MENU

藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』あらすじと感想~写真も豊富!2006年段階のインドを広く学べるおすすめ本

インドの正体
目次

藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』概要と感想~写真も豊富!2006年段階のインドを広く学べるおすすめ本

今回ご紹介するのは2006年に岩波書店より発行された藤本欣也著『インドの正体―好調な発展に潜む危険』です。

早速この本について見ていきましょう。

驚異の経済成長、地理的優位、民主国家、親日、勤勉、先進IT技術…想像を絶する格差社会、根強いカースト、泥沼の宗教問題、拝金主義、男女格差…現地徹底取材。

Amazon商品紹介ページより

この本では2006年当時のインド社会を知ることができます。2023年となった今、インドは中国を凌駕する勢いで成長し続ける巨象です。この本はそのインドの2006年当時はどのような状況だったのかを知れる非常に興味深い作品です。

著者はこの本について「はじめに」で次のように述べています。

本書は産経新聞紙上でニ〇〇五年九月から二〇〇六年四月まで計二十六回にわたり掲載された企画「巨象が動いた」を大幅加筆し、再構成したものである。連載中はビジネスマンやアナリストのみならず、外交官や政治家からの反響も大きかった。経済統計の数字の羅列だけではない、インドの生の情報が必要とされているということなのだろう。

忘れられない光景がある。バンガロール郊外を車で走行していたとき、通り沿いに大きな看板を見つけた。豪華マンションの完成予想図の上に、ヒンディー語でこう書かれてあった。「あなたの夢が実現する―」

ちょうどバス停の後ろにあったため、看板前にはさまざまなインド人たちが立っていた。小ぎれいなサリーを着たマダムに、薄汚いシャツをまとった老人、無表情に屋台を引く物売りの男性……。一体、彼らの中のどれだけの人が「豪華マンション」を夢見ているのだろうか。

確かに今、インドは高度経済成長とともに大量消費時代に突入しつつある。その象徴とも言える「豪華マンション」とは無縁の、圧倒的多数の人々は何を考えているのか。多種多様な十一億の国民を抱え、インドはどこに向かおうとしているのだろう。

本書をもって「これがインドだ」と大言壮語するつもりは毛頭ない。インドをいろいろな角度から切った断面のごく一部でしかない。インドという、難解かつ巨大なジグソーパズルの一片でも埋め込むことに役立てたならば望外の喜びである。

岩波書店、藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』P9-10

『インドの正体―好調な発展に潜む危険』という書名に見えるように、2006年段階ですでに圧倒的な格差の足音は忍び寄っていました。そして実際問題、その格差は2023年になってより激しくなっています。

格差の問題はインドに限った問題ではありませんが、カースト問題が今なお残るインドならではの問題もこの本では知ることができます。

そしてこちらの目次にありますように、この本では「社会、文化、ビジネス」と様々な視点からインドを見ていきます。写真も豊富ですので非常に読みやすく、現地の状況もイメージしやすいです。

現代インドについて知りたいという方に非常におすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「藤本欣也『インドの正体―好調な発展に潜む危険』~写真も豊富!2006年段階のインドを広く学べるおすすめ本」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

インドの正体: 好調な発展に潜む危険

インドの正体: 好調な発展に潜む危険

前の記事はこちら

あわせて読みたい
藤井毅『歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』あらすじと感想~カーストはイギリスの植民地政... イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっている、そのことを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。 著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。

関連記事

あわせて読みたい
池亀彩『インド残酷物語 世界一たくましい民』あらすじと感想~カースト制度の根深い闇。大国インドの現... この本は現代インドにおけるカースト制について語られる作品です。この本は著者の現地での調査に基づいた貴重な記録です。机の上で文献を読むだけでは知りえない、リアルな生活がそこにはあります。 圧倒的な成長を見せるインドの影をこの本では知ることになります。
あわせて読みたい
山崎元一『古代インドの文明と社会〈世界の歴史3〉』あらすじと感想~インドの思想・宗教が生まれてくる... この本は古代インドの歴史や文化を詳しく知ることができるおすすめの解説書です。 「詳しく知ることできる」というと、難しくて読みにくい本というイメージが湧いてくるかもしれませんがこの本は全く違います。ものすごく読みやすく、わかりやすいです。
あわせて読みたい
保坂俊司『インド宗教興亡史』あらすじと感想~仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャ... インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。
あわせて読みたい
中村元『古代インド』あらすじと感想~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書! 仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。
あわせて読みたい
森本達雄『ヒンドゥー教―インドの聖と俗』あらすじと感想~インド入門におすすめ!宗教とは何かを考えさ... 謎の国インド。同じアジアでありながら異世界のようにすら思えてしまうインドについてこの本では楽しく学ぶことができます。 著者の語りもとてもわかりやすく、複雑怪奇なインド世界の面白さを発見できます。「なぜインドはこんなにも独特なのか」ということを時代背景と共に知ることができますのでこれは興味深いです。
あわせて読みたい
J・クラブツリー『ビリオネア・インド』あらすじと感想~インド版オリガルヒの存在!腐敗、縁故主義のイ... この本で語られるインドの腐敗は凄まじいです。「これからの世界はインドが牽引する」とメディアなど様々な場所で語られていますがそんな単純にことが進むだろうかと疑問になるほどです。インドの発展がどうなるかというのは全くわかりません。一寸先は闇とはまさにこのこと。このカオスな国の行く末がどうなるか全く想像がつきません。
インドの正体

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次