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上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』あらすじと感想~日本文化や大乗仏教とのつながりも知れる名著!

バガヴァッド・ギーターの世界
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上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』概要と感想~日本文化や大乗仏教とのつながりも知れる名著!

今回ご紹介するのは2007年に筑摩書房より発行された上村勝彦著『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』です。

早速この本について見ていきましょう。

古代インドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中の一編で、同族同士が戦うことに深く悩み、戦意を喪失している勇士アルジュナへ、御者を務めていた賢者クリシュナ(実は最高神の化身)が、彼を鼓舞するために説いた教えが、バガヴァッド・ギーター(神の歌)である。人間存在のむなしさを描き、現世の義務をはたしつつ解脱に達する道を説く信仰の書をわかりやすく解き明かす。さらに帝釈天、弁才天、大黒天、毘沙門天、鬼子母神などのルーツを解説し、宗派を超えて愛誦されてきた最高聖典が、仏教や日本の宗教文化、日本人のものの考え方に与えた影響を明らかにする労作。

Amazon商品紹介ページより
馬車に乗ったアルジュナと親友のクリシュナ(青い人物)Wikipediaより

この作品はインドの大叙事詩『マハーバーラタ』の中で書かれるインド最高峰の思想書『バガヴァッド・ギーター』の解説書になります。

上の商品紹介にも書かれていましたように、著者はこの『バガヴァッド・ギーター』に日本の文化や大乗仏教とのつながりを指摘します。

本書の冒頭ではインドラ(帝釈天)、ヤマ(閻魔)、サラスヴァティー(弁財天)、ブラフマー(梵天)など、インドの神々が日本文化にいかに浸透しているかが語られます。そしてその直後に次のように述べます。仏教や日本の文化を学ぶ上でも極めて重要なポイントですのでじっくり読んでいきます。

以上のように、日本人がいかに日常的にヒンドゥー教の神々を拝んできたか、また現在も拝んでいるか、ということがおわかりになったと思います。我々はヒンドゥー教の神々に固まれて生活しております。

ところが、我々は単にヒンドゥー教の神々を拝んでいるだけではありません。実はヒンドゥー教の有力な考え方が仏教を通じて日本に入り、日本の宗教や文化に多大な影響を与えたのです。そんなことはないと思われるかもしれませんが、しかし、日本人はヒンドゥー教の最も良質の部分を、仏教を通じて受け入れたと筆者は考えます。日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。そのことを示すことが、本書の目的の一つでもあります。

本書で取り上げる『バガヴァッド・ギーター』は、ヒンドゥー教の代表的な聖典です。大ざっぱにいえぱ、この聖典に説かれたような思想が、ある時期に大乗仏教に影響を与えたと考えられます。それは、絶対者すなわち最高神がすべてに遍満し、個々のもののうちにも入り込んでいるという考え方です。言いかえれば、我々個々人のうちに神の性質があるということです。この考え方が、ある時期に、直接的間接的に大乗仏教に強い影響を与え、その結果生まれたのが如来像にょらいぞう思想であるということができます。すべての人に如来たる可能性がある、すべての人に仏性ぶっしょうがある、とする考え方です。それが仏教を通じて日本に入り、我々がそのまま仏である、真如であるとする、天台宗を中心とする本覚ほんがく思想へと展開し、日本の宗教文化、さらには日本人一般のものの考え方に大きな影響を与えたのです。例えば、「仏はつねにいませども、うつつならぬぞあわれなる」(『梁塵秘抄』)などの今様は、日本の中世社会に広まり、このような考え方は、やがて民衆の間に浸透しました。

以上のような仮説―といっても極めて確実性の高い仮説―を立てて、これから『バガヴァッド・ギーター』を読んで解説しながら、その妥当性を検討してみたいと思います。

筑摩書房、上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』P21-22

「日本人はいわば「隠れヒンドゥー教徒」であるといっても過言ではありません。そのことを示すことが、本書の目的の一つでもあります。」

衝撃的な言葉ですよね。

ですがこの本を読んでいると、この言葉があまりにリアルなものとして感じられてきます。日本の文化や大乗仏教とのつながりが非常にわかりやすく説かれます。

この本自体は『バガヴァッド・ギーター』という古代インドの思想の解説書ということでなかなか手が伸びにくい作品であるかもしれません。ですがそこは少し見方を切り替えてこの本を仏教書として見てみてはいかがでしょうか。

この本は古代インドやインド思想を知らなくても読めるような作りになっています。また同時に、仏教の入門書としても十分通用するほどわかりやすい作品になっています。これはものすごい名著です。

日本仏教を知る上でも新たな視点を得られる非常におすすめな作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界 ヒンドゥー教の救済』~日本文化や大乗仏教とのつながりも知れる名著!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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