2021年4月

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

神野正史『世界史劇場 第二次世界大戦 熾烈なるヨーロッパ戦線』~WW2の流れを掴むのにおすすめな1冊

第二次世界大戦とは実際にどのような戦争だったのか。ナチスはどのように動いたのか。スターリン率いるソ連はそれにどのように対抗したのか。イギリス、フランス、アメリカは?

複雑怪奇な国際情勢をこの本では学べます。そして単に出来事の羅列ではなくなぜ歴史がそのように動いたのかという「なぜ」を神野氏は強調していきます。ここが『世界史劇場』シリーズの素晴らしいところだと思います。単なる暗記ではなく、「なぜ」を考える思考力を鍛えてくれるところにこの本の特徴があると私は思っております。非常におすすめな一冊です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』独ソ戦の入門書におすすめ!

この本は今とても売れているそうで、2020年新書大賞の1位を獲得しました。

この本では独ソ戦がなぜ始まったのか、そしてどのように進んで行ったかがわかりやすく解説されています。

そしてこの戦争における巨大な戦闘、モスクワ攻防戦、レニングラード包囲戦、スターリングラード攻囲戦についても解説していきます。独ソ戦の勝敗を決定づけるこれらの巨大な戦いとは一体どんなものだったのか。信じられないほどの犠牲者を出した圧倒的な戦いを私たちは知ることになります。

わかりやすく、そして読みやすい!そして新書サイズの本で巨大な独ソ戦がコンパクトにまとめられているのもありがたいです。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

私達日本人が今あえて独ソ戦を学ぶ意義ー歴史は形を変えて繰り返す・・・

戦争がいかに人間性を破壊するか。

いかにして加害者へと人間は変わっていくのか。

人々を戦争へと駆り立てていくシステムに組み込まれてしまえばもはや抗うことができないという恐怖。 平時の倫理観がまったく崩壊してしまう極限状態。

独ソ戦の凄まじい戦禍はそれらをまざまざと私たちに見せつけます。

もちろん太平洋戦争における人々の苦しみを軽視しているわけではありません。 ですが、あえて日本から離れた独ソ戦を学ぶことで戦争とは何かという問いをより客観的に学ぶことができます。だからこそ私はあえて独ソ戦を学ぶことの大切さを感じたのでした。

ドストエフスキー論

ジイド『ドストエフスキー』~ノーベル賞フランス人作家による刺激的なおすすめドストエフスキー論

『ソヴェト旅行記』と同じく新潮社版のジイド全集は旧字体で書かれているので一瞬面を食らうのですが、読み始めてみるととジイドの筆が素晴らしいのかとても読みやすいものとなっていました。

そして何より、ドストエフスキーに対する興味深い見解がいくつもあり、目から鱗と言いますか、思わず声が出てしまうほどの発見がいくつもありました。今まで疑問に思っていたことや、かゆいけど手が届かなかった微妙なところをとてもわかりやすく解説してくれます。

フランス人作家ということでバルザックなどフランス文学との対比によってドストエフスキーを語ってくれるのも非常にありがたかったです。

この本は本当にすごいです。出版は1923年ということで、ドストエフスキー論の古典として有名な本ですがその内容は全く古びていません。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

ジイド『ソヴェト旅行記』~フランス人ノーベル賞文学者が憧れのソ連の実態に気づいた瞬間

憧れのソ連を訪問し、どれほどこの国は素晴らしいのかと期待していたジイドでしたが、そこで彼は現実を知ってしまうことになります。その心情を綴ったのがこの『ソヴェト旅行記』という本になります。

ジイドの『ソヴェト旅行記』は非常に興味深い本でした。この記事ではその一部をご紹介していきますが、本当はもっともっと紹介したい箇所があります!それほど面白いです!

ぜひ皆さん自身で手に取ってみてください。ものすごく面白い本ですのでとてもおすすめです。

ドストエフスキーとも非常に関係の深い内容となっていますので、ドストエフスキーファンにもぜひおすすめしたい作品です。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

『共食いの島 スターリンの知られざるグラーグ』~人肉食が横行したソ連の悲惨な飢餓政策の実態

この本ではこうした人肉食が起こるほどの飢餓がなぜ起きたのか、なぜロシアがこれほどまでに無秩序な無法地帯になってしまったのかが語られます。
この本はかなりショッキングな内容の本ですが、大量殺人の現場で何が起きていたのか、モスクワとシベリアの官僚たちのやり取り、ずさんな計画を知ることができます。

そして何より絶望的な飢餓の状況で人間はどうなってしまうのかということ。

ロシアを知るだけではなく、人間の歴史を知る上でも非常に重要な示唆が詰まった本となっています。とてもおすすめです。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(9)時代が味方したスターリン~スターリンはスターリンのみにあらず

スターリンその人に才能があったことは確かですが、時代がそれを求めていなければ表舞台に上がることなく消えていくのが定めです。スターリンが登場したのはまさにスターリンがその力を発揮するのにもっとも適したタイミングだったのです。

革命の暴力的な状況はスターリンをロシアの巨大な指導者へと成長させていく場となりました。そのような状況があったからこそスターリンが生まれ、スターリンがいるからこそ暴力的な支配構造がどんどん確立していく相互作用が生まれたのでありました。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(8)ギャングの統領として圧倒的なカリスマを見せるスターリン~ジョージア裏社会のボスとしての姿とは

秘密警察に追われ、地下に潜伏した「ソソ」ことスターリン。

彼はその類まれなカリスマと指導力でいつしかギャングの統領のような立場になっていました。

スターリンはグルジアの武装組織を指導するまでになっていました。そして単に武装勢力を指導するだけでなく、地域の有力者たちとのつながりまで獲得します。ここまで来ると単に強いだけではなく、圧倒的なカリスマと交渉能力、世の中を読む力がないとできません。この時すでにスターリンは後の姿の片鱗を見せ始めていたのでありました。

レーニン・スターリン時代のソ連の歴史

(7)スターリンの故郷ゴリの驚くべき荒くれっぷりと読書家スターリンの誕生 

スターリンはグルジア(ジョージア)のゴリという街に生まれました。

このゴリという街がとにかく強烈です。その強烈っぷりはこの記事で詳しく見ていきますが、とてつもない荒くれものたちの巣窟だったのです。

そんな荒くれものの巣窟に育ったスターリンでありますが驚異の読書家ぶりを発揮しています。この時の読書がスターリンの生涯に大きな影響を与えることになりました。この記事ではそんなスターリンの読書についてもお話ししていきます。