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佐藤清郎『チェーホフ芸術の世界』あらすじと感想~チェーホフ作品における思想を知るならこの1冊!

チェーホフ芸術の世界
目次

チェーホフ作品における思想を知るならこれ!佐藤清郎『チェーホフ芸術の世界』概要と感想

チェーホフ(1860-1904)Wikipediaより

前回の記事で佐藤清郎氏の『チェーホフの生涯』をご紹介しましたが、そちらはチェーホフの生涯に特化した著作のため、個々の作品解説はあまり書かれていないことをお伝えさせて頂きました。

そこでチェーホフの作品やその思想を知るのに何がおすすめかと言いますと、それが今回ご紹介する『チェーホフ芸術の世界』という著作になります。

『チェーホフ芸術の世界』は筑摩書房より1980年に発行されました。

この本はチェーホフ作品の解説とそこに込められた思想の解明に特化しています。チェーホフ作品はどれも読みやすいものばかりですが、そこに込められた思想となると驚くべき深さがあります。

チェーホフ作品の面白さ、深さをもっと知るのにこの本は素晴らしい手助けとなります。

佐藤氏はあとがきでチェーホフ文学の特徴を次のように述べています。

かねてから私はチェーホフ文学を「覚醒と脱出の文学」と見るのを持論としている。

何に覚醒し、何から脱出するのか。

それは何かにとらわれている自分に気づき、心の自由に目覚めることであり、みずから入りこんでいる「箱」から、因習、沈滞、マンネリズム、日和見主義等から脱出して、人間らしい人間になることだ。精神の自立だ。

筑摩書房、佐藤清郎『チェーホフ芸術の世界』P365

「何かにとらわれている自分に気づき、心の自由にめざめること」

これは仏教にも通ずる精神であるように思います。

チェーホフ作品を読んでいると、これはまるで仏教書ではないかと思うことが多々ありました。

彼の小説がそのまま仏教の教科書として使えてしまうくらい、それくらい仏教に通じる物語を書いていたのです。これは驚きでした。

なぜチェーホフがそのような思想を持つようになったのかということを、『チェーホフ芸術の世界』ではわかりやすく解説してくれます。

これから先チェーホフ作品をご紹介していきますが、基本的にはこの著作を参考にして読んでいきたいと思います。

チェーホフの参考書は数多くあれどこの本ほど個々の作品に対してわかりやすくかつ深く言及しているものはなかなかないのではないかと私は感じています。

非常におすすめです。チェーホフ思想を学ぶには最適な一冊です。

以上、「佐藤清郎『チェーホフ芸術の世界』チェーホフ作品・思想を知るならこの1冊!」でした。

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チェーホフ芸術の世界―覚醒と脱出へのいざない (1980年)

チェーホフ芸術の世界―覚醒と脱出へのいざない (1980年)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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