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星野立子『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』概要と感想~ドストエフスキーやトルストイとのつながりを知れるおすすめ作品!
今回ご紹介するのは2021年に八千代出版より発行された星野立子著『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』です。
早速この本について見ていきましょう。
意外な取り合わせに思われるかもしれないシェイクスピアとロシア。しかし、シェイクスピアの作品は、多くの国々で受容されているように、ロシアにおいても非常に好まれている。ロシアを代表する詩人プーシキン、文豪ドストエフスキーとトルストイ、劇作家・小説家チェーホフ、俳優・演出家スタニスラフスキー、翻訳家でもあるパステルナークを取り上げ、彼らがシェイクスピアをどのように受け入れたのかを見ていく中で、ロシアの文人・演劇人を魅了したシェイクスピアの姿を浮き彫りにする
Amazon商品紹介ページより
この本はタイトル通り、シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たちとのつながりについて書かれた作品です。
この本ではプーシキンやドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ、スタニスラフスキー、パステルナークと、ロシア文学界の大御所がずらりと並んでいます。
これまで「親鸞とドストエフスキー」をテーマに学んできた私にとって、トルストイやドストエフスキーについて学べるこの本はとてもありがたいものがありました。
特に「シェイクスピアとドストエフスキーのつながり」は最近私が最も注目していたテーマでした。
と言いますのも、以前当ブログで紹介したジョージ・ステイナー著『トルストイかドストエフスキーか』という作品でまさに「ドストエフスキーがシェイクスピア的である」ということが指摘されていたからです。
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「トルストイかドストエフスキーか」。両方はありえない。 このことはこれまでトルストイ作品を読んできて強く感じたことでしたがこの作品はそのメカニズムを見事に解明してくれる名著です。
特にこの本で語られる『リア王』と『カラマーゾフの兄弟』のつながりが非常に興味深く、私はシェイクスピアに対してますます興味が湧いてきたのでした。
そして今ちょうどシェイクスピア作品や様々な参考書を読んでいる中で私は今作『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』と出会ったのでした。
この本ではプーシキンから始まり順にドストエフスキー、トルストイ、チェーホフと進んでいきます。
ロシア文学の祖と言っても過言ではないプーシキン。彼がシェイクスピアに傾倒したことでロシア文学界でシェイクスピアが大きな存在となりました。そしてそのプーシキンを深く敬愛していたドストエフスキーもその影響を強く受けることになります。こうした流れを知れるのもこの本のありがたいところです。
また、ドストエフスキーの作品だけではなく、その創作ノートからもシェイクスピアのつながりを見ていく点もありがたいです。私も改めて創作ノートを見返したいなと強く思ったのでした。
ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフと、ロシア文学を考える上で絶対に避けることのできない重鎮たちとシェイクスピアのつながりをじっくり見ていけるこの本はとても貴重です。
しかもこの本を読んで驚いたのですが、なんと著者の星野立子さんは現在北海道教育大学函館校の教授を務められております。私の住む函館にこの本の著者がおられるなんて!なんというご縁!いやぁ驚きました。
今このタイミングでこの本と出会ったのも何かの縁。出会うべきタイミングだったのだなと感じています。
とても刺激的な一冊です。シェイクスピアファン、ロシア文学ファンどちらにもおすすめしたい一冊です。
以上、「星野立子『シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち』~ドストエフスキーやトルストイとのつながりを知れるおすすめ作品!」でした。
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シェイクスピアとロシアの作家・演劇人たち
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