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島田桂子『ディケンズ文学の闇と光』あらすじと感想~ディケンズとドストエフスキー・キリスト教を知るならこの1冊!

島田桂子
目次

ディケンズとドストエフスキーの関係

チャールズ・ディケンズ(1812-1870)Wikipediaより

ディケンズといえば『クリスマス・キャロル』『オリバー・ツイスト』などで有名なイギリスの文豪です。

ディケンズは1812年生まれでドストエフスキーの9歳年上に当たります。

前回の記事でもお話ししましたように、ディケンズとドストエフスキーは非常に深いつながりがあります。

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そしてディケンズとドストエフスキーを考える上で重要になってくるのは、キリスト教作家としてのディケンズの姿です。

ドストエフスキーはキリスト教作家としてディケンズを尊敬していました。

今回はそのディケンズを学ぶ上で非常に参考になる本を見つけましたのでここでご紹介します。

島田桂子『ディケンズ文学の闇と光 悪を照らし出す光に魅入られた人の物語』概要と感想

著者の島田桂子氏はキリスト教文学、19世紀~20世紀イギリス文学が専門の学者で、巻末の著者紹介には次のような経歴が掲載されていました。

札幌生まれ。北星学園大学文学部英文学科卒業。
米国オレゴン州ルイス・アンド・クラーク大学 英文学専攻卒業(B.A. in English)。
英国ニューカッスル・アポン・タイン大学 宗教と文学専攻修士課程修了(M.A. in Religion and Literature)。
聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科博士後期課程修了(学術博士、Ph.D.)。
遺愛女子高等学校教諭、東京農業大学非常勤講師などを経て、現在聖学院大学総合研究所特任研究員。

島田桂子『ディケンズ文学の闇と光 悪を照らし出す光に魅入られた人の物語』より

今回ご紹介する『ディケンズ文学の闇と光 悪を照らし出す光に魅入られた人の物語』ですが、まずはじめに言っておきます。

これは名著中の名著です。本当に素晴らしいです。

読んでいて驚いてしまいました。

ディケンズといえばイギリスの文豪。ロシアで言うならドストエフスキーやトルストイのような存在です。

そのような作家の解説書となると読みにくかったり難しくなってしまいがちですが、この本は一味違います。

わかりやすく、かつ非常に深いところまで解説してくれるのです。

言葉も平易ですし文章も読みやすい。

しかもテーマに沿って作品ひとつひとつを解説してくれるのでその作品を理解するのに非常に役に立ちます。これほどわかりやすく、かつ深い考察までされている本はなかなかお目にかかれるものではありません。

読み始めてすぐに私はいい意味で驚いてしまったのでした。

さて、肝心のこの本の内容ですが、Amazonの作品紹介では次のように紹介されています。

宗教的誠実さや正義感を支える信仰は評価されても、キリスト教的想像力に触れられることの少なかったディケンズ。だが、宗教的な罪理解が作品の構造とプロットに影響している作品は存在する。“キリスト教作家”としての再評価。

Amazon商品紹介ページより

ここで述べられているように、実はディケンズはこてこてのキリスト教作家というよりも、誠実さや正義感が前面に出た作家として捉えられることが多い作家でした。

しかしドストエフスキーが見抜いていたように、そこにはキリスト教の信仰が大きくその根底には存在していたのです。

この作品ではディケンズの宗教的な思想や遍歴、そして作品から見る聖書的な世界観を解説していきます。

ディケンズの作品はキリスト教的な世界観が非常に多く描かれています。

ディケンズの作品創造の源泉がキリスト教的世界観にあるのです。

とはいえ、ディケンズも信仰ガチガチの人間ではありません。あくまで物語の世界観の形成にキリスト教の思想が重要な影響を与えたということです。

彼の全てが全てキリスト教だということではありません。キリスト教にも色々あります。人それぞれキリスト教徒としての様々な姿があるのです。(これはドストエフスキーも同じです)

日本でも同じですね。仏教徒と一言で言っても宗派もたくさんあれば、たとえ同じ宗派であろうともひとりひとりその心や生活はまったく違います。

この本ではディケンズとその作品ひとつひとつを丁寧に追っていきます。

作品から読み取れるキリスト教的な世界観を島田氏が懇切丁寧に解説してくれますので非常にわかりやすいです。

教義的なものや哲学的な知識というよりも「ディケンズが世界をどう見ているか」、「善悪をどう考えているか」、「社会をどうしたら良くできるのだろうか」という視点から述べているので、キリスト教にあまり関心がない方でも理解できるように書かれています。

難しい言葉を使わずにディケンズ作品の核心を突いていくその語り口はもう見事としか言いようがありません。

これから先ディケンズの作品を紹介していきますが、基本的には島田桂子氏の『ディケンズ文学の闇と光 悪を照らし出す光に魅入られた人の物語』を参考に書いていきたいと思います。

この本はディケンズの参考書にとどまらず、ドストエフスキーの参考書としても必見です。

この著作内でもドストエフスキーは何度も言及されています。

「キリスト教の影響」というテーマでディケンズとドストエフスキーを比べてみることでまた新たなドストエフスキーの一面を知ることができるでしょう。

島田桂子氏の『ディケンズ文学の闇と光 悪を照らし出す光に魅入られた人の物語』。非常におすすめです。

以上、「ディケンズとドストエフスキー・キリスト教を知るならこの1冊!島田桂子『ディケンズ文学の闇と光』」でした。

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ディケンズ文学の闇と光: 〈悪〉を照らし出す〈光〉に魅入られた人の物語

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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