「プラハの春」とは何かを学ぶのにおすすめの参考書10冊を紹介~ロシア・ウクライナ侵攻を考えるためにも
「プラハの春」ソ連軍侵攻事件とは何か学ぶのにおすすめの参考書10冊を紹介~ロシア・ウクライナ侵攻を考えるためにも
この記事ではこれまで当ブログで紹介した1968年の「プラハの春」ソ連軍侵攻事件(チェコ事件)について学ぶためにおすすめの参考書をご紹介していきます。(※記事タイトルの写真はWikipediaより引用しています)
現在、ロシアによるウクライナ侵攻が危機的な状況を迎えていますが、ソ連、ロシア、東欧の歴史を知る上でも「プラハの春」事件は非常に重要な意味を持っています。
では、その「プラハの春」とは一体何だったのか。チェコ文学研究者の阿部賢一氏の『100de名著 ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』』では以下のようにまとめられています。
オーストリア=ハンガリー帝国の一部だったチェコスロヴァキアが国として独立を宣言したのは、第一次世界大戦後の一九一八年のことです。独立後は、哲学者でもあった大統領トマーシュ・ガリッグ・マサリクの下で、作家カレル・チャぺックから、前衛芸術を推進した芸術理論家カレル・タイゲに至るまで、さまざまな文化が花開きました。日本でも人気の高い画家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)の《スラヴ叙事詩》は、チェコスロヴァキアの建国十周年を記念して公開されたものです。
ところが、一九三八年、当事者であるチェコスロヴァキア不在の状態で、英仏独伊の首脳が締結したミュンヘン協定により、ドイツ系住民の多かったズデーテン地方のドイツへの割譲が認められてしまいます。さらに翌年には、チェコスロヴァキアは解体し、チェコはドイツのボヘミア・モラヴィア保護領となってしまいます(スロヴァキアは傀儡政権により独立)。チェコスロヴァキアはこの時、ヨーロッパの地図から一旦姿を消してしまうのです。
第二次世界大戦が終わると、チェコスロヴァキアの一部の指導者は、ソ連への接近を図ります。その動きの背景には、大戦前のミュンヘン協定で国が崩壊した記憶が生々しくあり、英仏に対して「裏切られた」という思いが強かったためで、一九四六年に共産党が第一党となり、四八年には実質的な社会主義体制が確立されることになりました。
一九六〇年代に入り、経済が停滞すると、共産党の内部から変革を求める動きが出てきます。一九六八年、「人間の顔をした社会主義」というスローガンを掲げ、アレクサンデル・ドゥプチェク第一書記の指導のもと、文化開放政策が進められます。この動きは「プラハの春」と呼ばれました。
しかし、ソ連を中心とする東側陣営はこの動きを容認せず、同年八月二十日、ソ連軍を主力とするワルシャワ条約機構軍が国内に侵攻する、いわゆる「チェコスロヴァキア事件」が起きます。ドウプチェクら指導陣は退任を余儀なくされ、その後、新しい大統領グスターフ・フサークのもと、「正常化」体制という、より締め付けの厳しい体制が築かれました。プラハの春の民主化路線が「異常」であり、それ以前の「正常」な体制へ戻すという意味で「正常化」という表現が使われました。
その後の一九七〇年代は、チェコの文化がもっともグレーだった時代とも言われます。検閲、監視が横行し、市民たちも疑心暗鬼になっていたからです。
NHK出版、阿部賢一『100de名著 ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』』P13-17
阿部賢一氏の『100de名著 ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』』は複雑なソ連、東欧事情をわかりやすく解説してくれる素晴らしい作品です。
ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』 2020年2月 (NHK100分de名著)
ヴァーツラフ・ハヴェルの『力なき者たちの力』も驚異の名著ですが、それをここまでわかりやすく解説した阿部賢一先生の本も驚異の一冊です。
では、「プラハの春」の概要もお話ししましたので、これより、本紹介を始めていきます。それぞれのリンク先ではより詳しくお話ししていますのでぜひそちらもご覧ください。
『「連帯」10年の軌跡 ポーランド・おしつぶされた改革 チェコスロバキア 』
この本は『NHKスペシャル 社会主義の20世紀』というシリーズ物の第三巻で冷戦末期のポーランドの反ソ運動と、1968年に起こったチェコのプラハの春事件について書かれた作品です。
私がこの本を手に取ったのはプラハの春について解説されたものを探していたからでした。
この本は冷戦末期のポーランド情勢とプラハの春に特化した本で、全270ページある中でそれぞれがちょうど半々ほどで語られます。
プラハの春についてだけで100頁以上も解説してくれる本は意外と数が少なく、こうした充実した解説は非常にありがたいものでした。
そして、単に1968年のプラハの春だけでなくそれに至る前段階の解説もわかりやすく、なぜプラハは独特な社会主義体制に進もうとしたのか、そしてなぜソ連はそれを徹底的に潰そうとしたかがよくわかります。歴史の流れを丁寧に追ってくれるので事件の背景を掴むのに非常に適しています。そしてその後の1989年のビロード革命へと至る道も知れるのでプラハの春の前後までしっかりカバーされています。
写真も豊富で当時の様子もイメージしやすく、プラハの春の概要を知るにはうってつけの一冊となっています。
『「連帯」10年の軌跡 ポーランド・おしつぶされた改革 チェコスロバキア 』~プラハの春の流れを知るのにおすすめ
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ジョセフ・クーデルカ『プラハ侵攻1968』
この本は写真家ジョセフ・クーデルカによる、ソ連のプラハ侵攻の様子を収めた写真集です。
美しきプラハの街に大量の戦車と完全武装の軍人たちが押し寄せ、武力で制圧。
これにより、抑圧からの自由を求めたプラハの春は完全に終焉を迎えることになってしまいました。
その緊迫したプラハ情勢をリアルに体感できるのがこの作品です。
そしてこの本では249枚の写真が掲載されています。
そのどれもが衝撃的な写真です。
ページをめくる度に私はぞわっとした寒気が全身に走り、鳥肌が立ちました。これは誇張ではありません。それだけここに掲載されている写真は衝撃的です。
特に、戦車と向かい合うプラハ市民の写真は言葉を失ってしまうほどです。ただただ呆然とするしかありません。
この事件は1968年に起きたものです。今から50年ちょっと前の話です。たった50年前のプラハでこんなことが起きていたのかと。あの美しいプラハのど真ん中を戦車が行進し、武装した軍人がプラハ市民に銃口を向けている・・・そしてそれに対し暴力ではなく、言葉、非暴力によって抵抗しようとするプラハ市民。その姿にとにかく心が震えます・・・
この作品では写真だけでなく、プラハの春とは何だったのか、なぜソ連軍の侵攻が起こったのか、そしてプラハ市民がいかに戦車に立ち向かったのかという解説も聞くことができます。この解説も頗るわかりやすく、不条理な暴力に対してプラハ市民がいかに勇敢に「言葉」や「人間性」で立ち向かったかを知ることができます。
この本は驚くべき事実を私たちに教えてくれます。私は非暴力で抵抗を続けたプラハの人々の勇気、文化、人間性に心から敬意を抱きました。読んでいて泣きそうになるほど、私は心打たれました。
ここに掲載されている写真は驚くべきパワーを持っています。その衝撃をぜひ皆さんにも感じて頂けたらと思います。
なかなか入手しにくい本ではありますが、中古本としてや、大きな図書館などでは置いているかもしれません。もし見つけたらぜひ手に取って頂きたいと思います。これは絶対におすすめしたい1冊です。
ジョセフ・クーデルカ『プラハ侵攻1968』傑作写真集!プラハ市民はいかに戦車と向き合ったのか!
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ヴィクター・セベスチェン『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』
この作品の著者ヴィクター・セベスチェンは当ブログでも何度も紹介してきた作家です。
彼の作品はとにかく読みやすく、面白いながらも深い洞察へと私たちを導いてくれる名著揃いです。そんなセベスチェンによるソ連崩壊の過程を追ったドキュメント作品がこの『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』です。
彼の『レーニン 権力と愛』という作品においては「『レーニン 権力と愛』を読む」という題で15回以上にわたって本の内容をじっくりと読んでいきました。それほどこの作品は面白く、私にとって興味深い内容が満載だったのですが、今回の『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』もそれに劣らぬ面白さでした。
今回も「『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』を読む」という形でじっくり記事を更新していきたいところだったのですがあまりに分量が多くなり、しかも内容が多岐にわたるということで今回は断念せざるをえません。ただ、それをしたいと思うほどこの作品が魅力的であることはぜひお伝えしたいです。
この本の中でもプラハ事情が詳しく書かれます。セベスチェン節で説かれる物語は読んでいて時間を忘れるほどのめり込んでしまいます。ものすごく面白い本です。ぜひこの本もおすすめしたいです。
ヴィクター・セベスチェン『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』共産圏崩壊の歴史を学ぶのにおすすめ!
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ヴィクター・セベスチェン『ハンガリー革命 1956』
上でも少し紹介しましたが、この本は1956年に起きたハンガリー革命について書かれた本です。
この事件がプラハの春と異なるのは、ハンガリー側がソ連側に徹底抗戦し激しい戦闘になったということでした。
その結果、激しい抵抗にあったソ連軍はブダペストの街を廃墟にするほどの大砲撃を行い、市民がゲリラ戦をする余地すら奪いました。完全なる破壊です。こうなっては市民の武装程度でどうなる問題ではありませんでした。あっという間にハンガリーは制圧され、今度こそ完全にソ連の支配下に置かれることになってしまいました。
この事件はソ連配下にあった中欧、東欧世界にとってとてつもない衝撃を与えました。
ソ連に歯向かえばこういうことになるという見せしめになってしまったのです。
また、こういうことが起きた時に西側陣営は助けてくれず、平気で見捨てるということも彼らは知ることになりました。
これ以後、東側陣営ではしばらくの間革命運動は下火になります。
チェコのプラハではこのおよそ10年後「プラハの春」運動が起きますがこれもソ連軍の侵攻により強制的に弾圧されることになってしまいます。
ソ連支配下における中欧、東欧の抑圧はこのハンガリー革命によってその方向性が決定付けられることになったのでした。その意味においてこのハンガリー革命というのは非常に重要な出来事と言えるでしょう。
この本はそうした歴史的大事件の経緯を余すことなく私たちに見せてくれます。まさしく臨場感あるドキュメンタリー番組を見ているかのようです。
ヴィクター・セベスチェンの絶品の語り口をぜひ皆さんにも感じて頂きたいです。非常に面白い本です。現代を生きる私たちにたくさんの教訓を与えてくれます。とてもおすすめな1冊となっております。
ヴィクター・セベスチェン『ハンガリー革命 1956』世界に衝撃を与えた冷戦下東欧の大事件
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O.A.ウェスタッド『冷戦 ワールドヒストリー』
私は1990年生まれということで冷戦時代を経験していません。なかなか冷戦時の世界を学ぶ機会もなく、ほとんど冷戦のことを知らなかったというのが正直なところでした。
ですがこの本はそんな私でもすらすら読め、そして驚くような事実をたくさん教えてくれます。世界の歴史の流れをとてもわかりやすく、刺激的に教えてくれます。米ソ冷戦を軸にヨーロッパやアジア、中南米、アフリカまで世界中の歴史を学ぶことができるスケールの大きい歴史書となっています。
歴史書というと固い読み物のようなイメージがあるかもしれませんが、まるで物語を読んでいるかのように入り込むことができます。これはとてもおすすめな1冊となっています。ぜひ手に取って頂きたい本です。
O.A.ウェスタッド『冷戦 ワールドヒストリー』冷戦時代の世界を網羅したおすすめ通史
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V・ハヴェル『力なき者たちの力』
まず言わせてください。この本は衝撃的な1冊です。私が昨年読んだ本の中でもトップクラスのインパクトを受けた作品でした。元々プラハの春に関心を持っていた私でしたが、この本を読み、あの当時のプラハで何が起こっていたのか、そしてそこからどうやってソ連圏崩壊まで戦い、自由を勝ち取ったのかという流れを改めて考え直させられる作品となりました。
この本はコロナ禍で混乱を極め、生きにくい世の中となってしまった日本においても非常に重要な視点を与えてくれます。今こそこの本が評価されるべき時です!
ヴァーツラフ・ハヴェルは元々劇作家でありましたが、後にチェコの大統領となった人物です。
ハヴェルはプラハの春も経験し、一貫してソ連の介入や自由を抑圧する全体主義への抵抗を示していました。その活動の根本思想ともいうべきものがこの『力なき者たちの力』で書かれることになります。
この記事ではハヴェルが述べんとしたことを一部でありますがじっくりと見ていきます。
何度も言わせて頂きますが、この本は今こそ読まれるべき本です!名著中の名著です!ぜひ手に取って頂きたい作品です。
驚異の名著!V・ハヴェル『力なき者たちの力』チェコ大統領による必読エッセイ~知らぬ間に全体主義に加担する私たち
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V・ハヴェル『ジェブラーツカー・オペラ〈乞食オペラ〉』
ヴァーツラフ・ハヴェルは日本ではあまり知られていませんし、その作品となるとさらに知名度は小さくなってしまいます。これまで当ブログでもプラハの春やハヴェルのことについて紹介してきましたが、やはりそれはあまりに惜しいことだと思います。ハヴェルはもっともっと注目されるべき人物です!
ハヴェルの思想、そして劇作品に込められたものは現代日本を生きる私達にとってあまりに巨大な意味があります。
そしてこの本はそのことを感じるのに最適な作品となっています。
『ジェブラーツカー・オペラ〈乞食オペラ〉』という作品そのものももちろん面白いのですが、秀逸なのはこの本に書かれている解説です。この解説を読めばこの時代のプラハで何が起こっていたのか、ハヴェルとはどんな人物なのか、そしてハヴェルは何を思い、何を私達に伝えようとしているのかがとてもわかりやすく述べられます。
この本はとにかく素晴らしいです。プラハの春を知る上でも必須文献と言ってもいいのではないでしょうか。
V・ハヴェル『ジェブラーツカー・オペラ〈乞食オペラ〉』プラハの春以後の空気を知るのに必読の傑作劇!
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春江一也『プラハの春』
この作品は私にとって思い入れのある作品です。
私は2019年の3月から80日をかけて13カ国を巡る旅に出ました。そしてその中にチェコのプラハが目的地の一つとしてあったのです。そしてこの旅で出会った素晴らしい街達の中でも一番好きになったのがこのプラハだったのです。
私はこの旅に出る数か月前、「プラハに行くならこれを読んでおかないと」とこの作品を手に取っていたのでした。そしてこの本で語られるプラハの美しさに魅了されてしまったのです。この作品ではプラハの歴史や文化、その精神性が実に巧みに描かれています。私はこの作品を読んだからこそ現地でその魅力をより感じることができたのではないかと感じています。それほどこの作品はプラハの魅力を余すことなく伝えています。
私たち読者はこの小説を通して1967~8年当時のチェコが置かれた状況を知っていくことになります。私自身もこれを読んだ当時はソ連のことをほとんど知りませんでした。プラハの春という出来事すらも名前くらいしか聞いたことがなかったくらいです。ですが著者が物語の中で丁寧に解説してくれるのでその辺りの歴史が非常にわかりやすかったです。前知識がなくても十分この作品は楽しめます。いや、むしろそういう知識のない方ほど当時のチェコ情勢を知ることができて非常に興味深いと思います。
そして、この作品で一番印象に残っているのは何と言ってもこのセリフです。
それにしても美しい。プラハはなぜこんなに美しいのか!
集英社、春江一也『プラハの春』下巻P43
プラハはこの一言に尽きます!
私自身実際にプラハを訪れて何度この言葉が頭をよぎったことか!
これほど見事にプラハの魅力を言い当てた言葉がほかに存在するでしょうか。
ため息がでるほどの美しさ。そしてそのため息と共に、この言葉が思い出されるのがプラハなのです。
あぁ、また行きたいです、プラハ。本当に素晴らしい街でした。この本はそんなプラハの魅力を感じられる一冊です。ただ単に景色や建物が美しいとかそういう話ではなく、歴史や文化、精神性も含めたプラハの美しさ、それを味わうことができます。この小説はこれからプラハを訪れようとしている方には必読な一冊だと思います。ぜひおすすめしたいです。
春江一也『プラハの春』あらすじと感想~これを読めばプラハが好きになる!
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クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
プラハの春やその後のソ連支配についてはこれまで当ブログでも紹介してきましたが、クンデラはまさしくその時代を生きた作家でした。
そしてこの作品はそんなプラハの春以後のプラハの雰囲気を知るための最適な作品のひとつとなっています。
この作品のあらすじを見ていきましょう。
本書はチェコ出身の現代ヨーロッパ最大の作家ミラン・クンデラが、パリ亡命時代に発表、たちまち全世界を興奮の渦に巻きこんだ、衝撃的傑作。「プラハの春」とその凋落の時代を背景に、ドン・ファンで優秀な外科医トマーシュと田舎娘テレザ、奔放な画家サビナが辿る、愛の悲劇―。
たった一回限りの人生の、かぎりない軽さは、本当に耐えがたいのだろうか?甘美にして哀切。究極の恋愛小説。
集英社、千野栄一訳『存在の耐えられない軽さ』裏表紙
私がこの作品を読もうと思ったのは「プラハの春」以後のプラハの雰囲気を知るためでした。そういう面ではこの作品はその空気感を強く感じることができます。
主人公のトマーシュ自身がプラハの春以後、職を追われ苦しい目に遭うことになります。プラハの知識人たちが負うことになった苦難の生活の雰囲気をリアルに知ることでできます。
また、この作品の中盤以降は特にこうしたソ連による支配に対する著者の分析が小説を介して語られます。これはかなりの迫力で息を呑むほどです。特に印象に残ったのが「第Ⅵ部 大行進」の章で語られるシーンでした。ここでは共産主義打倒キャンペーンを行う西側のパフォーマンスの俗悪さが暴露されます。
第二次世界大戦下のナチスによるプラハ占領の時も、1968年のプラハの春の時も、結局誰も助けてくれず、世界から見捨てられてしまった。今も西側は共産主義打倒のキャンペーンを謳って宣伝するも、結局自分たちのためのパフォーマンスでしかない。そんな痛烈な非難をこの章から感じられました。ここはかなり衝撃的です。これはプラハの春を体験し、亡命によって西側世界についても詳しいクンデラだからこそ書ける内容だなと感じました。
『存在の耐えられない軽さ』は「プラハの春」以後のプラハの雰囲気を感じられる作品でした。
クンデラ『存在の耐えられない軽さ』あらすじと感想~プラハの春以後の共産主義支配の空気を知るために
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トム・ストッパード『ロックンロール』
この作品はチェコ生まれの劇作家トム・ストッパードによる劇作品で、日本でも2010年に市村正親さんを主演に迎えて公演されています。
トム・ストッパードはチェコスロバキアに生まれるもナチスの侵略で故郷を離れ、そこから最終的にイギリス人となります。
ですので故郷のチェコスロバキアは彼にとって非常に重要なものでありました。そんな彼がソ連に抑圧されたプラハを描いたのがこの『ロックンロール』という作品になります。
実はこれまでで紹介したチェコの大統領ヴァーツラフ・ハヴェルやミラン・クンデラの作品に彼は強い影響を受けていて、本作はこの二人なくしてはありえない作品となっています。
プラハの春についてもっと知りたい方、ハヴェルやクンデラについてもっと知りたい方にはぜひおすすめしたい作品です。
トム・ストッパード『ロックンロール』あらすじと感想~クンデラやハヴェルに影響を受けた名作劇
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トム・ストッパード (2) ロックンロール ((ハヤカワ演劇文庫 27))
番外編~「Reduta Jazz Club」を訪ねて~プラハのおすすめ老舗ジャズクラブーソ連抑圧時代にもチェコ文化を発信し続けた伝説的クラブ
当ブログではチェコの大統領になった劇作家ヴァーツラフ・ハヴェルの『ハヴェル自伝』を紹介しました。
そしてその本の中には、ある「ジャズクラブ」のことが書かれていました。その箇所を読んだ時、私はかなり驚きました。
と言うのも、2019年私がプラハを訪れた時にたまたま立ち寄ったのがそのジャズクラブ「Reduta Jazz Club」だったのです。(以下レドゥタと呼びます)
私がレドゥタを訪れたのは、ネットでここが老舗でおすすめなジャズクラブだという情報を見たからでした。そのレドゥタがチェコの歴史を語る上でものすごい役割を果たしていたとは本当に驚きました。
というわけで、この記事ではその有名な老舗ジャズクラブ「レドゥタ」についてご紹介していきます。ぜひプラハに行かれる際の参考にして頂けると幸いです。
Reduta Jazz Clubを訪ねて~プラハのおすすめ老舗ジャズクラブーソ連抑圧時代にもチェコ文化を発信し続けた伝説的クラブ
おわりに
以上、「プラハの春」を学ぶためのおすすめ参考書をご紹介しました。
今回のロシアのウクライナ侵攻と「プラハの春」が似たようなものなのかは正直わかりません。どちらかというと、ハンガリー革命の方がソ連軍に徹底的に攻撃されたという点で似ているのかもしれませんが、いずれにせよ、歴史を学ぶことは今世界で何が起こっているのかを考える上で非常に重要であると私は考えます。
ロシア(ソ連)と東欧諸国の関係は非常に複雑です。そしてそこに西欧諸国の思惑も絡んできますので、もはや頭が痛くなるほど複雑怪奇な政治状況になってきます。
ただ、チェコは私の大好きな国です。私はこの国の歴史・文化に敬意を持たずにはいられません。
大国に囲まれながらも誇り高い文化、歴史を紡いできたチェコという国を学ぶことは私たち日本人にとっても非常に意味のあることだと思います。
ぜひ、この記事で紹介した本を手に取って頂けたらなと思います。
以上、「「プラハの春」とは何かを学ぶのにおすすめの参考書10冊を紹介~ロシア・ウクライナ侵攻を考えるためにも」でした。
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