見てしまった」

この一言に尽きます。

後半の大団円に向かうシナリオも脱帽です。お見事すぎてため息が出ました。井上ひさしさんのすごさを感じずにはいられません。超一流の作家への道はなんと遠いことか・・・はるか高みの世界だなとつくづく感じます。

いやあ、とんでもないものを見てしまいました。このDVDを観れて本当によかったなと思います。

そして今この記事を書いている時にYouTubeでDVD版とは違う内容のものですが『ムサシ』の舞台裏の映像を見つけましたのでこちらも紹介します。この舞台の雰囲気を感じるにはうってつけの映像です。ぜひご覧ください。

以上、「蜷川幸雄演出『ムサシ』あらすじと感想~武蔵、小次郎の舟島の決闘の後日談を描いた衝撃の舞台!圧倒的面白さ!」でした。

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