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アンリ・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』概要と感想~最もおすすめなドストエフスキー伝記の王道
本日は中央公論社出版の村上香住子訳 アンリ・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』をご紹介します。
早速この本について見ていきましょう。
「ゴーゴリの再来」とうたわれた文壇への登場、銃殺寸前の体験と過酷なシベリヤ流刑、劇的な恋愛と結婚、飽くことなき賭博熱。―文豪の波瀾の生涯と名作誕生の背景を、書簡・回想録等の膨大な資料を駆使し圧倒的迫力で描く会心作。
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数あるドストエフスキーの伝記の中でも特に有名なのがこのアンリ・トロワイヤによる『ドストエフスキー伝』です。
アンリ・トロワイヤはフランスで活躍した伝記作家で、1911年モスクワで生まれ、8歳の時にソビエト革命の動乱から逃れるため両親と共にフランスに亡命したという過去を持っています。
祖国を失った悲しみの影響か、 『女帝エカテリーナ』、『プーシキン伝』、『トゥルゲーネフ伝』 などロシアの偉人の伝記を数々手がけています。
アンリ・トロワイヤの伝記の特徴は物語的な語り口にあります。訳者あとがきから引用します。
人間のあくなき自由への渇望、その矛盾、過酷な宿命を凝視しつづける、苦悩と懐疑の作家として一般には見られているドストエフスキー像が、フランスの代表的ユマニスト、トロワイヤの筆になると、なんと人間的に親しみのもてる顔を垣間みせていることだろう。
中央公論社出版 村上香住子訳 アンリ・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』P426
実際にこの伝記を読んでみて、このあとがきはまさしくこの伝記の特徴を言い表していると感じました。
読み進めている内にいつの間にかドストエフスキーに感情移入してしまい、最晩年のドストエフスキー栄光の瞬間には涙が出そうになりました。もはや感動的な物語小説を読んでいるかのような感覚です。
苦労人ドストエフスキーの人生がまるで映画を見ているかのように目の前を流れていきます。
また、400ページを超える大作で、この伝記を読めばドストエフスキーの生涯だけでなくそれぞれの作品に込められたドストエフスキーの思いも知ることができます。
400ページを超える大作ということで、新書のように気軽に読むことが難しいというのは少々難点かもしれませんが、文章自体はすらすら読めるような作りになっているので恐れずに読んでみてほしい伝記であると私は思います。
ドストエフスキーはとてつもなく波乱万丈な生涯を送った作家です。そんなドストエフスキーをフランスの有名な伝記作家が満を持して小説風に描くのですから、これはもう並の小説よりもはるかに面白い作品となっています。
19世紀ロシアの歴史や文化を知るという意味でも、当時の社会情勢が解説されているので面白いかと思います。
読みやすさ、そして伝記の内容と非常にバランスの取れた作品であると言えるでしょう。私のおすすめの伝記のひとつです。
以上、 アンリ・トロワイヤ『ドストエフスキー伝』でした。
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