P・アイヤール『日本でわたしも考えた』あらすじと感想~インド人から見た日本とは。日本の良さも悪さも率直に綴られた痛快作
P・アイヤール『日本でわたしも考えた』概要と感想~インド人から見た日本とは。日本の良さも悪さも率直に綴られた痛快作
今回ご紹介するのは2022年に白水社より発行されたパーラヴィ・アイヤール著、笠井亮平訳の『日本でわたしも考えた インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と』です。
早速この本について見ていきましょう。
驚愕と新発見の日本滞在記
本書は、2016年から20年まで東京に居を構えたインド人ジャーナリストの日本滞在記である。著者はインドを代表する英字紙『ヒンドゥー』の元北京支局長で、EU代表部に勤める夫と2人の息子とともに初めて来日。4年近くに及んだ滞日生活でインドでは考えられないような日常に目を瞠り、自身の知的好奇心をフルに発揮して多くの日本人や在住外国人と意見を交わした。生活習慣の違いから日本語習得の難しさ、俳句や金継ぎなどの伝統文化、政治・社会問題まで多岐にわたるテーマについての興味深い考察が本書には詰まっている。
外国人による日本論や日本滞在記は数多あるが、そのなかで本書を際立たせているのは何と言ってもインド人ならではの着眼点である。「中村屋のボース」とカレーの伝播、東京裁判のパル判事に対する評価、ボリウッド映画の日本への浸透、インド人コミュニティと政治・社会参加の問題など、「インドと日本」に関わる多様なトピックが俎上に乗せられている。
ジャーナリストならではの鋭い洞察に母親としての視点を交え、自身の発見や驚きがユーモアあふれる文体で綴られたユニークな作品である。
Amazon商品紹介ページより
著者パーラヴィ・アイヤールはインド人ジャーナリストで、世界各国での体験をベースにして今作『日本でわたしも考えた インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と』を執筆しています。単なる「日本はすごい!面白い!」という日本礼賛でもなく、逆に「日本はだからダメだ」という日本バッシングでもないところにこの本の良さがあります。4年にわたる日本生活で体験したこと、取材したことが深く掘り下げられています。
この本を読めば日本とは何なのか、私たち日本人は海外からどう見られているのかというのがよくわかります。
この本を読んでいて特に感じたのはやはり「私達日本人も見られているのだ」ということでした。
私はここ数か月、インドについて学んでいます。インドについて語られた本をひたすら読み、この後には実際にインドを訪れる予定です。
そうして私はインドを読んで見て知ろうとしています。
ですがニーチェの「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉ではないですが、インドも私のことを見ているのだということを改めて実感したのでした。
私は今本を読み、インドについて様々なことを思うわけです。そしてそれを文字にして記事にしています。しかしそれがどこまで本当にわかっているのかというとはなはだ不安になってきました。
他者そのものすべてを知りうることはありえない。だが、それでも人は他者について語る。
結局、他者を語ることは自身を語ることに他ならないのだということを改めて感じたのでありました。
著者のパーラヴィ・アイヤールの言葉はかなり鋭いです。日本の表面をなぞるだけでなく、日本人の精神性にも深く踏み込んでこの本は書かれています。この本を読めば改めてハッとさせられることが多々あると思います。
日本は今停滞し、苦しい時期が続いています。そんな私たちの現状を異国のジャーナリストが客観的に分析した作品がこの本です(主観的な部分も多いですが、それもまた面白い)。「私たち自身のあり方とこれから」を考えさせられる素晴らしい作品です。
この本は日本人のために書かれたものではありません。あくまで海外で出版された作品です。この本を海外の多くの人が読み、日本とはこういう国なのかと考えながら読んでいるわけです。だからこそ価値があります。海外の人から見た日本像を知れるのはやはり興味深いです。
巻末の訳者あとがきでも書かれていたのですが、原著のタイトルと日本語版のタイトルは違います。原題通りだと『順応―インド人の日本滞在記』になりますが、あえて『日本でわたしも考えた』としたのは堀田善衛の『インドで考えたこと』や椎名誠の『インドでわしも考えた』を念頭においてだったそうです。
堀田善衛の『インドで考えたこと』は当ブログでも後ほど紹介する予定の名著中の名著です。
この本もまさにインドという深淵を覗いた本ですが、まさにその深淵側から私たちを覗いているのが今作『日本でわたしも考えた』になるでしょう。
この本の内容自体についてはお話しできませんでしたが、これは面白い作品です。そして同時に私たちのあり方を反省させられる一冊となっています。私達が日本人として誇りを持って生きていけるというのはどういうことなのでしょうか。そのことを改めて考えていく必要があるのではないかと強く感じました。
以上、「P・アイヤール『日本でわたしも考えた』~インド人から見た日本とは。日本の良さも悪さも率直に綴られた痛快作」でした。
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