ひのまどか「作曲家の物語シリーズ」20作品一覧~クラシック入門のおすすめ本!時代背景と文化も学べる奇跡の伝記シリーズ!
クラシック入門のおすすめ本!ひのまどか「作曲家の物語シリーズ」20作品一覧~歴史と文化も学べる奇跡の伝記シリーズ!
これからご紹介するのはひのまどかさんの「作曲家の物語シリーズ」という、大音楽家たちの伝記作品です。バッハや、モーツァルト、ベートーヴェンなどの有名どころや、バーンスタインやシベリウスなど比較的最近の作曲家まで幅広くこの伝記シリーズでは紹介されています。
私がこのシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどかさんの『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』がきっかけでした。
クラシック音楽に疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。
この「作曲家の物語シリーズ」については以下のように述べられています。
児童書では初めての音楽家による全巻現地取材
読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。
リブリオ出版、ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』 1999年第10刷版
一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する、読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。
ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっていて、まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。
この記事ではそんなひのまどかさんの伝記シリーズ20作品をすべて紹介していきます。それぞれのリンク先でそれらの本についてより詳しくお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧になってください。
では、早速始めていきましょう。
『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』
スメタナといえば『モルダウ』!この曲は誰もが知る名曲ですよね。
私もこの曲が大好きです。
2019年にプラハを訪れた時も、この曲を聴きながらモルダウ(ヴルタヴァ川)を眺めて思わず泣いてしまったのを覚えています。
この曲には何度となく泣かされてきました。旅の節目節目でこの曲を聴き、その度に感情が揺さぶられて涙が出てしまいました。今聴いても泣いてしまいそうです。
そんな『モルダウ』でしたが、正直私はスメタナその人についてはほとんど何も知りませんでした。曲自体は知ってはいても、その背景となるものが何もわからなかったのです。(それでも泣けてしまうというのがこの曲のすごいところですよね)
この本を読んだきっかけはチェコ文化への興味からでした。そしてその過程でよりチェコのことを知りたいという思いがますます強くなり、プラハといえばやはり『モルダウ』、スメタナだなと感じ、この本を手に取ってみたのでありました。
その結果はもう大当たり!素晴らしい伝記と出会うことになりました!『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』。これはいい本です!
読んでいてすぐに引き込まれました。著者のひのまどかさんの素晴らしい語り口。まるで映画を観ているかのようにテンポよくスメタナの劇的な生涯が語られていきます。
この伝記は非常におすすめです。商品紹介に「全6曲の『わが祖国』をはじめ、耳の病に苦しみつつも大きな成功を得たスメタナの前向きな生きる姿を感動的に描く」とありましたように実際私もうるっと来てしまいました。これは素晴らしい伝記です。
ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』~『モルダウ』で有名なチェコ音楽家のおすすめ伝記!
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スメタナ: 音楽はチェコ人の命! (作曲家の物語シリーズ 17)
『モーツァルト―美しき光と影―』
もはや言わずもがなですが、オーストリアのザルツブルクで生まれたモーツァルトは幼いころから神童としてヨーロッパ中を駆け巡り、生涯多くの名曲を生み出した天才中の天才です。
この本はそんなモーツァルトの生涯をわかりやすく知ることができる素晴らしい一冊です。
私の中でモーツァルトといえば『レクエイム』の「怒りの日」のイメージが強烈にあります。これを大音量で聴いていると体が勝手に動いてしまいます。
この本もとにかく素晴らしい伝記です。波乱万丈、破天荒な天才モーツァルトの驚きの生涯を臨場感たっぷりに味わうことができます。
スメタナに続きモーツァルトの伝記も読んだわけですがもうすっかりひのまどかさんのファンになってしまいました。こんなに面白い本に出会えて私は幸せです。
モーツァルトとプラハの関係とは~波乱の生涯を知るのにおすすめの伝記!ひのまどか『モーツァルト―美しき光と影―』
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モーツァルト: 美しき光と影 (作曲家の物語シリーズ 10)
『シューベルト―「孤独な放浪者」』
この伝記を読んで驚いたのですがシューベルトは31歳というかなり若い時に亡くなっています。病気による死でしたが、まさかこんなに早く亡くなっているとは驚きでした。
シューベルトの音楽についてはこの動画がとてもわかりやすかったのでぜひおすすめです。
私自身、シューベルトに関しては名前は知っている程度で実際どのような人だったかはほとんど知りませんでしたので、この伝記は意外な事実がいっぱいでとても興味深かったです。
そしてこの伝記を読んで特に意外だったのは、シューベルトの引っ込み思案、謙虚さ、人のよさでした。
普通、歴史に残るような天才は強烈なエゴを持っていたり、破天荒な生活を送るイメージですが、シューベルトは全く違いました。自分の作品を売り込むのもためらったりするほどの引っ込み思案。人のいいシューベルトには彼を支えようとする友人たちがたくさん集まり、彼らがシューベルトの売り込みを担当するという不思議な関係性もありました。この本もものすごく面白かったです。
この本を子供時代、学生時代に読めたとしたらそれはものすごく幸運なことだと思います。こんなに深くて面白い本を楽しみながら読めるのですから。
その経験は絶対にそれからの人生に生きてくると思います。
そしてそれは私達大人にとっても同じです。これほどの本と出会えるのはなかなかありません。私はひのまどかさんのこのシリーズが大好きです。ぜひぜひおすすめしたいです。読めばきっとその面白さに驚くことでしょう。
シューベルトの生涯を知るのにおすすめ伝記!ひのまどか『シューベルト―「孤独な放浪者」』
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『ブラームス―「人はみな草のごとく」』
ブラームスはドイツのハンブルグ生まれの作曲家です。
彼は若き日に有名な作曲家シューマンと出会い、その後終生シューマン一家との深いつながりを持つことになります。それは彼の人生を決定づけた出会いでした。この伝記はそんな運命の出会いからスタートし、波乱万丈の人生を見ていくことになります。
ブラームスの伝記もこれまたものすごく面白かったです。ひのまどかさんの語り口の素晴らしさにはただただ脱帽です。私はもうすっかりファンになっています。もう憧れの域です。それほどひのまどかさんの語りは圧倒的です。子供向けの本とありますが、間違いなくどんな人が読んでも心打たれる作品です。この「作曲家の物語シリーズ」は本当に驚くべき作品群です。
このシリーズは沼です。一度はまってしまったら抜け出せません。どんどんどんどん興味の幅が広がり、読みたい本が増えていきます。そして何より、クラシックを聴きたくなる!
今CDをどんどん借りて聴き込んでいます。こんなにクラシックっていいものだったのかと今さらながら驚いています。
そんな音楽の楽しさも知れる素晴らしい伝記です。非常におすすめです。
ドイツの大作曲家のおすすめ伝記!ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』
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ブラームス: 人はみな草のごとく (作曲家の物語シリーズ 7)
『バッハ―「忘れられていた巨人」』
バッハといえば、以下のような美しいメロディーが印象的ですよね。
クラシックに詳しくない人ですらバッハの曲を知らない人はいないのではないでしょうか。
ですが、それほど多数の名曲を生み出したバッハですが、実際この人がどの年代を生きた人で、どこでどんな生活を送っていたかということになるとなかなかわからないというのが実際のところではないでしょうか。私もこの本を読むまでほとんど何も知りませんでした。
バッハ(1685-1750)はドイツのライプツィヒを拠点に活躍していました。しかし人々は彼の真価を理解できず、死後、その存在は忘れ去られてしまっていたのでした。
しかし1830年代頃からバッハを深く尊敬するメンデルスゾーンが彼の名曲を人々に知らしめたおかげでライプツィヒをはじめ、世界中にその偉大さが認識されることになりました。あまりに偉大な天才は当時の人には理解されず、時代を経てから初めて真に理解されるということをまさに体現するエピソードがこの本では語られます。
この本を読めば当時のキリスト教教会の雰囲気やドイツの時代背景まで知ることができます。そしてそんな社会の中で孤軍奮闘するバッハの尋常ならざる戦いを目の当たりにすることになります。
ものすごく面白い一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。
教会音楽の大成者バッハのおすすめ伝記!ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』
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『ベートーヴェン―運命は扉をたたく―』
ベートーヴェン(1770-1824)はドイツのボン生れの作曲家です。
ベートーヴェンといえば、やはりこれですよね。
交響曲第5番「運命」は誰しもが知る名曲ですよね。
この伝記の中で個人的に興味深かったのはベートーヴェンとゲーテとの交流でした。最初は互いによき理解者として親しんだもののその後にベートーヴェンが一方的にゲーテを嫌い絶交するというエピソードは非常に興味深かったです。ベートーヴェンの人となりがよく表れているように感じました。
この伝記を読めばわかるのですがベートーヴェンはかなりめちゃくちゃな人間です。天才は日常生活においては完全なる不適合者であることが伝わってきます。
ですが、やはり人類史上屈指の天才は常人では想像もつかない偉業を成し遂げます。そんな天才の偉業がなされていく過程をこの本ではドラマチックに語っていきます。ものすごく面白いです。
この伝記も非常におすすめです。
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ベートーヴェン: 運命は扉をたたく (作曲家の物語シリーズ 3)
黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』
チェコの大作曲家といえばスメタナとこのドヴォルジャークが浮かんできます。
ですがスメタナの『モルダウ』はすぐに思い出せるのに、ドヴォルジャークの曲は正直なかなかイメージできませんでした。
そんな私にとってこの伝記はドヴォルジャークの生涯を楽しみながら詳しく知ることができる非常にありがたいものでした。
この解説動画にはいつもお世話になっているのですが、ドヴォルジャークの特徴やその代表曲も知ることができるのでおすすめです。恥ずかしながら、この動画の14分あたりの『新世界』の音楽を聴いたときに「あっ、これが『新世界』なのか!」と驚きました。
この伝記では当時の時代背景もたくさん説かれます。やはり音楽もそれだけで存在するのではなく当時の政治、経済、国際情勢の影響を受けます。しかもその土地土地の文化や歴史、民俗性などももちろん関わってきます。弾き手がいて、聴き手がいる。その相互の関係なくして音楽が広がることはありえません。
ですので音楽と時代背景を一緒に学ぶことは非常に重要なことになります。
これは音楽だけではなく、文学も絵も彫刻も、そして宗教も一緒です。それ単体で生まれてくることはありません。必ず当時の時代背景をベースにして生まれてきます。
私は僧侶として仏教、宗教を学ぶ時に「宗教は宗教だけにあらず」という考え方を大切にしています。そしてこの伝記シリーズを読んで改めて「音楽も音楽だけにあらず」ということを感じさせられたのでした。
この伝記はドヴォルジャークの桁違いの生涯を知るだけではなく、当時の時代背景も知ることができるので非常におすすめです。
(※この伝記に関してはひのまどかさんではなく、黒沼ユリ子さんが執筆しています)
黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』チェコの大作曲家の生涯を知るのにおすすめ!
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ドヴォルジャーク: わが祖国チェコの大地よ (作曲家の物語シリーズ 4)
『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』
いつもお世話になっているこの動画ですが、やはり面白い!ヨハン・シュトラウスの生涯や代表曲がこの動画でわかりやすく紹介されていますのでぜひご覧ください。
そしてこの伝記を読んで驚いたのはウィーンのワルツ熱でした。
ウィーンの人々は毎晩ダンス会場に出かけワルツを明け方まで踊っていたそうです。
しかもこの伝記によると当時のワルツは私達がイメージするようなお上品で優雅なダンスではなくかなり激しいものだったそうです。もはやスポーツレベルとのこと。かなりの速度で回転しながら踊っていたそうです。
一体どんな雰囲気で踊っていたのか、私も気になりYoutubeで探してみたところ興味深い動画を見つけました。それがこちらです。
これはなかなかの衝撃です。思わず少し笑ってしまいました。かなり激しいです。きっと当時もこんな感じか、あるいはもっと激しく踊っていたのでしょう。しかもそれを毎晩明け方まで!恐るべき体力です!
そしてそれの伴奏を毎日し続けていたヨハン・シュトラウスをはじめとした楽団たちの過酷な労働実態。それもこの伝記を読んで非常に興味深く感じたものでした。
こういう文化があったからこそあの有名な「会議は踊る、されど進まず」という名言が生まれてきたのだなとつくづく感じました。1814年にナポレオン戦争が終結し、その講和会議であるウィーン会議を揶揄したこの言葉ですが、これは思わず「う~ん、なんとうまいこと言ったものか」と唸ってしまいました。
この伝記はそんなワルツ王ヨハン・シュトラウスの波乱万丈の生涯を楽しく学べる素晴らしい伝記です。当時のウィーンの様子が目の前に現れてくるようでとても読みやすいです。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
ウィーンのワルツ王のおすすめ伝記!ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』
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ヨハン・シュトラウス: ワルツ王の喜びと悲しみ (作曲家の物語シリーズ 14)
『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』
ハイドンといえば名前は聞いたことはあったのですが実際にどんな人だったのかは全く知りませんでした。
ですがモーツァルトの伝記でこのハイドンが出てきたことから私はこの人物に興味が湧いてきたのでありました。
この伝記はハイドンの子供時代から始まります。そしてそこに出てきたのがウィーンの象徴ステファン大聖堂でした。
そこは2019年に私も訪れており、その巨大さに圧倒されたのを今でも覚えています。
地方から連れてこられたハイドンはこの教会で合唱隊のひとりとして生活し、音楽人生が始まっていったのでありました。
ハイドンが活躍したのは18世紀中頃から19世紀初頭にかけての時期です。ベートーヴェンやモーツァルトに先駆けて音楽界をリードしていたのがこのハイドンです。
この伝記を読めば当時の音楽家が置かれていた境遇を知ることができます。この本のタイトルにもある「使い捨て作品」という意味も見えてきます。
そしてやはり感動的なのは天才モーツァルトとの心温まる交流です。
真の天才同士がわかり合い、互いを認め合うその瞬間はやはり胸にきます。これはこの伝記の名シーン中の名シーンでした。
また、ハイドンの命を縮めることになったナポレオンの存在も興味深かったです。ナポレオンによるウィーン侵攻の様子もこの本では目の当たりにすることになります。
ナポレオンとハイドンの繋がりも非常に興味深かったです。
この伝記も非常に面白い作品でした。ぜひぜひおすすめしたい伝記です。
ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』モーツァルトも憧れた天才音楽家のおすすめ伝記
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ハイドン: 使い捨て作品と芸術作品 (作曲家の物語シリーズ 13)
『ワーグナー―バイロイトの長い坂道』
ワーグナーは1800年代中頃から後半にかけて活躍した音楽家です。
ワーグナーで有名な曲といえば何と言ってもこちらです。聴けば絶対わかります。
ワーグナーらしさが前面に出ているのがこの『ヴァルキューレの騎行』という曲です。
映画『地獄の黙示録』で用いられ、他にも様々な場面で耳にする曲だと思います。
ワーグナーの参考書は以前当ブログでも「樋口裕一『ヴァーグナー 西洋近代の黄昏』ワーグナーの特徴を知るためのおすすめ参考書!」の記事で紹介しましたが、『ヴァーグナー 西洋近代の黄昏』は彼の思想的な面がメインとなっていますので生涯を学ぶとなれば今回ご紹介するひのまどか著の『ワーグナー―バイロイトの長い坂道』がおすすめです。
この作品もこれまで紹介してきたひのまどかさんの「作曲家の物語シリーズ」と同じくものすごく面白いです。ドラマチックで、しかも感動的。
この本を読めば現地に行きたくなります。著者は現地まで取材をし、現地の様子もこの本で紹介してくれます。それがまたいいんですよね。この「作曲家の物語シリーズ」は全巻にわたりこうして現地の様子を伝えてくれます。旅行記を読んでいるような楽しみがあります。これは本当に素晴らしい試みだと思います。
ワーグナーの入門書として非常におすすめな作品です。
ひのまどか『ワーグナー―バイロイトの長い坂道』ワーグナーの生涯を知るのにおすすめの伝記!
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ワーグナー バイロイトへの長い坂道: バイロイトの長い坂道 (作曲家の物語シリーズ 6)
『ショパン―わが心のポーランド』
ショパンといえば最近も国際ショパンコンクールが話題になりましたよね。
ショパンがポーランドの有名なピアニストということは知っていましたが、正直いざこの方がどんな生涯を送ったのかということはほとんど知りませんでした。
この伝記はそんなショパンの生涯や人となりを知る上で最高の1冊です。読んでいて驚くような事実がたくさん出てきます。
そしてこの伝記を読んで驚いたのはショパンの人生もさることながら、その恋人ジョルジュ・サンドの存在でした。
ジョルジュ・サンドはフランスの作家です。これまで当ブログではドストエフスキーと世界文学をテーマに更新を続けてきましたが、まさにこのジョルジュ・サンドも何度もご紹介してきました。
上の記事のタイトルにもありますように、ドストエフスキーはジョルジュ・サンドの作品に強い影響を受けていました。その中でもこの『スピリディオン』という作品が書かれたのがまさしくサンドとショパンが1838年にスペインのマヨルカ島の修道院に滞在していた時だというのですから驚きです。
サンドとショパン、二人の芸術家の奇妙な関係は読んでいてとても刺激的でした。
ショパンの生涯を知るのにおすすめの伝記!ひのまどか『ショパン―わが心のポーランド』
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ショパン: わが心のポーランド (作曲家の物語シリーズ 18)
『ヴェルディ―「太陽のアリア」』
ヴェルディといえば何と言っても『アイーダ』です。
この伝記を読んで驚いたのはヴェルディの堅実な生き方や、生き様、死に様でした。
これまで様々な作曲家の人生をこの伝記シリーズで見てきたのですが、ほとんどどのお方も尋常ではない波乱万丈ぶりでした。しかも天才らしい破天荒、狂気の方達ばかりでした。
そんな中でも穏やかな生活を愛し、倹約しうまく資産を蓄え、最後には慈善事業のためにそのお金を使おうとするヴェルディ。
ほとんどの作曲家が悲惨な晩年や苦しい人生を過ごしていた中で、ヴェルディは驚くほど充実した人生を生きた人だったということに私は驚きました。
もちろん、ヴェルディにも苦しいことはあります。
ですが他の天才たちと比べると彼の人生は全く違った趣があるのです。
この伝記シリーズを読んできて私も感覚が狂ってきたのでしょうか、順風満帆に事が進んで行くと逆に不安になってくるのです。ヴェルディのこの伝記を読んでいると、「大丈夫かなヴェルディ・・・このあと何かとんでもないことが起きてしまうんじゃないかな」とひやひやしながら読み進めてしまうのでした。
ですが、そういうこともなく彼は最晩年まで音楽を愛し、創作熱意も衰えることもなく作曲に打ち込むのでした。そして慈善活動にも勤しみ、世界中の人から敬愛されその生涯を終えていくのでありました。
大音楽家の多くは理不尽な目に遭ったり、自分の破天荒さから生活を壊してしまったりして生前はなかなか報われない人生が多いというのはこれまで見てきたとおりです。そして死後しばらく経ってからどんどん評価が上がっていく、これまでそんなパターンを見てきた私にとってこのヴェルディは驚きの存在でした。
「こういう形もあるんだな」と新たな発見をすることができた伝記でした。
アイーダの作曲者ヴェルディのおすすめ伝記!ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』
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『バーンスタイン―愛を分かちあおう』
今作の主人公は『ウエストサイド物語』で有名なアメリカの作曲家バーンスタインです。
『ウエストサイド物語』といえば日本でも劇団四季が公演しています。
バーンスタインは作曲家、ピアニスト、指揮者、教育者と多方面で活躍したユダヤ系アメリカ人です。
特に、指揮者としての天才ぶりはこの伝記でもとても強調されていました。
こちらは短い動画ですが、バーンスタインの指揮ぶりの一端を観ることができます。コンサート本番の姿もものすごいものがありますが、こうした練習時点での姿も印象的でした。彼のカリスマ、オーケストラを導いていく力が伝わってきます。
恥ずかしながら私はこの伝記を読むまでバーンスタインのことを何も知りませんでした。ですがこの伝記を読み、いかにバーンスタインが巨大な人物であるかに驚くことになりました。指揮者として超一流、作曲家としても、演奏家としても、教育者としても超一流。テレビの教養番組まで手掛けそれも大絶賛の嵐。
恐るべき才能です。(もちろん、その陰には信じられないような集中力を発揮して練習や勉強に打ち込む彼あってのことですが)
そして何よりも、彼の驚異のバイタリティー!常人では確実に倒れてしまうような殺人的なスケジュールをずっとこなし続けるエネルギーに私は度肝を抜かれました。体力もなくすぐ疲れて動けなくなってしまう私からするとあまりにうらやましい肉体、精神の強靭さでした。
この伝記では栄誉の絶頂にあるバーンスタインの苦悩も知ることになります。傍から見れば「こんな大成功の人生なのに何を不満に思うのか」と思ってしまうかもしれませんが、人間はやはりそう単純なものではないということを考えさせられます。
いかに名誉があろうと、経済的に成功しようと、人は誰しもが苦しみを抱えているということをこの伝記では見ていくことにもなります。人間の華やかな面だけでなく、その人が抱える苦悩にまで目を向けるひのまどかさんの伝記はやはり素晴らしいです。読み応え抜群です。
アメリカの偉人バーンスタインの生涯を学ぶことができる素晴らしい逸品でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
ウエストサイド物語の作曲者バーンスタインのおすすめ伝記!ひのまどか『バーンスタイン―愛を分かちあおう』
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バーンスタイン: 愛を分かちあおう (作曲家の物語シリーズ 16)
『音楽家の伝記 はじめに読む1冊 バルトーク』※旧『バルトーク―歌のなる木と亡命の日々』
バルトークはハンガリーやルーマニアなどの伝統的な民謡の研究者としても活躍し、そこから得たインスピレーションによって多くの名曲を生み出しました。
バルトークはハンガリー人として自分たちの音楽とは何なのか、そのルーツとは何なのかを生涯探究し続けました。
当時のハンガリーは事実上オーストリアの支配下にあり、音楽の世界においても進んだヨーロッパの文化を追いかけるだけの状況になっていました。
だからこそバルトークは奮起し、その突破口を地方の伝統的な民謡の研究に見出したのでした。
しかし、ナチスが台頭しハンガリーも同盟を組んだことによってバルトークはこの国での音楽活動が不可能になってしまいます。そこから彼は亡くなるまでずっとニューヨークでの亡命生活を余儀なくされることになってしまったのでした。
この伝記では19世紀末から第二次世界大戦終結までのハンガリー事情を知ることができます。ハンガリーが当時どのような状況に置かれていたのか、そしてナチスとの関係もこの本で語られます。
困難の中でも音楽と向き合い続けたバルトークの生涯を通してハンガリーの歴史も学べる素晴らしい伝記です。
ハンガリーの大作曲家バルトークのおすすめ伝記!ひのまどか『バルトーク―歌のなる木と亡命の日々』
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音楽家の伝記 はじめに読む1冊 バルトーク (音楽家の伝記はじめに読む1冊)
『ビゼー―劇場に命をかけた男』
この作品の主人公は『カルメン』の作曲者ビゼーです。
恥ずかしながら私は『カルメン』を観たことがなかったので、この映像を観てはじめてこれが『カルメン』の曲なのかと驚きました。
ビゼーが生きた時代のパリは1848年のフランス二月革命と、ナポレオン三世フランス第二帝政の発足、普仏戦争、パリ・コミューンなどが勃発した激動の時代でした。
この時代のパリを描いたのがあのフランスの文豪エミール・ゾラです。私はゾラの小説が大好きで当ブログでもこれまで彼のことを紹介してきました。
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そんなゾラの描いたフランスと、今回読んだこの伝記は時代も場所も重なっていたので非常に興味深く読ませて頂きました。
他にもニーチェやモネ、ルノワール、ツルゲーネフなどなど、これまで私が学んできた偉人がこの本に出てきました。これには驚きました。
この伝記を読んで、私がこれまで学んできた文学、芸術、歴史が繋がったのを感じました。繋がる瞬間ってやはりビビッと来ますよね。これがあるから読書はやめられません。私にとって、「あぁ!そうだったのか!」という発見は読書の最大の喜びのひとつです。この本も刺激に満ちた最高に面白い作品でした。
カルメンの作曲家ビゼーの生涯を知るのにおすすめ伝記!ひのまどか『ビゼー―劇場に命をかけた男』
『チャイコフスキー―「クリンへ帰る旅人」』
チャイコフスキーといえば『白鳥の湖』や『眠りの森の美女』、『くるみ割り人形』などのバレエ音楽の作曲家として有名ですよね。
この伝記を読んで驚いたのですが、チャイコフスキーが作曲するまではロシアのバレエはとても芸術と呼べるようなものではなかったということでした。今となってはロシアのバレエといえば芸術の王道というイメージがありますが、その始まりこそこのチャイコフスキーだったということにはとても驚きました。
単なる娯楽として低く見られていたバレエを芸術の域まで高めていくその過程は非常に興味深かったです。
「ヨーロッパに誇れる自分たちの文化を作り上げる」
この熱意はやはり胸にくるものがあります。私達日本人にもそうした心がきっと今でもあるのではないでしょうか。
チャイコフスキーの音楽をもっと聴いてみたくなりました。
この伝記も非常におすすめです。
チャイコフスキーの生涯を知るのにおすすめの伝記!ひのまどか『チャイコフスキー―「クリンへ帰る旅人」』
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音楽家の伝記 はじめに読む1冊 チャイコフスキー (音楽家の伝記はじめに読む1冊)
『ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ 嵐の時代をのりこえた「力強い仲間」』
さて、今作の主人公はロシアの音楽家ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ です。これまでの伝記と違い複数人が物語の中心に据えられたのには理由があります。
日本ではロシアの「五人組」として有名な彼らですが、正確には「力強い仲間」という名称で、19世紀のロシア音楽の発展に力を尽くした音楽家たちの物語をこの伝記では見ていくことになります。
ムソルグスキーの代表曲には『展覧会の絵』があります。恥ずかしながらこの本を読むまでムソルグスキーも『展覧会の絵』も全く知らなかったのですが、上の動画で聴いて一発でわかりました。この曲はムソルグスキーの作曲だったのかとものすごく驚きました。
この伝記では19世紀中頃から後半にかけてのロシアの音楽事情を知ることができます。あのチャイコフスキーも同時代人です。
そしてこの本で一番驚いたのは、実は著者によるあとがきでした。そのあとがきをここで紹介します。
私は中学・高校の頃、トルストイ、ドストエフスキー、チェーホフ、ゴーゴリなどのロシア文学を読みあさっていた。
ロシア文学は総じて楽しいとかおもしろいとかいうのではなく、重苦しく、民衆の生活が真剣に描かれており「カラマーゾフの兄弟」などは衝撃が強すぎて、幾度も読むのを中断したおぼえがある。
それでも作家たちの独特の文体や、それらを通してロシア社会のさまざまな面を知ることはこたえられないおもしろさで、読後の印象もフランスやイギリス文学よりずっと強く長く残った。
リブリオ出版、ひのまどか著『ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ 嵐の時代をのりこえた「力強い仲間」』 P232
この箇所を読んで私は思わず「うわっ!!」と声を上げてしまいました!
そういうことだったのかと!
私はひのまどかさんの本を初めて読んだ瞬間からその語り口の大ファンになってしまい、こうして伝記シリーズを読んできました。そしてその思いは読めば読むほど強まるばかりでした。
「なぜ私はこんなにもひのまどかさんの語りに引き込まれるのだろう」
その答えがこの箇所にあったのです。そうかと!ひのまどかさんは中学高校の時からロシア文学に親しんでいた文学人だったというのです!これを知って私はたまらなく嬉しくなりました!私もドストエフスキーをはじめ、ロシア文学が大好きです。憧れのひのまどかさんがこうしてロシア文学を愛していたというのは私にとって驚きでありましたが、同時にストンと腑に落ちるものもありました。やはり文体、語り口にはそうしたものが現れるのかもしれません。私はそうしたものに惹かれてひのまどかさんの語りに惚れ込んだのかもしれません。
このあとがきには本当に驚かされましたし、心から嬉しくなりました。
19世紀ロシア音楽界を知るのにおすすめ!ひのまどか『ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ 嵐の時代をのりこえた「力強い仲間」』
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ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ: 嵐の時代をのりこえた力強い仲間 (作曲家の物語シリーズ 11)
『プロコフィエフ―音楽は誰のために?』
プロコフィエフという名を私はこの伝記を読んで初めて知りました。ですが、彼の代表曲『ロメオとジュリエット』を聴いた時私は驚いてしまいました。誰しもが聴いたことがあるこの曲こそ、プロコフィエフの作だったのです。
チャイコフスキーやショスタコーヴィチに比べると日本では知名度は低いかもしれませんが、プロコフィエフは20世紀を代表する作曲家として知られています。
プロコフィエフはロシア帝政末期のロシアに生まれ、その後第一次世界大戦、ロシア革命によるソ連の成立、第二次世界大戦、冷戦のはじまりという激動のロシアを生き抜いた作曲家です。
ソ連抑圧時代を音楽家の視点から描き出したひのまどかさんの筆には驚くしかありません。ただ単に歴史的な事実を並べるだけではなく、物語として鮮明にその過酷な人生が語られています。人物と共に時代背景まで知ることができる「伝記の利点」がこれ以上ないというほど輝いています。
この伝記も非常におすすめです。 私個人にとっても、これまで学んできたことと音楽の世界が繋がった貴重な読書になりました。 読めば読むほど世界が広がる。それがひのまどかさんの伝記シリーズの素晴らしいところだと思います。 ぜひぜひおすすめしたい作品です。
ソ連の天才音楽家の苦悩と生涯を知るのにおすすめの伝記!ひのまどか『プロコフィエフ―音楽は誰のために?』
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プロコフィエフ: 音楽はだれのために (作曲家の物語シリーズ 15)
『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』
シベリウスはフィンランドを代表する大作曲家です。
シベリウスは1865年から1957年まで生きておられたということでかなりご長寿な作曲家でした。これまで紹介してきた作曲家の多くが若くして亡くなったり、60歳頃に急に体調を崩し亡くなってしまうケースが多かったのでこれだけ長生きできたというのは珍しく感じてしまいました。
そして1865年から1957年までの時代を生きたということは第一次世界大戦と第二次世界大戦を経験したということでもあります。
シベリウスはフィンランドの作曲家であり、上の動画の『フィンランディア』も祖国を思い書かれたものです。
フィンランドは1809年まではスウェーデンの支配下にあり、その後はロシアの支配下となっていました。ロシア革命によってソ連が成立した後も、何度も大規模な攻撃を受け激しい戦闘に巻き込まれることになりました。
この伝記はそんな大国に脅かされ続けたフィンランドの歴史も学ぶことができます。シベリウスはそんな苦難の歴史を辿ったフィンランドと共に生き、フィンランドの音楽を追求した人物でした。
フィンランドの名作曲シベリウスのおすすめ伝記!ひのまどか『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』
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シベリウス: アイノラ荘の音楽大使 (作曲家の物語シリーズ 12)
『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』
このシリーズと出会ったきっかけはこの記事の一番最初に述べましたようにスメタナでした。その伝記があまりに面白くこのシリーズをひたすら読んできたわけですが、正直、一番好きになったとも言える人物がこのメンデルスゾーンでした。
メンデルゾーンの生まれ育った環境、そしてその生き様。そのどれもが心に刺さるものでした。
もちろん私はスメタナも大好きです。スメタナとメンデルスゾーンが私の特に好きな作曲家です。
こうして考えてみると、ベートーヴェンやモーツァルト、ワーグナーなど破天荒で狂気すら感じられる天才よりも、天才でありながらも真面目でこつこつ仕事を続けるスメタナやメンデルゾーンのようなタイプが私の好みであることをこのシリーズからも感じさせられました(笑)
もちろん、偉大なる天才の狂気も、芸術作品として受け止め鑑賞するには最高です。私も大好きです。ですが一人の人間として憧れだったり尊敬、好意の念を持てるかというとまた違ってきますよね。
そういう意味でスメタナとメンデルゾーンは私にとって尊敬する偉人となったのでありました。
メンデルスゾーンで有名なのは、あのシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を題材にして作られた『真夏の夜の夢』です。その中でも以下の曲はものすごく有名です。
結婚式といえばこの曲ですが、まさかこの曲を作ったのがメンデルスゾーンだったとは!これには驚きました。
そして下の動画も聴き惚れてしまうほど素晴らしい演奏です。解説もついているのでぜひご視聴ください。こちらはメンデルスゾーンの代表曲『バイオリン協奏曲ホ短調』です。
メンデルスゾーンは幼い頃より神童ぶりを発揮していました。そして家柄もよく、その文化水準の高さによってメンデルスゾーン家のサロンには錚々たる顔ぶれがそこに集まっていました。ベルリン大学を創立した言語学者フンボルトや哲学者のヘーゲル、ガンス、グリム童話で有名なグリム兄弟、作家のホフマンなど当時の最高レベルの知識人が集う中でメンデルスゾーンは育っています。これを知った時は思わず驚きで声を上げてしまいました。
すべて繋がっているんだと。
後に歴史を残す偉人たちは必ずどこかで繋がり合っている。でも、さすがにこれは繋がり過ぎだろうと!しかも後にはあのゲーテとも固い友情で結ばれるというのです。これにはさすがに呆然としてしまいました。
世界最高峰の偉人たちは19世紀にこうも絡み合って生きていたのかと、この伝記を読んで圧倒されてしまいました。
本当に面白い!この伝記はそんなあまりにドラマチックなメンデルスゾーンの生涯をひのまどかさん流の最高の語り口で堪能することができます。もうこれは読んで下さい!絶対に後悔しません!最高の読書体験になること請け合いです!
ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』死後、ナチスに抹殺された天才ユダヤ人作曲家のおすすめ伝記
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メンデルスゾーン: 美しくも厳しき人生 (作曲家の物語シリーズ 20)
etc)『戦火のシンフォニー レニングラード封鎖345日目の真実』
こちらは「作曲家の物語シリーズ」ではありませんが、ぜひ紹介したいひのまどかさんの作品です。
ここまでひのまどかさんの伝記シリーズを読んでいてまさに感じたのは、「音楽は文学と同じく社会を映す鏡であり、どの曲もそれを生み出した時代、歴史、風土、作曲家の生き方と切り離せない」ということでした。
私はこれまで文学や歴史を中心に19世紀ヨーロッパを見てきましたが、このシリーズをきっかけに音楽という視点からもこの時代を見ていくことになりました。
すると、今まで見えてこなかった世界がどんどん開けてくるのが強く感じられるようになりました。
世界は繋がっている。あらゆるものが相互に絡み合ってこの複雑な世界が出来上がっているということを改めて学ぶことになりました。
この本でも20世紀最大の戦争となった独ソ戦を音楽という側面から見ていくことになります。しかもひのまどかさんが述べるように、通常注目されることのないオーケストラのひとりひとりの奮闘をこの本では詳しく追っていくことになります。
どれほど困難な状況で彼らが生き抜き、音楽に身を捧げたのか。
そして戦時中という極限状況で音楽はどんな意味を持つのか。銃や爆弾を前にして芸術ははたして力を持つのか。
この本は当時の緊迫した状況を学べる素晴らしい1冊です。
ぜひぜひおすすめしたい1冊です。
ひのまどか『戦火のシンフォニー レニングラード封鎖345日目の真実』独ソ戦の極限状況と芸術の力
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etc)『音楽家の伝記 はじめに読む一冊 小泉文夫』
待望のひのまどかさんの新作。
私もわくわくして待ち望んでいたのですが、やはりひのまどかさんの伝記は最高です。
読み始めてすぐにひのまどかさんの絶妙な語り口に魅せられてしまいました。
魅力あふれる主人公小泉文夫さん、そしてそんな彼が世界中を股に掛けて繰り広げる音楽探究の冒険。彼が目にした世界や時代背景、文化、音楽の面白さがまるで映画を観ているかのように目の前に現れてきます。
今作で特に印象に残ったのは小泉文夫さんが音楽研究のために留学したインドでのお話でした。
私は僧侶ということでやはりインドにはかなり興味があります。ですがまだ行ったことはなく、コロナ禍が収まればできるだけ早く訪れたいなと思っていました。
そんなインドでひたすら音楽研究に励む小泉文夫さんの姿にはやはり心打たれるものがありました。
そして広い視野を持ち、世界各国の様々な音楽、文化を学ぶ尋常ではない探究心。そしてそれをわかりやすく、楽しく伝える教育者としての能力。
こんなにすごい人が日本にいたんだととにかく驚きました。
恥ずかしながら私はこの作品を読むまで小泉文夫さんについてはほとんど知りませんでした。ですがこの本を読み、小泉文夫さんがいかに日本の音楽に大きな影響を与えたのかがよくわかりました。もし小泉さんがいなければ日本の音楽をめぐる環境は全く違うものになっていたかもしれません。人間にとって音楽とは何なのか、音楽の楽しさ、素晴らしさはどこにあるのかを探究し、それを音楽となかなか接する機会のない方にもわかりやすく伝えた小泉文夫さんの功績は計り知れないものがあると思います。
これまでひのまどかさんは『作曲家の物語シリーズ』を執筆されていましたが、ここであえて作曲家ではなく「音楽家」である小泉文夫さんを主人公に作品を書かれたというのは非常に大きな意味があったのではないかと思ってしまいました。
ひのまどかさんの新作『音楽家の伝記 はじめに読む一冊 小泉文夫』、素晴らしいの一言です!最高です!
子供の教育だけでなく、大人が読んでも感動間違いなしの名著です。
ひのまどか『音楽家の伝記 はじめに読む一冊 小泉文夫』日本の音楽に絶大な影響を与えた民族音楽研究家の驚異の生涯
etc)上原彩子『指先から、世界とつながる ピアノと私、これまでの歩み』
この作品は日本人で初めてチャイコフスキー・コンクールで優勝した上原彩子さんの自伝的エッセイになります。
私がこの本を読んだきっかけはこの本の取材・構成を担当しているひのまどかさんがきっかけでした。
この本では上原彩子さんの幼少期から現在に至るまでのピアノ人生を知ることができます。
幼い頃からの猛烈な練習と素晴らしい先生たちとの出会い、そして周囲も驚く決断の数々。
この本の帯で「そんな人生もおもしろいんじゃない?」と書かれていましたがまさにその通り。
読んでいてびっくりするような上原さんの人生がこの本では語られます。
音楽大学へ通わずして国際コンクールで優勝した上原さん。その秘密は何だったのか。
子供時代のヤマハでのレッスンや海外での経験は非常に興味深かったです。
そしてYoutubeで上原さんのチャイコフスキー・コンクール優勝時の演奏の映像がありましたのでここに紹介します。
この本はとにかく刺激的で面白いです。演奏者の人生や思いを知った上で曲を聴けるというのは非常にありがたい経験になると思います。
『指先から、世界とつながる ピアノと私、これまでの歩み』、ぜひぜひおすすめしたい作品です。
おわりに~「伝記のすばらしさ」とは
私はこれまで「親鸞とドストエフスキー」というテーマでヨーロッパの歴史、文化、文学を学んできました。そしてそこに音楽という視点が加わったことで新たな世界を見ることができたように感じます。また何より、世界のあらゆるものは繋がっているんだということを感じることができたのが大きかったように思えます。
それぞれの本紹介の中でもお話ししてきましたが、これまで学んできた文学、歴史などと音楽が繋がった時の衝撃、喜びは言葉で言い尽くせないほどでした。頭の中でピカっとくるものがそこにはありました。こうした読書体験ができる本は非常に貴重です。
このシリーズは児童書として書かれたものですが、どんな世代の方にも響く作品だと思います。
逆に言えば、大人でも感動する本を子ども時代に読めるというのはどれだけ大きな体験となることでしょう。
読んで頂ければわかりますが、このシリーズは決して子供向け感満載に書かれた本ではありません。言葉遣いも「ひとりの人間」に対し、本気で語りかけてくるような雰囲気です。児童書だからといって決して子ども扱いをしません。
中学高校生くらいの子たちにはぜひ読んで頂きたいなと思います。きっと音楽が好きになると思います。
そしてそれだけではありません、このシリーズを読んでいて強く感じたのは「伝記のすばらしさ」です。
伝記にはある時代、社会におけるその人の生き様、死に様がリアルに描かれます。
偉人達の生き様、死に様を通して学べることは私たちが想像するよりはるかに多いと私は確信しました。
偉人達が置かれた状況は困難に満ち、波乱万丈な出来事がこれでもかと続きます。
天才であるが故に自ら破滅へと突き進んだり、あるいは逆境でもこつこつこつこつ努力を惜しまず、苦労を経て成功を掴むということもあります。
そして突然の病や大切な人の死にもぶつかります。
18世紀、19世紀頃の伝記を読んで気付くのはとにかく病や死が多いということです。大切な我が子を何人も失った作曲家たちの苦しみにも私たちは直面することになります。
そうした桁違いのスケールを持つ偉人達の人生を、栄光と苦悩のどちらも目の当たりにしながら学べること。
そしてそれと共に彼らが生きた時代背景、歴史を学ぶことで私たちが生きる現代世界とは何なのかということも考えられること。
これが伝記の素晴らしい点なのではないかと思います。
たくさんの知識を頭に入れることも大切です。それは間違いありません。
ですが「偉人の生き様、死に様」から、
「じゃあ、私達が生きるというのはどういうことなのだろうか」
「私の生き様って何なのだろう」
「私の死に様はどうなるのだろう」
「どんな生き様、どんな死に様を私はしたいのだろう」
「偉人たちが生きていた時代はああだったけれど、今の時代は一体どうなんだろう。もし未来の人達が私達の世界を見たらどう思うのだろう」
などなど、じっくりと考えることも大切なのではないでしょうか。
そのことを教えてくれるのが伝記なのではないかと思います。
偉人達の歓び、悲しみ、苦悩すべてを見ることができるのが伝記です。
ぜひ偉人達の「生き様」「死に様」を目の当たりにし、そこから皆さんも何かを感じて頂けたらなと思います。
そしてその最上級の伝記として私はひのまどかさんの「伝記シリーズ」をおすすめします!
そしてぜひ全巻読んでみて下さい。読めば読むほど味わいが増してきます。様々な作曲家の人生がどんどんクロスしていき、18世紀以降の世界がどんどん見えてくるようになってきます。
こんな読書体験は滅多にありません。これは断言します。
「気に入った作家さんの本は全部読むべし」というのはあの小林秀雄も述べていました。
私も以前そうしてドストエフスキー沼にはまっていったのですが、多くの作品を読むことで見えてくるものは確実にあります。ひのまどかさんの「伝記シリーズ」もまさしくそういう作品たちであることを確信しています。
ぜひぜひひのまどかさんの「伝記シリーズ」を読んで頂けたらなと思います。読めばわかります。本当に素晴らしい作品です。強く強くおすすめします。
以上、「クラシック入門のおすすめ本!ひのまどか「作曲家の物語シリーズ」20作品一覧~時代背景と文化も学べる奇跡の伝記シリーズ!」でした。
※ただ、残念なのは出版社の関係で「作曲家の物語シリーズ」が絶版になってしまい、これらを読むには中古品を購入するか図書館を利用するしかありません。私も図書館を利用してこのシリーズを読みました。
ですが現在ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスより「音楽家の伝記 はじめに読む1冊」シリーズとして増補再出版されています。
2021年12月段階でベートーヴェン、ショパン、シューベルト、バッハ、チャイコフスキーが出版されています。
今後再出版がどうなっていくのかも注目です。
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