ギリシャ

アポロの杯三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『アポロの杯』あらすじと感想~初の世界一周旅行とギリシャ体験を綴った旅行記!三島の芸術観を知るのにおすすめ!

三島由紀夫は朝日新聞の特別通信員という形で1951年末から世界一周の旅に出かけました。この旅の旅行記が『アポロの杯』になります。

三島はアテネやデルフォイの遺跡や芸術を堪能し、その思いを旅行記にしたためます。彼はこの世界一周旅行で様々な地を巡りましたが、この地に対する感動は明らかに突出しています。

そして三島がギリシャの芸術についてどう思うのか、そして自身の文学観、人生観にどのような影響を与えたのかが率直に書かれていますのでこれは非常に興味深いです。

『アポロの杯』には三島の原体験とも言えるギリシャ・ローマ体験がこれでもかと詰まっています。彼の文学や生き方を知る上でも非常に参考になる作品です。

太陽と鉄三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『太陽と鉄・私の遍歴時代』~若き三島の原点を知れる自伝的作品!初の世界一周旅行で太陽を発見する三島とは

あの三島は若い頃どんな日々を過ごしていたのか、どうやって文壇に入り込むことができたのか。これはとても興味深いです。特にあの太宰治との初対面のエピソードはものすごく面白く、三島VS太宰の構図がはっきりとここで語られています。両者の文学スタイルの違いまで語られていて、この箇所だけでも非常に贅沢なエピソードということができるでしょう。

そして前回の『潮騒』の記事でも引用したのですが、私の中では何と言っても三島由紀夫の人生初の世界一周旅行についてのエピソードが最も印象に残っています。彼は朝日新聞の特別通信員という形で1951年末から世界一周の旅に出かけました。その時に三島由紀夫がまさに太陽を発見したというこのエピソードは後の三島文学を決定づけるかのような意味を持っていたのでした。

ラーマーヤナインド思想と文化、歴史

『インド神話物語 ラーマーヤナ』あらすじと感想~囚われの妻シータを救いに奮闘するラーマと愛すべき猿神ハヌマーンの冒険神話

巨大な戦場を舞台にした『イリアス』、『マハーバーラタ』、それに対し主人公の冒険物語を軸にした『オデュッセイア』と『ラーマーヤナ』。この類似は私にとって非常に興味深いものがありました。しかも物語自体も奇天烈な冒険譚に満ちた『オデュッセイア』の方が面白いというのも似ています。

『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』と二つ続けてインド二大叙事詩を読んできましたがこれは素晴らしい体験となりました。インドの奥深さ、面白さに私はすっかり撃ち抜かれてしまいました。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

ギリシア悲劇名作の宝庫・シェイクスピア

丹下和彦『ギリシア悲劇』~ギリシア悲劇の奥深さを学べるおすすめ入門書

この作品ではギリシア悲劇の起源やその流れをまず序章で学ぶことになります。

そこから時代順に、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスというギリシア悲劇の重鎮たちの作品を通してその奥深さを考察していく流れになります。時代を経ていくにつれて悲劇の内容がどう変わっていったのかが非常にわかりやすく説かれているのでこれはとてもありがたかったです。

名前は知っていてもなかなかその中身までは知らないギリシア悲劇。そのギリシア悲劇の奥深さを知れるおすすめの入門書です。

名作の宝庫・シェイクスピア

シェイクスピア『トロイラスとクレシダ』あらすじと感想~ギリシャ神話『イリアス』の世界を舞台にあの英雄たちが喋る喋る!

『トロイラスとクレシダ』はあのギリシャ神話『イリアス』に出てきた有名な英雄たちがどんどん出てくる豪華な作品です。

そしてこの作品の英雄たちのまあなんとよく喋ること!

『イリアス』のあの無骨で勇敢な男らしい英雄たちの姿はいずこやら、実に人間くさいです。シェイクスピアらしい言葉、言葉、言葉の応酬!「これが本当にあのギリシャ神話の英雄か」と笑いたくなるくらいの話しぶりです。

ですがこれがまたいいんですよね。シェイクスピアだからこそ出せるこの人間味!

当時の観客たちも、誰もが知るギリシャ神話の英雄のオールスター戦を見せてくれたシェイクスピアに拍手喝采だったのではないでしょうか。

ローマ帝国の興亡とバチカン、ローマカトリック

菊池良生『傭兵の二千年史』~世界の歴史の見え方が変わる名著!サッコ・ディ・ローマを学ぶ過程で見つけたおすすめの逸品!

この作品の素晴らしいところは傭兵のそもそもの始まりから歴史を見ていける点にあります。

古代ギリシャからの歴史の変遷を「傭兵」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。

人間ははるか昔から戦争を繰り返してきました。しかしその戦争を戦っていたのは誰だったのか。もちろん、その主役は王侯貴族だったかもしれません。しかしひとりひとりの兵士はどこからやって来たのか。そしてどのようなシステムで戦争は行われてきたのか。

一度知ってしまえば世界の見え方が全く変わってしまう恐るべき名著です!

名作の宝庫・シェイクスピア

シェイクスピア『アテネのタイモン』あらすじと感想~金の切れ目は縁の切れ目。お人よしの富豪の悲惨な転落劇

『アテネのタイモン』は紀元前五世紀頃に実際に存在していたアテネの人間嫌いの市民ティノモスをモデルにして書かれた作品です。

物語の筋としてはシンプルです。シンプルすぎると言ってもいいでしょう。そして実際に読んでみて思ったのですが、たしかに本紹介で問題作と言われているのもわかるような気がしました。

問題作として扱われるこの作品ではありますが、シェイクスピアの全体像を考えるためにもこの作品を読むことができてよかったなと感じています。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(12)ルーブルの至宝『サモトラケのニケ』が素晴らしすぎた件について~ぜひおすすめしたいヘレニズム彫刻の傑作!

ルーブルの至宝『サモトラケのニケ』。 この作品は1863年にエーゲ海のサモトラケ島で発見された彫刻で、「ニケ」というのは「女神」を意味する言葉です。 そしてこのニケはヘレニズム期の紀元前190年頃に制作されたと考えられています。 この彫刻は私がパリで最も強烈な印象を受けた芸術作品になりました。あまりの美しさに完全に魅了されてしまいました。 この記事ではそんなニケの魅力についてお話ししていきます。

秋に記す夏の印象~パリ・ジョージアの旅

(11)ルーブル美術館でドストエフスキーが愛した理想風景画家クロード・ロランを発見。同時代の天才プッサンと共にご紹介

パリといえばやはりルーブル美術館を思い浮かべる方も多いと思います。

ですが、ドストエフスキーに関心を持っている私にとっては実はこの美術館はノーマーク。正直、特にこれといってものすごく見たい作品があるというわけでもなかったのです。「有名なルーブルだし、せっかくだし行っておきますか」くらいのものだったのでした。

しかし実際にここを訪ねてみて、そんな軽率なことを思っていた自分を大いに恥じることになりました。この美術館はやはり評価されるべくして評価されている素晴らしい美術館でした。今さら私がこんなことを言うのもおこがましい話ではありますがあえて言いましょう。「やっぱりルーブルはすごかった!」と

ローマ帝国の興亡とバチカン、ローマカトリック

ジャック・ル・ゴフ『中世西欧文明』~中世ヨーロッパは本当に暗黒時代だったのか。ルネサンスへ至る過程を知るのにおすすめ

この作品は単なる歴史書ではありません。歴史の流れだけでなく、その背後にある人々の生活や文化を深く掘り下げていきます。

中世ヨーロッパの人々の生活や信仰を知ることができる本書は非常に貴重です。

特に煉獄や天使の観念や、人間と森の関係性などの話は刺激的でした。「おぉ~なるほど!」と膝を打ちたくなる解説がどんどん出てきます。

古代ローマやルネサンスと比べて明らかにマイナーな中世ヨーロッパ。ですがこの狭間の時代があるからこそ後のヨーロッパができてくると考えればやはりこの時代も見逃せません。

ヨーロッパ史を大きな視点で観ていくためにもこの作品は大きな助けになること間違いなしです。