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シク教の聖地アムリトサルの黄金寺院へ~水に浮かぶ金色のお堂と瞑想的な空気に感動!

アムリトサル 黄金寺院
目次

【インド・スリランカ仏跡紀行】(100)
シク教の聖地アムリトサルの黄金寺院へ~水に浮かぶ金色のお堂と瞑想的な空気に感動!

前回の記事「(99)インド北部のシク教の聖地アムリトサルを訪ねて~浄土真宗の蓮如教団との共通点?」でアムリトサルとシク教についてお話ししたが、いよいよこれから聖地黄金寺院を訪ねることにしよう。

国境セレモニーを見学した私はそのままアムリトサル中心部の黄金寺院へ向かった。

車を降りて歩いて黄金寺院へ。

時間はもう19時近く。空も暗くなってきた。黄金寺院周辺は門前町の雰囲気。ただ、道も広く建物もきれいなためインド的なカオスを感じることもない。

黄金寺院の入り口に到着。

寺院に入る前には手洗い場で手を洗い、さらにこの水で足を清めてから入場することになる。もちろん、土足厳禁。そしてシク教徒はターバンを巻き、私達異教徒はオレンジ色のバンダナを頭に巻いて入場する。

そして門をくぐった先に現れた黄金寺院に思わず息を呑む。

美しいとは聞いていたがまさかこれほどとは・・・。

黒い水面に反射する黄金の輝きはまさに彼岸の世界。この世のものとは思われぬ世界がここに現出していた。

黄色いターバンに紫色の衣を着ている彼らはこの寺院に所属するシク教徒。槍のようなものを持っているのが見えると思う。前回の記事でもお話ししたようにシク教教団は自衛のために武装を決めた。命を賭して教団を守ることがシク教の重要な指針となった。その名残が今もこうして残っているのである。

池の周りではシク教徒が座って瞑想をしていた。開祖のナーナクは瞑想の達人として知られていた。シク教では瞑想を非常に重要視している。その教えはシク教徒ひとりひとりに浸透しているようだ。

そして黄金寺院に向かって通路が伸び人影も見えるが、これは寺院参拝のための待機列である。今から並べば帰る時間がかなり遅れてしまうので列に並ぶのは翌日にすることにした。

反対側まで歩いてきた。寺院を眺める人々の後ろ姿が実に印象的だった。この寺院では常に僧侶の祈りの声がスピーカーで流れている。そのため何とも瞑想的で宗教的な雰囲気が感じられるのだ。

そして黄金寺院境内を出ると、すぐそこにランガという共同食堂がある。

ここは誰でも無料で食事を頂くことができる。これはシク教の重要な活動の一つでこの食事はすべて寄付とボランティアで成り立っている。

開祖のナーナクはカースト制度を否定した。インドではカーストの異なる者とは食事をしないという厳格なしきたりがあったが、そのカースト制に真っ向から対抗したのがこのランガのシステムだったのである。ナーナクはすべての人に分けへだてなく共に食事をすることを求めた。食事は人間社会にとって根本的な営みである。その食事の場においてナーナクは自身の信念を体現したのである。

そしてこのランガのシステムが確固たるものとして定着したのが第三代グルのアマル・ダースの頃だった。保坂俊司著『シク教の教えと文化』ではそのエピソードが次のように紹介されている。

アマル・ダースのこの活躍によってシク教は、独立した一つの教団としての地位を確立したといわれている。そして、それを決定的にしたのが、一五六七年のアクバル帝の訪問である。

彼はアクバル帝にシク教の取り決めを守らせ、共同食堂(ランガ)においてあらゆる階級の人々と一緒に食事させたのである。以後ランガは、シク教のシンボルとなり、今日に受け継がれている。このランガは、イスラームの救貧所のシク教的展開だといわれている。

このランガは、今日でもいかなる人々にも分けへだてなく開かれており、筆者も、インドのみならずアメリカにおいても、しばしば利用させていただいた。シク教においては、住(これも簡易宿泊施設が用意されている)と食は完全に保証されているのである。

したがって、シク教徒には、乞食は理論的に存在しないのである。なお、この施設は、すべてシク教徒のセーワと呼ばれる奉仕活動によって賄われている。特に有名なのは、アムリトサルのゴールデン・テンプルのランガであるが、ここでは一挙に千人が食事でき、しかも二十四時間運営されている。

※スマホ等でも読みやすいように一部改行した

河出出版社、保坂俊司『シク教の教えと文化 大乗仏教の興亡との比較)P112

なんとあの強大なムガル皇帝にもランガで食事させたというのは驚くべき事実である。それほどシク教においてはランガという営みが重要視されているのである。この引用の後半に述べられているように、私はまさにここゴールデン・テンプル(黄金寺院)のランガにお邪魔させて頂いているのである。

夜の黄金寺院は実に荘厳で素晴らしい空間であった。

翌朝、私は再び黄金寺院を訪れた。残念ながら雨。しかも寒い。ついこの前まで半袖でも暑く感じていたのだがやはりインド北部は冷え込みが強い。

日中に見る黄金寺院も素晴らしい。夜とはまた違った雰囲気である。

今日はこの列に並び私も本殿にお参りすることにした。

それにしても寒い。しかも裸足で濡れた大理石の上に立つので足が冷える冷える。ウインドブレーカーのフードも被りなんとかしのぐ。

列は想像していたよりも早く進み、一時間ほどで聖典の祀られた本殿のところまで行くことができた。

写真撮影はこの先から禁止なのでこれが最後の写真である。

本殿ではカバーに覆われた聖典が置かれていてその奥に数人の僧侶がいた。楽師3人が生演奏で宗教歌を歌い続けている。この声がスピーカーから流れていたのである。

黄金寺院本殿を参拝した後、ガイドのグプタさんから「せっかくですのでここで瞑想してから帰りましょう」と提案された。

私も大いに賛成し、通行の邪魔にならない回廊の壁沿いに座り、黄金寺院と水面を眺めながら瞑想を始めた。

するとどうだろう。

ここに座って瞑想するとものすごく気持ちがよいのである。インドに来てずいぶん経つがこんなにすーっとした気分になったのは初めてだ。

目の前の水の効果もあるかもしれないが、それにしても不思議だった。

シク教の開祖ナーナクは瞑想の達人だった。そのシク教の聖地はやはり瞑想に適した何かがある場所なのだろう。本当に気持ちがよかったのである。

グプタさんにこの気持ちよさについて聞いてみると、「ここはインドの中でも特にそうです。瞑想するのに最高の場所です」と仰られていた。やはりここアムリトサルは聖地になるだけの何かがあるのである。

さあ、アムリトサルの滞在もこれで終了だ。

私はここから再びデリーに戻り、最後の目的地マトゥラーへと向かった。

マトゥラーはガンダーラと同じく仏像発祥の有力地とされている街である。私はこの街の博物館に展示されている阿弥陀仏の足の像を見に行くのだ。

「阿弥陀仏の足」のためになぜわざわざそんな所までと思うかもしれないが、実はこの像、とてつもない代物なのである。なんと、この足はインドで現存する唯一の阿弥陀仏なのだ。私は旅の終わりにぜひ浄土真宗のご本尊である阿弥陀仏にお目にかかりたいと思ったのである。

主な参考図書はこちら↓

インド宗教興亡史 (ちくま新書)

インド宗教興亡史 (ちくま新書)

シク教の教えと文化: 大乗仏教の興亡との比較

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【インド・スリランカ仏跡紀行】の目次・おすすめ記事一覧ページはこちら↓

※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。

「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」

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アムリトサル 黄金寺院

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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