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藤井毅『歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』あらすじと感想~カーストはイギリスの植民地政策によって固定化された?

歴史のなかのカースト
目次

藤井毅『歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』概要と感想~カーストはイギリスの植民地政策によって固定化された?

今回ご紹介するのは2003年に岩波書店より発行された藤井毅著『世界歴史選書 歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』です。

早速この本について見ていきましょう。

インド文明の本質と見なされる、カースト制度。しかしこの概念は、西洋近代によるインドの「発見」以後に構築されたものだ。西洋によって理論化されたカーストは、植民地支配と結びつくことで実体化し、インド社会の自己認識の再編をももたらした。そのプロセスを解き明かし、近代の植民地主義とアイデンティティ形成を根底的に問いなおす。

Amazon商品紹介ページより

この作品ではインドにおけるカースト制度がイギリスによる植民地政策によってより複雑化、固定化されたことを知ることができます。

私がこの本を手に取ったのは以前当ブログでも紹介した池亀彩著『インド残酷物語 世界一たくましい民』がきっかけでした。

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この本では現在でも続くカースト差別の悲惨な実態を知ることになりました。そしてこの本の中で紹介されていたのが本書『世界歴史選書 歴史の中のカースト 近代インドの〈自画像〉』だったのです。

インドにおけるカースト差別は古代インドからありました。しかし現代のカースト差別は必ずしも古代インドからそのまま続いてきたものではありません

そこにはインド独自の複雑な文化や民族性もさることながら、イギリスにおける植民地支配の影響があったのです。

このことについて本書表紙裏に次のような言葉が記されています。

カースト制度は、「悠久のインド文明」の本質をなすと見なされている。しかし、ポルトガル語を語源とするこの概念は、近代に形成されたものだ。

イギリスによる東インド会社の設立から、インド帝国の成立へ。ジョーンズによる〈印欧語族〉の発見から、マックス・ミュラーによる〈アーリヤ神話〉の構築へ……。西洋近代による「驚異と占有」のなかで記述され、理論化されたカースト概念は、植民地支配と結びつくことで実体化した。そしてさらに、インド社会の自己認識の成型と変容をももたらすことになるのである。

インドにとってカーストとは何か―それは、近代の植民地主義とアイデンティティ形成への、根底的な問いに他ならない。

岩波書店、藤井毅『世界歴史選書 歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』

インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。

たしかに古代インドにもカースト制はありました。そしてそのカースト制度に反対していたのが仏教やジャイナ教だったというのはこれまで当ブログでも見てきた通りです。

ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを利用したという、インド人側からの働きかけもあったことをこの本では知ることになります。

イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっている、そのことを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。

著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。

インドの複雑さを学ぶ上でもこの本は非常にありがたい作品となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「藤井毅『歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像〉』~カーストはイギリスの植民地政策によって固定化された?」でした。

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歴史のなかのカースト: 近代インドの〈自画像〉 (世界歴史選書)

歴史のなかのカースト: 近代インドの〈自画像〉 (世界歴史選書)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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