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アメリカの中心・国会議事堂の秘密~『ワシントンの神化』と対面 僧侶上田隆弘の世界一周記―アメリカ編⑨
ワシントン滞在の最後にぼくのアメリカ滞在最大の目的地、国会議事堂を訪れる。
なぜここがぼくの最大の目的地であるのか。
それはこの建物のロタンダ(正面のドーム部分の天井)に描かれたある絵がその鍵となる。
国会議事堂は事前に予約すれば中を見学することができる。
この見学ツアーに参加することでお目当ての絵を見ることができるのだ。
ご覧の通り見学ツアーの入り口は大行列。
おそらくアメリカ中の人たち、それも若い人たちが多く見られる。
修学旅行や研修という形で訪れているのかもしれない。
国会議事堂の中を歩き、いよいよロタンダに到着。
円形のホールに高い天井。
ここの壁には建国にまつわる多くの絵画が飾られている。
そしてここの天井にぼくのお目当ての絵が描かれているのだ。
それがこれだ。
もう少し寄ってみよう。
中心に座っているのがワシントン。
その周りを女性達が円形に囲んでいる。
ワシントンの右手側の青いドレスの女性は自由の女神、
左手がの緑の衣をまとうのは勝利の女神と言われている。
さて、この絵のタイトルをみなさんに予想していただきたい。
ヒントはここまでの記事の流れと密接につながったタイトルだということ。
さて、答え合わせ。
この絵のタイトルは『ワシントンの神化』。
そう。ワシントンは神となったのだ。
そしてこの絵がアメリカ合衆国の政治の中心地に描かれていること。
これはとてつもない意味を持っているように思える。
そしてこの絵についてももう一つ。
こちらはバチカン美術館にあるラファエロ作『聖体の議論』の一部。
中央に鎮座するのがイエス、イエスの右手には聖母マリア、左手にはヨハネが座している。
そしてそれを円形に囲む天上の人々。
どうだろうか、キリスト教の絵と似ているような気がしてこないだろうか。
ぼく達がこの絵を見るにはまさに頭上高く見上げるしかない。
ワシントンは神となり、頭上の、いや、天上の世界に神として舞い上がりそこに座しているのだ。
それを象徴しているのがこのロタンダの天井画『ワシントンの神化』なのではないだろうか。
ツアーではロタンダの後は別の部屋にも通された。
この広い円形の部屋ではその周囲をぐるっと彫像が置かれていた。
これら一人一人の彫像はアメリカの歴史に名を残した偉人達だそうだ。
偉人たちが円周上に配置され、ぼくらを見下ろしている。
・・・ん?これもどこかで見覚えがある光景ではないだろうか。
そう。これもバチカンだ。
ミケランジェロとベルニーニ~二人の天才とサン・ピエトロ大聖堂 イタリア・バチカン編⑥の記事でも述べたが、円形に作られたバチカン広場の頭上から140体もの聖人像が参拝者を見下ろす。
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どうだろうか。
考えれば考えるほど似ているように見えてこないだろうか。
ある意味ここに安置されているのはアメリカの歴史における偉人というよりも、まさしく聖人たちとすら言えるのではないだろうか。
そして最後にもうひとつだけお話ししたいことがある。
実はツアーの開始直後、参加者は国会議事堂の歴史を解説した映像をシアターで観ることになっていた。
そしてこの映像の中にぼくが驚愕した言葉があった。
それが「Temple of Liverty」だ。
映像はアメリカの建国の歴史から始まり、なぜ国会議事堂が大切なのか、なぜ議会が生まれてきたのか、そしてその偉大なる成果を高揚感溢れる構成でぼくらに伝えてきた。
そしてその締めくくりに現れた言葉こそ、「Temple of Liverty」だったのだ。
直訳すれば「自由の寺院」。
ぼくにとっては「Temple」という言葉が政治の中心たる国会議事堂で、しかも一番重要なその解説のまとめとして用いられていることに衝撃を覚えたのだった。
国会議事堂は「Temple」である。
すなわち宗教施設にも等しいと自ら宣言しているのである。
これまでワシントンの建国神話とモニュメント群を見てきたが、それらが完全につながった瞬間だった。
人間から神へ。
そして国家における神の存在。
宗教について学ぶ上で避けては通れない巨大なテーマがここにはある。
だからこそぼくはぜひ一度実際に自分の目で見てみたいという強い思いを抱き、ここまでやって来たのだ。
アメリカはぼくにとって非常に興味深い国だ。
その中でも最も不思議だったこのモニュメント群。
それを実際に自分の目で見れたことはとてもありがたい経験だった。
これでついにアメリカ編も終了。
次はいよいよ最後の国、キューバへと進んでいく。
続く
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