ネパールの首都カトマンドゥへ~インドとも中国とも違う独特な街並み
【インド・スリランカ仏跡紀行】(73)
ネパールの首都カトマンドゥへ~インドとも中国とも違う独特な街並み
ルンビニー近郊にはゴータマ・ブッダ空港(通称バイラワ空港)があり、ここからネパールの首都カトマンドゥに飛ぶことができる。陸路でルンビニーからカトマンドゥへ行こうとすると山々を越えねばならず、夜行バスで10時間以上もかかる途轍もない旅になるそうだ。その点、飛行機だと飛行時間30分ほどで着いてしまう。しかもその途中、運が良ければヒマラヤ山脈を窓から拝めるそうだ。これを使わない手はない。私も飛行機でカトマンドゥへと向かった。
こちらは私が撮影した映像だが、なんと、ばっちりヒマラヤ山脈が見れたのである!ここ数日ヒマラヤ方面は雲がかかっていて見えるかは怪しいとのことだったがこれは嬉しかった。
仏教でも大雪山として尊ばれるヒマラヤ山脈。ヒマラヤという呼び名はインドの古代語サンスクリット語でhimālayaと綴り、ヒマ(hima)とは雪のこと、アーラヤ(ālaya)は貯蔵の意味で、この二つが合わさってヒマラヤとなる。つまり「雪が常に蓄えられている山」という意味である。ちなみにこのアーラヤは唯識で説かれる阿頼耶(アーラヤ)識と同じである。
いずれにせよ、ヒマラヤが見えた瞬間私は大興奮であった。カトマンズ市内からも見えないことはないとのことだったが、私はこの飛行機に賭けていたのである。ルンビニーからカトマンドゥへ向かう便では左側の窓側席を取ることをおすすめする。
そしてもう一点上空から見ていて興味深かったのがカトマンドゥが山の中にいきなり現れたことだった。ネパールはその国土のほとんどが山脈地帯。そんな山々の深い溝が連なる中で急に町や村が現れるのだ。人が住める場所に住むべくして住むというのが一目でわかる景色で、カトマンドゥはその中でも特にダイナミックな登場であった。こんな山の中にいきなり平地が現れ街が姿を現すのである。ヒマラヤを見れたのと並んでこちらも興味深い体験であった。
さて、カトマンドゥ空港に到着だ。
そしてカトマンドゥ市内を走っていて驚いた。クラクションが鳴らないのである。インドではどこへ行ってもものすごい勢いでクラクションが鳴らされるがカトマンドゥではそうではない。運転も秩序立ったもので、その違いには驚いた。
スリランカを訪れた時もその秩序や街のきれいさに驚いたものだが、その時はヒンドゥー教と仏教の違いもあるのかもしれないと思ったりもした。しかしここネパールは基本的にはヒンドゥー教徒が大多数を占める国である。となれば、クラクションや運転方法、衛生状況はヒンドゥー教とは関係なく、やはりインド的な何かが原因ということになるのだろう。宗教という視点から何事にも還元して考えるのはやはり間違いの元となりかねない。何事も複雑なのである。単純明快は誘惑だ。自戒せねばならぬと気を引き締めた。
カトマンドゥ旧市街中心部のダルバール広場にやって来た。インドとも中国とも違う独特の建築だ。灰色に近い茶色と赤の彩色、日本建築にもどこか似ているような雰囲気も感じられるがやはり違う。これは面白い。
ダルバール広場周辺にはヒンドゥー教寺院が密集している。ただ、ヒンドゥー教寺院といってもインドとはその建築も雰囲気も違う。
こちらはシヴァ神の化身のひとつであるカーラ・バイラヴという破壊神だ。像の前は献灯できるようになっており、多くの人がこの神様に祈りを捧げていた。神様の顔の作りなども明らかにインド的ではない。ネパールに根付いたヒンドゥー教にはネパール色がある。
この旧市街には至る所に寺院が立っているという印象だった。大きな寺院もあれば祠のようなものもある。そんな中でひとりひとりが思い思いの場所に祈りを捧げている。上の写真はまさにその瞬間だ。大きくて人がたくさん賑わう寺院だけが全てではないのである。私はこの風景が特に印象に残っている。日本との共通点を感じたのだ。
こちらは旧市街近くのバーザール。
この異国情緒溢れる街並みは旅人の心に刺激を与え続けてきた。どこの国とも何かが違う新鮮な体験であった。
そして私は旧王宮も訪れた。現地ガイドさんがぜひおすすめしたい場所なのだという。もちろん観光コースの中でも定番の場所であるのだが、建築や美術に興味のある方には間違いない場所だと熱く語って下さった。
たしかに私もここに来てすぐ気づいた。そのひとつひとつの装飾がとてつもなく細かいのだ。さらに寄ってみよう。
小さな天女像やその他の像も見事だが、やはりこの細かな模様がひと際目を引く。
この柱も見てほしい。これには私も鳥肌が立った。どこまで芸が細かいのだ。
タンジャーブルで見た巨大な寺院やマドゥライの色彩豊かなミナクシ寺院とも異なる実に繊細な建築である。
こう見てみると、タンジャーブルのブリハディーシュワラ寺院からは実に雄々しい印象を受ける。そしてミナクシ寺院からは聖俗混沌とした開放感のようなものを感じる。それに対してこのカトマンドゥの旧王宮にはとりわけ繊細な印象を感じずにはいられない。大国インドとヒマラヤ山中の小国という地理的、文化的違いだろうか。
この対の天女があしらわれた柱も実に素晴らしい。
これら旧王宮の建築は17世紀に作られたものがほとんどで、時代的には比較的最近のものである。しかしこの素晴らしい建築は美術好き、建築好きの心に響くことは間違いない。
入り口付近の門に施された細かい彫刻も面白い。この髑髏の彫りがなんともユーモアがあって印象に残っている。
ぜひぜひこの旧王宮は皆さんにもおすすめしたい。
ただ、このカトマンドゥは2015年の大地震で甚大な被害を受けた。上で紹介した寺院や旧王宮も例外ではない。現在は世界各国からの支援などで修復が進んでいるが、未だにその傷跡は癒えていない。
次の記事ではネパール最大のヒンドゥー教寺院パシュパティナート寺院とその火葬場についてお話ししていく。
主な参考図書はこちら↓
次の記事はこちら
前の記事はこちら
【インド・スリランカ仏跡紀行】の目次・おすすめ記事一覧ページはこちら↓
※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
関連記事
コメント