2021年4月

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

『赤軍記者グロースマン 独ソ戦取材ノート1941-45』~ソ連のユダヤ人従軍記者が見た独ソ戦の現実

この本で何より印象的だったが、ナチスのホロコーストの現場を取材した部分です。ホロコーストというと、私たちはアウシュヴィッツを想像してしまいますが、トレブリーンカという絶滅収容所についてこの本では述べられています。そこでは80万人以上の人が殺害されています。その凄惨な殺害の手法は読んでいて寒気がするほどです。それを現地で取材したグロースマンはどれほど衝撃を受けたのか想像することもできません。

独ソ戦という世界の歴史上未曽有の絶滅戦争を最前線で取材した彼の記録は必見です。とてもおすすめな1冊です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

富田武『シベリア抑留』~ソ連による戦後の過酷な強制労働の歴史

シベリア抑留と言うと日本人がソ連によって悲惨な目に遭わされたというイメージが浮かんできますが、ソ連の政治体制、独ソ戦の影響が大きく関わっていたことをこの本では知ることができます。

また、本の途中でいくつかコラムが挟まれ、ここでシベリア抑留をより知るためにおすすめな本が紹介されます。過酷な体験を基にした小説や回想録が紹介され、シベリア抑留をもっと知りたい方にとってありがたい情報が満載です。

シベリア抑留の全体像を掴むのにとてもおすすめな一冊です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

S・D・ゴールドマン『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』~日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか。衝撃の名著!

まず先に言っておきます。この本はものすごいです。

ノモンハン事件という、私たちも名前だけは知っている歴史上の出来事が想像もつかないほど巨大な影響を世界に与えていたということがこの本で明らかにされています。

日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか、なぜ軍部が暴走し無謀な戦闘を繰り返したのかもこの本では分析されています。読むとかなりショックを受けると思います。私もこの本を読んでいて何度も「嘘でしょ・・・」と唖然としてしまいました。それほどショッキングな内容となっています。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

V・ザスラフスキー『カチンの森 ポーランド指導階級の抹殺』~ソ連が隠蔽した大量虐殺事件とは

アウシュヴィッツのホロコーストに比べて日本ではあまり知られていないカチンの森事件ですが、この事件は戦争や歴史の問題を考える上で非常に重要な出来事だと私は感じました。

国の指導者、知識人層を根絶やしにする。これが国を暴力的に支配する時の定石であるということを学びました。非常に恐ろしい内容の本です。ぜひ手に取って頂ければなと思います。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』~独ソ戦を体験した女性達の声に聴くー現在、日本で漫画化もされている名著

この本はアレクシエーヴィチが独ソ戦に従軍、あるいは戦禍を被った女性にインタビューし、その記録を文章化したものになります。独ソ戦という巨大な歴史の中では個々の人間の声はかき消されてしまいます。特に、女性はその傾向が顕著でした。戦争は男のものだから女は何も語るべきではない。そんな空気が厳然として存在していました。

そんな中アレクシエーヴィチがその暗黙のタブーを破り、立ち上がります。アレクシエーヴィチはひとりひとりに当時のことをインタビューし、歴史の闇からその記憶をすくいあげていきます。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

A・ビーヴァー『ベルリン陥落 1945』~ソ連の逆襲と敗北するナチスドイツの姿を克明に描いた名著

著者のアントニー・ビーヴァーは前回の記事で紹介した『スターリングラード運命の攻囲戦1942‐1943』の著者でもあります。今作でも彼の筆は絶品で、ぐいぐい読まされます。ソ連の逆襲とナチスが決定的に崩壊していく過程がこの本では語られていきます。

ナチス、ソ連両軍ともに地獄のような極限状態の中、どのような行為が行われていたのか。この本で目にする内容はあまりに悲惨です。読めば衝撃を受けると思います。私もあまりの恐ろしさにショックを受けてしまいました。戦争の残酷さをこの本では痛烈に感ずることになります。ぜひおすすめしたい作品です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

『スターリングラード―運命の攻囲戦1942-1943』~独ソ戦最大級の市街戦を描いた戦争ノンフィクションの金字塔

スターリングラードの攻囲戦は独ソ戦の勝敗に大きな影響を与えた最大級の戦闘の一つです。

モスクワ攻防戦が郊外での防衛戦であり、レニングラードの戦いは包囲戦でした。それに対しこの戦闘はスターリングラード周辺地域だけでなく大規模な市街戦となったのが特徴です。空爆と砲撃で廃墟となった街の中で互いに隠れ、騙し合い、壮絶な戦闘を繰り広げたのがこの戦いでした。スターリングラードの死者はソ連側だけで80万人を超えると言われています。

独ソ戦のあまりの規模に衝撃を受けることになった読書でした。

この本も非常におすすめです。たった数メートルの陣地をめぐり死闘が繰り広げられた市街戦の恐ろしさを知ることになります。ぜひ手に取って頂けたらなと思います。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

『レニングラード封鎖 飢餓と非情の都市1941-1944』~80万人以上の餓死者を出したサンクトペテルブルクの包囲戦

この本はあまりにショッキングです。かなり強烈な描写が続きます。地獄のような世界でレニングラード市民は生きていかなければなりませんでした。市民が飢えていき、どんどん死んでいく様子がこの本では語られていきます。生き残るために人々はどんなことをしていたのか。そこで何が起きていたのか。その凄まじさにただただ呆然とするしかありません。80万人以上の餓死者を出したというその惨状に戦慄します・・・

独ソ戦の悲惨さを学ぶのにレニングラード包囲戦は必読です。弾丸飛び交う戦場だけが戦争ではありません。一般市民を餓死させるという戦略的包囲も戦争のひとつの大きなあり方です。

この本はそうしたことを学ぶ上でも最適な1冊です。読むのに覚悟がいる本ではありますがぜひおすすめしたい作品です。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

A・ナゴルスキ『モスクワ攻防戦ー20世紀を決した史上最大の戦闘』~独ソ戦をもっと知るならこの1冊!

前回の記事で紹介しました大木毅著『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』では、第二次大戦における独ソ戦の全体像が語られていました。その本の巻末にある文献解題でも本著『モスクワ攻防戦ー20世紀を決した史上最大の戦闘』は紹介されており、独ソ戦をもっと知りたい方にはとてもおすすめな本となっています。

写真や図も豊富で当時の様子をイメージしやすくなっています。

そして何より、読み物としてとても面白いです。著者の語り口が素晴らしく戦争という難しい内容ながらぐいぐい引き込まれてしまいます。なぜモスクワ攻防戦は世界最大規模の戦闘となったのか。なぜ兵士たちは無駄死にしなければならなかったのか。無敵と思われたドイツ軍がなぜ敗北したのかということがドラマチックに語られていきます。

独ソ戦~ソ連とナチスの絶滅戦争

神野正史『世界史劇場 ナチスはこうして政権を奪取した』~ヒトラーの権力掌握の過程を知るのにおすすめな参考書!

民主主義であったはずのドイツがなぜ全体主義へと突き進んでいったのか。

これは日本においても当てはまる事象です。

ナチスを学ぶことは私達の歴史を学ぶことにもつながります。

この本ではいつものごとく、神野氏の絶妙な解説で進んで行きます。とにかく面白く、読みやすいです。ドイツの流れをまずは知りたいという方には非常におすすめな1冊となっています。