目次
おすすめドストエフスキー伝記一覧
今回の記事ではこれまで紹介してきました伝記を一覧できるようにまとめてみました。
それぞれの伝記にはそれぞれの個性があります。
また、読み手の興味関心の方向によってもどの本がおすすめかは変わってくることでしょう。
簡単にですがそれぞれの伝記の特徴をまとめましたので、少しでも皆様のお役に立てれば嬉しく思います。
伝記のタイトルをクリックしますとそれぞれの伝記の紹介記事に飛びますので興味がある方はぜひご覧になって頂ければと思います。
フランスで活躍した著名な伝記作家アンリ・トロワイヤによる伝記
読みやすさ、そして伝記の内容と非常にバランスの取れた作品です。
この伝記の特徴は物語的な語り口にあり、 読み進めている内にいつの間にかドストエフスキーに感情移入してしまいます。最晩年のドストエフスキー栄光の瞬間には涙が出そうになりました。もはや感動的な物語小説を読んでいるかのような感覚です。
私の一番のおすすめの伝記です。
アンリ・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』最もおすすめなドストエフスキー伝記の王道
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ドストエフスキー伝 (中公文庫 M 284-6)
ソ連の著名なドストエフスキー学者による伝記です。
この本の特徴は、
あり余るほど豊富な原資料を駆使し、加えて新しく発見された資料や長年蓄積した知識やドストエフスキイ夫人に直接会って聞きただした事実などをもとにして書いている点に大きな強みがある。
P429のあとがきより
という点にあります。
実際、この伝記が引用元となっているドストエフスキー書籍をよく見かけます。研究の基本文献としての評価も定まっているようです。
本のサイズも大きく、内容、文章共に固めなので気軽な読み物としてはあまりおすすめ出来ませんが、研究の資料として重要なものになるのではないかと私は思います。
グロスマン『ドストエフスキイ』ソ連の権威あるドストエフスキー伝記
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ドストエフスキイ (1966年)
イギリスの国際政治学者、歴史家 E・H・カーによる伝記で小林秀雄も重要視しました。
イギリス的な客観的な叙述スタイルで、カーの筆はどこか一歩引いたような冷静な視点です。
過度にドストエフスキーを神格視したり、不当に貶めるようなこともしません。いいところも悪いところも含めて、出来るだけ客観的に資料を分析していくという姿勢が感じられます。
しかし、これを一冊目に読んでしまうと、若干ドストエフスキーに対して淡白な感想を抱いてしまう危険性があるような気がします。以前紹介しましたアンリ・トロワイヤの『ドストエフスキー伝』のようにドラマチックで感情移入してしまうような伝記とは若干毛色の違う伝記であります。
ですので、まずは他の伝記を読んでから二冊目以降にこの伝記を読めばドストエフスキーの違った側面を知ることが出来て非常にバランスよくドストエフスキーを知ることが出来るのではないかと私は思います。
E・H・カー『ドストエフスキー』小林秀雄が参考!イギリス人作家によるドストエフスキー伝
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ドストエフスキー (筑摩叢書 106)
著者のピエール・パスカルは1890年生まれのフランス、ソルボンヌ大学の名誉教授で、ロシア文学やロシアの農民文化、旧教徒・分離派教徒の研究で有名です。
この著者による伝記の特徴は何と言っても、ドストエフスキーと宗教の関係性に焦点を当てているところにあります。
ドストエフスキーと宗教について関心のある方にはぜひおすすめな伝記です。
ピエール・パスカル『ドストエフスキイ』キリスト教的ドストエフスキー伝
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ドストエフスキイ (1975年) (作家と人間叢書)
著者のドリーニンは1883年に生まれたソ連の著名な学者です。
この伝記の特徴は書名どおり、ドストエフスキーと同時代に生き、かれの身近にいた人々の証言で伝記が構成されているところにあります。
そのため、他の伝記とは異なるドストエフスキーの描写が見られたり、ドストエフスキーが過ごした生活の様子をよりリアルに知ることができます。
ドリーニン編『ドストエフスキー 同時代人の回想』ドストエフスキーを知る人間の証言
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ドストエフスキー同時代人の回想 (1966年)
書名のごとく、 写真や絵がとにかく大量に掲載されています。
この伝記を読んでいると中学生や高校生の時にお世話になった日本史の資料集を思い出します。写真とイラストでいっぱいだったあの本です。
これまで見たこともなかったドストエフスキー作品の挿絵やロシアの風景、ドストエフスキーに関わる人たちの顔写真がどんどん出てきます。
資料集や副読本としてとても便利な1冊です。
V・ネチャーエワ『ドストエフスキー 写真と記録』写真と絵で学ぶドストエフスキー伝
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ドストエフスキ- 写真と記録
ドストエフスキーの妻であるアンナ・ドストエフスカヤ夫人によって書かれた出会いから死別までの14年間を綴った回想記
夫であり父である家庭人ドストエフスキーの姿をこの伝記から知ることができます。
暗くて厳めしいイメージが先行するドストエフスキーですが、この伝記では奥さんを溺愛し、驚くほどの子煩悩っぷりを発揮しています。
ドストエフスキーのイメージが変わること請け合いです。
アンナ夫人と出会う前のドストエフスキーは描かれていませんので、他の伝記を読んでからこちらの本を読むことをおすすめします。
私が最も好きな伝記です。 私が心の底からドストエフスキーを好きになれたのはこの伝記のおかげです。 この本がもっと世に広まることを願うばかりです。
アンナ・ドストエフスカヤ『回想のドストエフスキー』ドストエフスキーの奥様による回想記
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回想のドストエフスキー〈1〉 (みすずライブラリー)
ひとつ前に紹介しました『回想のドストエフスキー』の著者アンナ夫人による日記です。
ドストエフスキーと2人きりで出発したヨーロッパ旅行の1年目の様子が赤裸々に記されています。
この伝記の最大の見どころはドストエフスキーの賭博中毒という狂気の生活がこれ以上ないというほどの迫力で記されているところにあります。
ドストエフスキーが最もダメ人間であった頃の姿を知るにはこの日記が最も強烈な印象を与えてくれるでしょう。
もはや壮絶としか言いようがないです。並の小説を読むよりはるかに劇的でショッキングなものになっています。
『回想のドストエフスキー』と合わせて、こちらの『アンナの日記』も読むことをおすすめします。
ドストエーフスカヤ『ドストエーフスキイ夫人 アンナの日記』ドストエフスキーの奥様による日記
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ドストエーフスキイ夫人アンナの日記 (1979年)
終わりに
以上、私のおすすめのドストエフスキー伝記の一覧でした。
ドストエフスキーは小説作品の面白さもさることながら、ドストエフスキーその人自身が1番面白いのではないかとも言えるのかもしれません。
ぜひ、ドストエフスキーの伝記を手に取って頂けたらなと思います。
ドストエフスキー作品の見え方がきっと変わることでしょう。
次の記事からはドストエフスキーを学ぶための参考書、研究書を紹介していきます。
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