クラウス・ドッズ『新しい国境 新しい地政学』あらすじと感想~今世界で何が起きているのか、危機的な国際情勢を学ぶためのおすすめ参考書
クラウス・ドッズ『新しい国境 新しい地政学』概要と感想~今世界で何が起きているのか、危機的な国際情勢を学ぶためのおすすめ参考書
今回ご紹介するのは2021年に東洋経済新報社より発行されたクラウス・ドッズ著、町田敦夫訳『新しい国境 新しい地政学』です。
前回の記事では小泉悠著『「帝国」ロシアの地政学 「地政学で読むユーラシア戦略』をご紹介しましたが、この本がロシアに特化していたのに対し、世界全体で今何が起きているのか、これから何が起きうるのかを解説してくれるのがクラウス・ドッズ著『新しい国境 新しい地政学』になります。
では、早速この本について見ていきましょう。
イーロン・マスクが「月の大統領」就任を宣言したらどうなるのか。
「気候変動」による海や河川の変化は「境界線」を移動させるのか。
「スマートボーダー」は収益性の高い国境ビジネスを生み出すのか。
「新型コロナ」は「資源の争奪戦」を加速させるのか。
人新世で激化する「国境紛争」に地政学研究の第一人者が迫る。現代における国境の意味とは何か。
国境はどのように作られてきたのか。
市民と政府にとって国境の意味とは?
世界各地における従来型国境紛争から気候変動、南極、宇宙、サイバー空間、感染症をめぐる新しい国境紛争まで、世界中で想定される地政学的対立について、政治的な過去や外交面から見た未来を考察する。
日本についても、米中の地政学的対立が増す中で、対韓国、中国、ロシアの国境問題から、日本の防衛力強化と宇宙大国戦略についても触れられている。〈気候変動が焦眉の急となり、新型コロナウイルスのパンデミックが発生したこの新時代においては、国境閉鎖や戦争の可能性がますます高まっている。国家や地域社会が、「ウイルス性の他者」や「見えない敵」から自らを隔離しつつ、競争上の優位を得ることを望むからだ〉(「序章」より)
Amazon商品紹介ページより
目次
序 章 「人新世」で激化する国境紛争
東洋経済STORE商品紹介ページより
第1章 国境の問題
第2章 動く国境
第3章 水の国境
第4章 消えゆく国境
第5章 ノーマンズランド
第6章 承認されざる国境
第7章 スマートボーダー
第8章 宇宙空間
第9章 ウイルスの国境
終 章 迫りくる「国境紛争」の4つの類型
この本は上の目次にありますように、様々な観点から「国境」という問題について考えていきます。
私たち日本人は国土を海に囲まれているため、国境というものに関してイメージしにくいものがあるのが正直なところです。
ですが陸続きであったり、山ひとつ、川ひとつ隔てただけの国境線であった場合、国境という存在は想像を絶するほど重要なものとなってきます。
しかもこの本を読んで痛感するのは、その国境も自然環境の変化によっていとも簡単に移ろいゆくというものでした。
例えば、川の流れが変わってしまったらどうなるか。海岸線が海面上昇で消滅した場合、領海もなくなるのかなどなど、様々なケースがこの本で語られます。
また、自然環境のみならず、政治的、軍事的な問題による国境問題、さらにはテクノロジーの発展による問題や宇宙における覇権争いなどあらゆる面から今後起こりうる国際紛争の火種をこの本で学ぶことになります。
正直、読んでいて何度ため息が出たことか・・・恐怖といいますか、怒りといいますか、自分でもわからないのですがお腹の辺りがぐらぐらと煮え立つような、そんな暗い気持ちになりました・・・
今ウクライナ危機で世界はとてつもなく揺れていますが、世界はそもそもあまりに危険な状態にさらされていたことがこの本でわかります。いつどこで何が起きてもおかしくないような、そんなぎりぎりのバランスで世界は成り立っていたのだということを痛感します。
これまで私はソ連の歴史や独ソ戦、冷戦世界の歴史を学んできましたが、この本を読んで改めて世界の危機ということを再認識することになりました。
私たち日本人は平和を謳歌しているように感じていますが、そのイメージの背後にどれだけ世界の危機があるかを考えるとぞっとします・・・
この本ではそんなぞっとするような現実がひたすら語られます。正直、かなり怖いです。今世界で何が起きているのか、これから何が起こりうるのか、そうしたことを学ぶのにこの本は最適だと思います。ぜひおすすめしたい作品です。
以上、「クラウス・ドッズ『新しい国境 新しい地政学』今世界で何が起きているのか、危機的な国際情勢を学ぶためのおすすめ参考書」でした。
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