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ピエール・パスカル『ドストエフスキイ』概要と感想~キリスト教的な視点から描かれたコンパクトなドストエフスキー伝
本日はヨルダン社出版の川端香男里訳、ピエール・パスカル『ドストエフスキイ』をご紹介します。
ピエール・パスカルは1890年生まれのフランス、ソルボンヌ大学の名誉教授で、ロシア文学やロシアの農民文化、旧教徒・分離派教徒の研究で有名です。
この著者による伝記の特徴は何と言っても、ドストエフスキーと宗教の関係性に焦点を当てているところにあります。訳者のあとがきを見てみましょう。
ピエール・パスカルの手になるLes Écrivains devant Dieu 叢書の一冊であるこの研究書は、小冊子ながらドストエフスキイと神、ドストエフスキイとキリスト教の関係について、あまり知られていない資料を駆使しながら、過不足なく論じている。(中略)
この「作家と人間叢書」のドストエフスキイは、神、キリスト、宗教の問題に絞ったいい意味での手軽な入門書である。神やキリストの問題抜きにドストエフスキイを論ずることは不可能なことであるが、こういう諸問題に関して概して不得手な日本の読者、研究者には、かっこうの「教科書」と言えるのではあるまいか。
ヨルダン社出版川 端香男里訳、ピエール・パスカル『ドストエフスキイ』P220
ピエール・パスカルの伝記は一貫してドストエフスキーとキリスト教という視点から論じています。
これまで紹介してきた伝記と大きく異なるのはこの点にあります。
ピエール・パスカルは伝記でドストエフスキーがいかにキリスト教から影響を受けていたのかということを検証していきます。
ドストエフスキーを理解するにはキリスト教の理解は避けて通れません。しかし、伝記においてそのことにフォーカスしている作品は意外と多くはありません。どうしても立場が偏ってしまうからでありましょうか。
私には何とも言えませんが、ピエール・パスカルの伝記は訳者あとがきにもありますようにドストエフスキーとキリスト教の関係を知る格好の入門書であるように思えます。
伝記の本文もおよそ150Pほどと、分量もお手軽です。ドストエフスキーの生涯を詳しく知るには少し物足りない分量ではありますが、他の伝記と組み合わせて副参考書として用いるには逆にちょうどよいのではないでしょうか。
ドストエフスキーと宗教について関心のある方にはぜひおすすめな伝記です。
以上、「ピエール・パスカル『ドストエフスキイ』~キリスト教的な視点から描かれたコンパクトなドストエフスキー伝」でした。
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