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石井洋二郎『科学から空想へ よみがえるフーリエ』概要と感想~ユートピアを描いた有名な空想的社会主義者フーリエとは
今回ご紹介するのは2009年に藤原書店より発行された石井洋二郎著『科学から空想へ よみがえるフーリエ』です。
早速この本について見ていきましょう。
狂気じみた“難解”な思想。信じるか、信じないか、二者択一を迫るテクスト。その情念と現代性を解き明かす、初のフーリエ論
Amazon商品紹介ページより
この本は空想主義的社会主義者として有名なフーリエとはいかなる人物かを見ていく作品です。
まずはじめにフーリエとは何者なのかということから見ていきましょう。
フーリエとは
ブザンソンの商人の家に生まれる。『四運動の理論』をはじめとするー連の著作で独自の「情念引力」理論を展開し、「ファランジュ」と呼ばれる農業協同体を提唱するが、概念の難解さと主張の荒唐無稽さゆえに同時代人からはほとんど無視され、不遇のまま世を去った。マルクスーエンゲルスによって「空想的社会主義者」のひとりとされ、長いあいだこのレッテルが定着していたが、20世紀になってべンヤミン、ブルトン、バルトなどが彼の著作の独創性に注目し、それぞれの観点から新たな読み直しをおこなっている。1967年には『愛の新世界』がはじめて刊行され、再評価の機運が高まるきっかけとなった。
藤原書店、石井洋二郎『科学から空想へ よみがえるフーリエ』 より
フーリエはフランス商人の家の生まれで、成人した後も雇われ店員や行商をしながら著作を作り続けていました。20代にして大実業家として成功していたオウエンとはこの点で大きく異なります。彼は資本家側の人間ではありませんでした。
彼は「ファランジュ」という農村共同体を提唱するのですがこれがなかなかに奇想天外と言いますか、当時の常識から言ってもかなり「ぶっ飛んだ」ものだったようです。
しかし彼の語る共同体や社会理論に惹き付けられる者も続出し、有能な弟子たちを輩出します。その弟子たちの尽力によりヨーロッパ中にフーリエの思想は広まっていったのでした。
実はドストエフスキーもこのフーリエに一時期傾倒していました。そしてその後政治犯としてシベリア流刑になってしまうのですが、その入り口がユートピアを語るフーリエだったというのは非常に興味深いです。このことについては後の記事で改めて考えてみたいと思います。
さて、この本についての話に戻りますが、著者は「序章」でそもそも「ユートピア」とは何なのかというところから解説を始めてくれます。
そこからマルクス、エンゲルスによってどのように空想的社会主義者という定義がなされたのか、そしてその代表として知られるロバート・オウエン、サン・シモン・シャルル・フーリエとはいかなる人物かをざっくりと解説してくれます。
これが非常にわかりやすく、初学者でもその流れを把握することできます。これはありがたいです。
そこから実際にフーリエとは何者なのか、どんな思想を持っていたのかが語られます。
フーリエについての参考書はほとんどなく、私達が手に取れるものは限られています。ですがその中でもまず入門として読むにはこの本はおすすめです。フーリエ自身が非常に難解な人物でありますので、この本の内容でも難しい部分があるのですが、それでも全体図を知るにはありがたい1冊だと思います。
以上、「石井洋二郎『科学から空想へ よみがえるフーリエ』ユートピアを描いた有名な空想的社会主義者フーリエとは」でした。
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