MENU

神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』あらすじと感想~ロシア革命とは何かを知るのにおすすめの入門書!

目次

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』概要と感想

今回の記事よりソ連史を語る上では欠かせないロシア革命についてお話ししていきます。

ソ連が生まれるきっかけとなったのは何と言っても1917年のロシア革命です。

300年以上も続いたロマノフ王朝が滅亡し、ここからロシアの歴史が一気に動き出します。

この革命はロシアにおいては歴史上の大事件中の大事件でありますが、これは一体なぜ起こり、どんな革命だったかと言われるとなかなか難しいですよね。私も調べて見るまでほとんど何も知りませんでした。フランス革命やナポレオンの時もそうでしたが名前だけは知ってるけどその中身までは何もわからないというのが正直なところでした。

というわけでこの革命について良い入門書はないかとまずは探しましたところ、私のブログでもお馴染みの神野正史氏の『世界史劇場 ロシア革命の激震』という本がありました。

神野氏の本はいつもながら本当にわかりやすく、そして何よりも、面白いです。点と点がつながる感覚といいますか、歴史の流れが本当にわかりやすいです。

表紙裏にはこの本について次のように書かれています。

〇革命前夜からレーニンの権力奪取まで、ロシア革命の展開を詳しく解説。ロシア社会主義各派の理論の違いや革命の流れをわかりやすく再現していきます。

〇まるで映画や舞台を観るような感覚でスイスイ読めてわかりやすい!

〇歴史が”見える”イラスト”が満載!

〇歴史を学びなおしたい大人から、歴史が苦手な高校生まで楽しめる。

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』

『世界史劇場』の特徴がまさにここに書かれています。まるで映画や舞台を観ているかのようとはよく言ったもので本当にその通りです。次にどうなるか知りたくてページをめくる手が止まりません。

そしてこの本のメインテーマであるロシア革命について神野氏は「はじめに」で次のように述べています。

はじめに

「わしは死後、マルクス・レーニンとともに地獄の業火に灼かれるじゃろう。じゃが、”最初から実現するはずもない理想”を追いつづけさせられた苦痛に比ぶれば、地獄の責め苦など、どうということはない」

キューバの革命戦士Fフィデル. Aアレハンドロ.カストロ議長の言葉です。

祖国キューバのために「社会主義こそが正義」と信じ、人生をかけてその”理想”を実現すべく走りつづけた人物。

その”正義”のために、どれほどの屍を重ねてきたことか。それとて「地上の楽園を築き上げるための尊い犠牲」と思えばこそ。

しかし。

老いてのち、社会主義が過ちであったことを悟った老カストロの絶望感。それが思わず口を突いて出た言葉です。

20世紀―。

それはまさに「壮大な社会主義の実験場」であったとも言えます。

19世紀、それまでの社会主義を「空想的、、、」だとして非難し、Kカール.マルクスらによって「科学的、、、社会主義」が生まれるや、20世紀に入ると、これに基づき、ロシアを皮切りに地球上の各地で「社会主義革命」が勃発しました。

しかし、そのことごとくすべてが無惨な失敗に終わります。人類は、膨大な時間と、莫大な犠牲を払ったこの”実験結果”によって、「社会主義」という理念イデオロギーが疑いようもなく間違いだったという、きわめて当たり前の事実を思い知らされたのでした。

しかし。

「目の前に突きつけられた”客観的事実”を受け入れることができない者」……というのは、いつの世にもいるもので。

「いーや!!それでも社会主義は正しい!!」

そううそぶく人は現在でもいます。

でも、このような人たちは目の前の厳然たる事実から目を背け、もはや理屈の通じない「信仰、、」の域に入っている人たちにすぎません。

19世紀に生まれた「科学的、、、社会主義」は、

20世紀の「何千万、何億もの人命を奪う悲惨なる大実験」を経て、

21世紀には「信仰的、、、社会主義」へと変質してしまったのでした。

もはやそれは、「科学的」と名乗りながら科学ではなく、社会主義の”朽ち果てた骸”にすぎません。

そして、社会主義の過ちを証明することになる「社会主義実験」の”鯨波げいはの第一声”ともいうべきものが、本書のテーマとなっている「ロシア革命」です。

したがって、「ロシア革命」の理解なくして、20世紀の、ひいては21世紀の理解はあり得ません。

しかし、これが敷居の高いこと、この上ありません。

ロシア革命とは、イデオロギーとイデオロギーの壮絶なせめぎ合いであるため、どうしても、その難解なイデオロギーの微妙な違いをしっかりと理解しなければならないからです。

市販の「ロシア革命」解説書が初学者にとって難解なのはそのためです。

そこで、本書の登場です。

本書では、「歴史知識がまったくゼロ」の方が読んでも理解できるようイラストを多用し、なるべく平易な言葉で、解説するよう心がけました。

ロシア革命入門書としては、既存のどの入門書よりもやさしくかつ高度なものになったと自負しております。

本書が、「ロシア革命」初学者の”最初の踏み台”となり、つぎなるステップの契機となってくれることを祈りつつ。

2014年11月 神野正史

ベレ出版、神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』

ロシア革命を学ぶことは後の社会主義国家のことや冷戦時の世界を知る上でも非常に重要なものになります。

著者の神野氏はここで社会主義に対してかなり辛口な表現をしていますが、なぜ神野氏がそう述べるのかというのもこの本ではとてもわかりやすく書かれています。

この革命を知るにはマルクスの資本論が重要な鍵となります。このマルクスの思想がそもそも社会主義のつまづきだったと神野氏は述べます。

このことについては後にこのブログでも紹介していきたいと思います。

この本はロシア革命を学ぶ入門書として最適です。複雑な革命の経緯がとてもわかりやすく解説されます。

私はまずこの本を読んで革命のだいたいの流れを掴んでから、革命やソ連についての本を読んでいきました。神野さんもこの『世界史劇場』シリーズで、歴史を学ぶには誰かに言われたことを鵜呑みにせず、しっかり調べて自分で考えることが大事だと言っています。もちろん、それはこの本にしてもそうです。

この本を読んでロシア革命を全てわかったということではなく、この本に書かれていることと他の参考書と比べてみなければわからないこともあります。特にマルクスやレーニンについては見る者によってかなり評価が分かれます。

マルクスやレーニンが歴史においてどのような役割を果たし、どのように人々に影響を与えたのかということをこれから様々な本を用いて見ていきたいと思います。また神野氏が辛口で表現した社会主義ははたして本当にそのようなものだったのかということも様々な参考書を見ながら考えていきたいと思っています。

以上、「神野正史『世界史劇場 ロシア革命の激震』ロシア革命とは何かを知るのにおすすめの入門書!」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

世界史劇場 ロシア革命の激震

世界史劇場 ロシア革命の激震

次の記事はこちら

あわせて読みたい
神野正史『世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃』あらすじと感想~この戦争がなければロシア革命もなかった 前回の記事に引き続き神野正史氏の著作をご紹介していきます。 というのも、ロシア革命は第一次世界大戦がなければ起こっていなかったかもしれないほどこの戦争と密接につながった出来事でありました。 『世界史劇場 ロシア革命の激震』でもそのあたりの事情は詳しく書かれているのですが、やはりこの大戦そのものの流れや世界情勢に与えた影響を知ることでよりこの革命のことを知ることができます。 単なる年号と出来事の暗記ではなく、歴史がどのように動いていったのかを知るのにも最高な入門書です。しかもとにかく面白くて一気に読めてしまう。これは本当にありがたい本です。 ロシア革命や当時のロシアが置かれていた状況を知る上でもこの本はおすすめです。

関連記事

あわせて読みたい
マルクス主義者ではない私がなぜマルクスを学ぶのか~宗教的現象としてのマルクスを考える マルクスは宗教を批判しました。 宗教を批判するマルクスの言葉に1人の宗教者として私は何と答えるのか。 これは私にとって大きな課題です。 私はマルクス主義者ではありません。 ですが、 世界中の人をこれだけ動かす魔力がマルクスにはあった。それは事実だと思います。 ではその魔力の源泉は何なのか。 なぜマルクス思想はこんなにも多くの人を惹きつけたのか。 そもそもマルクスとは何者なのか、どんな時代背景の下彼は生きていたのか。 そうしたことを学ぶことは宗教をもっと知ること、いや、人間そのものを知る大きな手掛かりになると私は思います。
あわせて読みたい
神野正史『世界史劇場 フランス革命の激流』あらすじと感想~フランス革命のなぜと流れを知るならこの... この本は読んでいて本当にわかりやすいです。なぜその出来事が起こったのか、そしてそこからどう展開していくのかという歴史の流れを知ることができます。 この本はフランス革命の入門書として最適です。
あわせて読みたい
ナポレオンってどんな人?その出自と下積み時代 ドストエフスキー『罪と罰』とナポレオンの関係を考察 ナポレオンといえばその知名度は抜群ではあるものの、実際にいつ頃活躍し何をした人物かと問われれば意外とこれに答えるのは難しいのではないでしょうか。 正直に申しますと、今回フランスのことを学ぶまで私もよくわかっていませんでした。知れば知るほどなるほどなるほどと面白い発見でいっぱいでした。
あわせて読みたい
神野正史『世界史劇場 日清・日露戦争はこうして起こった』あらすじと感想なぜ日露戦争は勃発したのか... この本ではまず眠れる獅子清国がいかに繁栄しいかにして衰退していったのかが書かれ、それに伴い朝鮮や日本がどのように動いていったのかが描かれます。 その時日本はまさに幕末。外国勢力の圧力が否が応にも増し、開国か攘夷かで揺れていた時期です。 この頃の日本の混乱や、その当時の中国、朝鮮、ヨーロッパ情勢が神野先生によってわかりやすく解説されます。かなり意外な発見もありとても楽しく読むことができます。
あわせて読みたい
アンリ・トロワイヤ『帝政末期のロシア』あらすじと感想~ドストエフスキー亡き後のロシア社会を知るために この本は小説仕立てで1903年のロシア帝政末期の社会を紹介していきます。 主人公は若いフランス人ジャン・ルセル。彼はふとしたきっかけでロシアに旅立つことになります。私たち読者は彼と同じ異国人の新鮮な目で当時のロシア社会を目の当たりにしていくことになります。
あわせて読みたい
『スターリン伝』から見たゴーリキー~ソ連のプロパガンダ作家としてのゴーリキー 今回は『スターリン伝』という佐藤清郎氏の伝記とは違う視点からゴーリキーを見ていきました。ある一人の生涯を見ていくにも、違う視点から見ていくとまったく違った人物像が現れてくることがあります。 こうした違いを比べてみることで、よりその人の人柄や当時の時代背景なども知ることができるので私はなるべく様々な視点から人物を見るようにしています。
あわせて読みたい
共産主義と資本主義、そして宗教のつながり~ぼくがキューバを選んだ理由 キューバ編⑥ ここまで4本の記事にわたってキューバの歴史をお話ししてきましたが、みなさんの中には次のような疑問をお持ちになった方もおられるかもしれません。 「なぜいきなりキューバの歴史をここまで話し出したのだろう。いや、そもそもなぜキューバ?キューバと宗教って何か関係はあるの?」と。 たしかにキューバは宗教の聖地ではありません。 ですが、私にとっては宗教を学ぶ上で非常に重要な国がキューバだったのです。 今回の記事ではその「なぜ私が宗教の聖地でもないキューバを選んだのか」ということについてお話ししていきます。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次