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『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』概要と感想~インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた

大乗仏教のアジア
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『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』概要と感想~インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた

今回ご紹介するのは2013年に春秋社より発行された『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』です。

早速この本について見ていきましょう。

大乗仏教とアジアの他宗教、文化との関係に焦点を当てる。ヒンドゥー教や文学など、幅広い視野から大乗仏教の与えた影響を論究する。

本巻は、アジアの他宗教、文化へと視野を広げ、従来の文献学に基づく仏教研究に対して、新しい視点から大乗仏教研究の可能性を試みる。

Amazon商品紹介ページより

今作では上の本紹介にありますようにヒンドゥー教やイスラーム、中国文化とのつながりから大乗仏教を見ていくというユニークな論集となっています。

聖地ワーラーナシーのプージャー(礼拝)Wikipediaより

ヒンドゥー教の儀式であるプージャーと大乗仏教の儀式の関係性などは読んでいて非常に興味深いものがありました。インド仏教が歴史を経るにしたがってヒンドゥー教の要素をどんどん取り入れていったというのはよく聞きますが、具体的な儀式レベルでどうつながっているかを知れるのはとても刺激的でした。

そして本書の中で最も印象に残ったのは第一章の「仏教文献学から仏教考古学へ—インド仏教における聖者の傍らへの埋葬とブッダの現存性」というグレゴリー・ショペンによる論稿です。

グレゴリー・ショペンについてはこれまで当ブログでもその著作『大乗仏教興起時代 インドの僧院生活』『インド大乗仏教の虚像と断片』『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』でも紹介してきました。

現代の仏教学に巨大な影響を与えたショペンの説をこの本でも堪能することができます。本書の「はしがき」では本論文について次のように解説されています。

ショぺンは文献的な仏教研究から出発した研究者であるが、いち早くその不十分さを指摘し、考古学資料を縦横に使いながら、インド仏教の実態を解明して、学界に大きな衝撃を与えた。今回巻頭に翻訳収録したのは、ショぺンの著作でも、その点をもっとも端的に論じた重要な論文である。そこでは、考古学資料を用いるという方法論とともに、その成果として浮かび上がってきた仏教像が、文献から出てくるものとまったく異なる点でも、注目される。すなわち、死せるブッダが生き続けている場であるストゥーパを中心に、その周囲に匿名の人物の遺骨・遺灰を納めた多数の小ストゥーパが密集しているというのである。ショペンはいみじくもそれを高野山の場合と比較しているが、大雑把な言い方をすれば、葬式仏教的な要素がインド以来、現実の仏教の場で強く働いていたことが知られる。従来しばしば、インドの本来の仏教は生者のためによりよい生き方を教えるもので、死者のためのものではないと主張され、日本の葬式仏教を否定するような言説がなされてきたが、それはまったく実態にそぐわないことが、明白に示されたのである。このことは、仏教のあり方を根底から問い直す成果として注目される。

春秋社より発行された『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』Pⅲ

「大雑把な言い方をすれば、葬式仏教的な要素がインド以来、現実の仏教の場で強く働いていたことが知られる。従来しばしば、インドの本来の仏教は生者のためによりよい生き方を教えるもので、死者のためのものではないと主張され、日本の葬式仏教を否定するような言説がなされてきたが、それはまったく実態にそぐわないことが、明白に示されたのである。」

このようなショペンの刺激的な論文を読むことができるおすすめの参考書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『シリーズ大乗仏教 第十巻 大乗仏教のアジア』~インド仏教も葬式仏教的な遺骨崇拝や納骨、供養を行っていた」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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