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宮下規久朗『ヴェネツィア 美の都の一千年』あらすじと感想~観光ガイドにもおすすめ!歴史と美術の流れを知るのに便利な1冊!

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宮下規久朗『ヴェネツィア 美の都の一千年』概要と感想~観光ガイドにもおすすめ!歴史と美術の流れを知るのに便利な1冊!

今回ご紹介するのは2016年に岩波書店から発行された宮下規久朗著『ヴェネツィア 美の都の一千年』です。

早速この本について見ていきましょう。

水の都ヴェネツィアは、たぐい稀な「美の都」でもある。千年以上にわたり独立を保ち「アドリア海の女王」と呼ばれた都市国家は、ティツィアーノらの天才画家を生み、ヨーロッパ中から一流芸術家が集まった。町のあちこちに息づき、いまも新しさを加えている建築や美術を切り口に、ヴェネツィアの歴史と魅力を存分に紹介する。(カラー写真多数)

Amazon商品紹介ページより
バシリカのあるサン・マルコ広場カナレット1730年Wikipediaより

ヴェネツィアは言わずと知れた美の都ですよね。私も一度は訪れてみたいと思っていた場所です。

この街と文学のつながりといえばやはりシェイクスピアの『ヴェニスの商人』やトマス・マンの『ヴェニスに死す』も有名です。

そして我らがドストエフスキーもこの街を奥様と一緒に訪れていて、ヴェネツィアの美しさを絶賛しています。

そしてそんなヴェネツィアの歴史や文化を知るのに今作『ヴェネツィア 美の都の一千年』は非常におすすめな参考書となっています。

宮下氏の作品は当ブログでもすでに何度も紹介しています。

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宮下氏の著作はとにかくわかりやすく、面白い!絵画そのものを見ていくだけではなく、美術から見えてくる社会事情やその奥深さも学ぶことができますので私もいつも著作のお世話になっています。

そんな宮下氏によるヴェネツィアガイドですので面白くないわけがありません。

信頼のクオリティーです。非常に面白い作品でした。

ヴェネツィアはその圧倒的な美しさ、ビジュアル面ばかりについ目が行ってしまいますが、やはりこの街が育んできた歴史や文化を知るとまた違って見えてきます。

特にヴェネツィア絵画の特徴や流れについて知れたのは私にとって非常にありがたいものがありました。

ティントレット『最後の晩餐』(1592-1594)Wikipediaより

私はヴェネツィア絵画では特にティントレット(1518-1594)が気になっていたのですが、彼についての特徴や歴史なども知ることができて嬉しかったです。

著者はこのヴェネツィア絵画について次のようにまとめています。

ヴェネツィア美術の頂点をなす一六世紀ヴェネツィア絵画は、ジョヴァンニ・べッリーニの暖かい光と色彩によって開幕し、ジョルジョーネの詩情豊かな様式を経て、ティツィアーノがそれにローマの力強い古典主義を融合させて超人的な高みにまで上昇させた。そして、ティントレットはティツィアーノの劇的な表現力と構成を、ヴェロネーゼはティツィアーノの華麗な色彩表現と構想力を継承して発展させたといえよう。

ヴェネツィアはそれによってローマに匹敵する美術の中心地となり、ローマの線描に対するヴェネツィアの色彩という図式が定着した。素描よりも色彩を重視するヴェネツィア絵画は、輪郭線と色彩が溶解するようなティツィアーノの表現主義的な晩年様式において、その極限に達している。ニ〇世紀アメリカの批評家クレメント・グリーンバーグは、こうしたヴェネツィア派の絵画性はその後の西洋美術に脈々と継承され、二〇世紀の抽象表現主義にいたるという系譜を示唆し、それを「ヴェネチアン・ライン」と名付けた。その可否はともかく、ヴェネツィア絵画が、現代にいたる絵画の可能性のすべてを開示したものであったことはまちがいない。

岩波書店、宮下規久朗『ヴェネツィア 美の都の一千年』P151-152

「ローマの線描に対するヴェネツィアの色彩という図式」

たしかにティントレットの独特な色彩は何とも言えない迫力がありますよね。

これがヴェネツィア絵画の特徴なのだというのがよくわかりました。たしかにローマやフィレンツェとは全く違います。

この作品ではそんな絵画のお話や、ヴェネツィアの歴史そのものも楽しく学ぶことができます。

ヴェネツィアに行く予定のある方、興味のある方にぜひおすすめしたい参考書です。

以上、「宮下規久朗『ヴェネツィア 美の都の一千年』~観光ガイドにもおすすめ!歴史と美術の流れを知るのに便利な1冊!」でした。

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ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書)

ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書)

※2023年3月16日追記

2022年12月に私もヴェネツィアを訪れました。その時の体験を以下の記事で紹介しています。この本で学んだことが生きたヴェネツィアでの体験になりました。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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