塩野七生、石鍋真澄『ヴァチカン物語』あらすじと感想~バチカンの歴史と美の秘密を学ぶのにおすすめのガイドブック!
塩野七生、石鍋真澄『ヴァチカン物語』概要と感想~バチカンの歴史と美と芸術の秘密を解説するおすすめ解説書!
今回ご紹介するのは2011年に新潮社より発行された塩野七生、石鍋真澄著『ヴァチカン物語』です。
前回の記事まででローマ教皇ヨハネ・パウロ2世についてご紹介しましたので、今回はそのローマカトリックの総本山、バチカンを知るためのおすすめガイドブックをご紹介します。
私の2019年の旅でもこのバチカンは訪れており、その迫力、美しさには圧倒されっぱなしでした。
そして帰国後に書いた上の記事をまとめていく上で主に参考にしたのが、フスト・ゴンサレスの『キリスト教史』とこの 『ヴァチカン物語』 でした。
早速この本について見ていきましょう。
キリスト教とは何か、を問う塩野七生氏の語りを皮切りに、2000年に及ぶ聖地の歴史ドラマを辿る! 歴代教皇と天才芸術家たちが築き上げた至高の美に酔う。サン・ピエトロ大聖堂とヴァチカン美術館の詳細案内、教皇庁の秘話を明かすコラムも満載。
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バチカンといえばサンピエトロ大聖堂。その美しさたるや、言葉にできません。
この本ではそんなバチカンの歴史とこの圧倒的建造物の美しさの秘密について解説していきます。
この本ではまず『ローマ人の物語』の著者である塩野七生氏によるバチカンのエッセイから始まります。とてもわかりやすく、入門者でも楽しく読み進めることができます。その一部をご紹介します。
日本人がヴァチカンを観るならば、ヴァチカンがこれまで何をやってきたかを、良いことも悪いこともしてきたんだということを踏まえて、その歴史を知った上で観るべきです。歴史というのは人間の所業ですから。今そこにあるものを見るだけではなくその中に漂う何かを感じなければ、本当に知ったことにはなりません。(中略)
今は、インターネツトですぐにあらゆる芸術作品が観られる時代ですが、それは単に情報を得るということに過ぎない。その点で、日本人は大いなる勘違いをしつつあると思います。情報を得ることと感ずることとは違うんです。芸術は感じなければだめ。それには、実物を観ることが肝要です。(中略)
私にとってのヴァチカンとは、このように、人間世界において宗教は、あるいは文化芸術はどんな意味を持つのか、といった諸々のことを考え、感じる場所なのです。
新潮社、塩野七生、石鍋真澄著『ヴァチカン物語』 P21-23
いかがでしょうか、バチカンに行きたくなってきませんか?さすが塩野七生。読ませます。ぜひこの本を読んで全文を体感して頂ければなと思います。
そしてこの本の中盤からはバチカンの歴史とその美しさの秘密を石鍋真澄氏が解説していきます。上の写真も一目見て「すごいな」と思うかもしれませんが、「そのすごさの秘密はどこにあるんだろう」というところまではなかなか目は向きませんよね。これらはミケランジェロと並ぶ天才、ベルニーニによる作品です。彼はバチカンの内部装飾だけでなく、広場全体の設計も手掛けた偉大な芸術家です。この素晴らしい芸術、建造物に込められた意味を知ればこれらのすごさにきっと驚くことになります。
実は2019年に現地を訪れた時、私はまだこの本を読んでいませんでした。キリスト教史の勉強でいっぱいいっぱいでバチカンの美術についての勉強はほとんど進んでいなかったのです。
その影響もあったのですが、あえて私はバチカンは予習せずに、内部の写真すら見ずに現地で一発勝負で観に行こうと考えたのでした。その方が初めて見た時の衝撃がすさまじいものになるのではないかと思ったのです。ですので私は地球の歩き方のマップくらいでしかバチカンのことを知らなかったのです。「行けばわかるだろう!あえてここは出たとこ勝負だ!」とそんな気持ちで実際にバチカンまでやって来てしまったのでした。
そしていざバチカンと対面すると、衝撃で言葉を失ってしまったのでありました。特に、サン・ピエトロ大聖堂の中に入った瞬間ですね。これは絶句でした。全身に寒気がぞわっと走りました。あまりに美しく、そして力強い空間に畏れ多さを感じたのかもしれません。
私は「これは急いで学ばねば!」とパンフレットや売店にある色々な本を買ったりして、ホテルに帰ってからひたすら読み込みました。その中でも特に興味深かったのが『システィーナ礼拝堂の傑作案内』というガイドブック。
こちらはミケランジェロによる「天地創造」の天井画や「最後の審判」の壁画で有名なシスティーナ礼拝堂の歴史や芸術の解説本です。バチカンの売店には日本語版のガイドブックもたくさんありますので現地に行かれた際はぜひ購入することをおすすめします。
2日目からはそうした勉強のおかげか違った目でバチカンを見ることができ、ものすごく楽しかったです。
そしてその聖堂の中で最も強烈な体験だったのが。こちらです。
ミケランジェロ作のピエタ像です。
私はただただ夢中でこの像を見続けていました。その間、私の心はほとんど無です。何も考えられません。何も浮かんでこないのです。
視界に映るピエタ像だけが私のすべてでした。
そしてふと我に返り時計を見てみると、15分も時間が経っていました。
なんと、15分も意識を持っていかれるほど心を奪われてしまっていたのです。
芸術に魅了されるというのはこういうことなのかと心底驚いた体験でした。
この像についても『ヴァチカン物語』ではばっちり解説されています。
ローマカトリック総本山サンピエトロ大聖堂~想像を超える美しさに圧倒される イタリア・バチカン編④の記事でもお話ししましたが、何の知識も持たずに行ったからこその衝撃もありましたが、知らずに見て驚くか、知った上でより深く観ていくかのどちらを選ぶかというのは非常にジレンマです。これは難しいです。
ですが、もし知識を知っていたとしても、バチカンで衝撃を受けることはきっと間違いないだろうと思います。それだけ圧倒的な場です。
ですので、やはりしっかりと予習をしておけばもっともっとこのバチカンを堪能することができたなと、今は少し悔いが残っています。実際、先程も申しましたように本を読んでからバチカンがもっともっと楽しくなりました。
そしてこの本の後半ではバチカン美術館についての解説がなされます。これもものすごくありがたいです。なにせとてもわかりやすい!この美術館の見どころをビシッとまとめてくれています。
バチカン美術館はあまりに見どころが多く、とてもじゃありませんが一日では回り切れません。私は4日連続で訪れましたがそれでも全く飽きませんでした。
上の絵は両方ともラファエロ作ですがどちらもこの美術館を代表する名画です。
いざ現地でこれらと対面すると、生で見るのと画像で見るのは全く違うというのを本当に感じました。
またこの美術館には彫像もたくさんあります。これがまたいいんです。
「ミケランジェロ作品の特徴とその魅力とは!古代ローマ芸術とのつながり イタリア・バチカン編③」の記事でもお話ししましたが、実はこれらの古代ローマの彫刻たちがあのミケランジェロに大きな影響を与えたということをこの本では解説してくれます。
この本はバチカンを知るためにものすごくおすすめな一冊です。ぜひガイドブックとしてこの本を活用して頂けたらなと思います。バチカンをこれから訪れる方にも、これまで訪れたことがある方にも、バチカンのことをもっと知りたいと思う方にも、すべての方におすすめしたい作品です。
以上、「バチカンのおすすめガイドブック!塩野七生、石鍋真澄『ヴァチカン物語』」でした。
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