MENU

屋根を粗雑に葺いてある家に雨が漏れ入るように、情欲は心に侵入する―お釈迦様のことばに聴く

屋根を粗雑に
目次

屋根を粗雑に葺いてある家に雨が漏れ入るように、情欲は心に侵入する―お釈迦様のことばに聴く

一三 屋根を粗雑に葺いてある家には雨が洩れ入るように、心を修養してないならば、情欲が心に侵入する。

一四 屋根をよく葺いてある家には雨の洩れ入ることが無いように、心をよく修養してあるならば、情欲の侵入することが無い。

岩波書店、中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』P11-12

今回のことばは藁葺きの屋根をたとえに、常日頃から心を修養する大切さを説いた箇所になります。

屋根を粗雑に葺いた家は雨漏りに襲われます。家を建てる時に手を抜くと、後で痛い目に遭います。

ここでいう家とは私たちの心です。

私たちの心も雨を防ぐしっかりとした屋根がないとやがて濡れてしまいます。

雨漏りによって濡れるというのがまた絶妙の譬えですよね。

土砂降りのようなものすごい勢いで水を被るとしたら私たちも身構えますし、こんな大雨もいつか止むだろうという気構えができます。

しかし絶え間なくぽつ、ぽつと滴ってくる雨漏りというのはいかにも陰鬱ですよね。一滴一滴の水の量はたいしたことがなくとも、それが延々と続くというのは人間には耐えがたい。

そしていつしか床が水浸しになるほど水が屋根から滴り落ちることになるのです。

私たちの心にもしっかりとした屋根が必要です。

特に意識することもなく粗雑にこしらえた屋根ではいつか雨漏りが起きます。

ですのでしっかりと意識して自らの心を守るべく修養に励みなさいとお釈迦様は述べるのです。

私達が煩悩に踊らされてしまうのは煩悩の雨を心に侵入させてしまうからです。

もしそれらが私たちの心に侵入する前にしっかりとガードすることができたらそもそも煩悩に苦しめられるということも起きなくなります。

さすがに大型台風のようなどぎつい雨風が来た場合は屋根云々を何とかしても雨の侵入は抑えられないかもしれませんが、日常的な雨に関してはある程度対策を取ることが可能なのではないでしょうか。(とは言ってもこれが難しいのですが)

屋根をしっかりと作るように自身の心を修めるべし。精神修養に励むべし。

そうお釈迦様は仰られるのです。

Amazon商品ページはこちら↓

ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)

ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)

次の記事はこちら

あわせて読みたい
悪いことをした人は、この世で憂え、来世でも憂え、ふたつのところで共に憂える―お釈迦様のことばに聴く 悪いことをした人は、この世で憂え、来世でも憂え、ふたつのところで共に憂える―お釈迦様のことばに聴く 一五 悪いことをした人は、この世で憂え、来世でも憂え、ふた...

関連記事

あわせて読みたい
中村元訳『ブッダの真理のことば』概要と感想~簡潔で心に響く原始仏教のエッセンスを知るならこの1冊! 『真理のことば』はひとつひとつの文が簡潔で、非常にわかりやすいです。哲学的なものというより生活実践としての言葉がそのほとんどを占めます。ですのでとてもわかりやすく、すっと心に染み入ってきます。 そうしたわかりやすさ、率直さ、簡潔さがあったからこそこのお経が世界中で親しまれることになったのです。 仏教入門としてこのお経は非常に優れています。お釈迦様が説かれていた教えに触れるにはこのお経が非常におすすめです。
あわせて読みたい
ショーペンハウアー『幸福について』あらすじと感想~仏教に強い影響を受けたショーペンハウアー流人生論 「幸福は蜃気楼である。迷妄である」 『幸福について』というタイトルから「人生を幸福なものにするための方法」を教えてもらえるのかと思いきや、いきなり幸福など幻に過ぎぬとばっさり切ってしまうあたりショーペンハウアーらしさ全開です。 この本ではショーペンハウアーが「人々の信じる幸福の幻影」を木っ端みじんにし、どう生きればよいのか、真の幸福とは何かを語っていきます。
あわせて読みたい
僧侶が問うコロナ禍の日本~死と病が異常事態になった世界で 今本当に見るべきことは何か。問題の本質はどこなのか。私たちは目先の不安や憎悪に流されることなく、冷静にこの事態を見ていかなければなりません。 伊藤計劃さんの『ハーモニー』はそんな今の日本に警鐘を鳴らしてくれている作品だと私は思います。こういう時代だからこそ文学の力、言葉の力は私達に大きなものの見方を与えてくれるのではないかと私は信じています。
あわせて読みたい
ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される―お釈迦様のことばに聴く 「ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。」 『真理のことば』は読みやすく、誰でも簡単に親しめることから世界中で愛読されているお経です。こうした簡潔でわかりやすいことばが最後まで続いていくのがこのお経の特徴です。 さて、今回紹介することばは仏教の基本的なものの見方を表したものになります。
あわせて読みたい
怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない―お釈迦様のことばに聴く ブッダの有名なことば「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない」 三 「かれは、われを罵った。かれは、われを害した。かれは、われにうち勝...
あわせて読みたい
中村元訳『ブッダのことば』を読む~お釈迦様のことばに聴く 最古のお経のひとつであるこの『ブッダのことば(『スッタニパータ』)』はお釈迦様が存命当時実際に説かれていた教えに最も近いとされています。 シンプルだけれども心に響く深い味わいがある、そんなお経がこの『ブッダのことば』です。 有名な「犀の角のようにただ独り歩め」という言葉もこのお経で説かれています。私も大好きな経典です。
あわせて読みたい
「蛇が脱皮し旧い皮を捨て去るように」~お釈迦様のことばに聴く 一 蛇の毒が(身体のすみずみに)ひろがるのを薬で制するように、怒りが起ったのを制する修行者(比丘)は、この世とかの世とをともに捨て去る。-蛇が脱皮して旧い皮...
あわせて読みたい
「犀の角のようにただ独り歩め」~お釈迦様のことばに聴く 「犀の角のようにただ独り歩め」~お釈迦様のことばに聴く 六八 最高の目的を達成するために努力策励し、こころが怯むことなく、行いに怠ることなく、堅固な活動をなし...
あわせて読みたい
「なぜ僧侶の私がドストエフスキーや世界文学を?」記事一覧~親鸞とドストエフスキーの驚くべき共通点 親鸞とドストエフスキー。 平安末期から鎌倉時代に生きた僧侶と、片や19世紀ロシアを代表する文豪。 全く関係のなさそうな2人ですが実は重大なつながりがあるとしたらいかがでしょうか。 このまとめ記事ではそうした私とドストエフスキーの出会いと、なぜ僧侶である私がドストエフスキーを学ばなければならないのかを紹介しています。
屋根を粗雑に

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次