ドン・キホーテゆかりの地エル・トボソ村のドゥルシネーア博物館とセルバンテス博物館を訪ねて スペイン編⑩

スペイン編

ドン・キホーテゆかりの地、エル・トボソ村を散策 僧侶上田隆弘の世界一周記―スペイン編⑩

カンポ・デ・クリプターナの風車を満喫した後は、ドン・キホーテゆかりの地エル・トボソ村へと向かう。

エル・トボソ村へはタクシーをチャーター。

電車もバスもないのでなかなか行きにくい場所ではあるが、せっかくここまで来たのでぜひとも見てみたいとの思いだった。

エル・トボソ村はドン・キホーテの思い姫ドゥルシネーアが住んでいた村。

ドン・キホーテは「騎士たる者は恋する姫を持たねばならぬ」という騎士道の掟に従って、恋する相手を頭の中で作り上げた。

それがドゥルシネーアなのである。

だがなんと、ドン・キホーテはただの一度もそのドゥルシネーアに直接会ったことがない。

それでもドン・キホーテは持ち前の狂気で空想のドゥルシネーアを恋い慕うのだ。

カンポ・デ・クリプターナからエル・トボソ村へ。

ラ・マンチャらしい乾いた土地とぶどうとオリーブ畑が連なる。

カンポ・デ・クリプターナからエル・トボソ村まではおよそ30分ほど。

エル・トボソ村の見どころはまず、ドゥルシネーア博物館。

ドゥルシネーア博物館

ここはドン・キホーテの時代、すなわち1600年頃の生活の様子が展示されていた。

思いの他生活に必要な道具はしっかり揃っているという印象。

下手したら現代でも全く問題なく過ごせてしまうのではないだろうかとも思えてしまう。

外の庭には馬舎も。木で作られたかわいい馬が置かれていた。

ドゥルシネーア博物館では正直あまりドゥルシネーアを感じることはできなかったが、なるほど、ここを見ることでより『ドン・キホーテ』の世界観を理解する手助けになるということだろうか。

ここは当時の生活の様子を感じられた素朴な雰囲気の場所だった。

次に向かうはセルバンテス博物館。

セルバンテス(1547-1616)Wikipediaより

セルバンテスとは『ドン・キホーテ』を生み出したスペインの誇る大作家だ。

セルバンテス博物館はドゥルシネーア博物館からすぐ近く。

残念ながら入り口の写真を撮るのをすっかり忘れていたため写真は残っていない。

ここには世界中で出版されたドン・キホーテが集められている。

ドン・キホーテは世界で60カ国以上の言語で翻訳されていて、『聖書』に次ぐベストセラーとされている書物だ。

巨大な本があったり、

日本で出版された古いドン・キホーテも展示されていた。

大正4年の本。

現代仮名遣いに慣れているとこれですら古典のよう。

時代を超えて読み継がれているドン・キホーテの偉大さを感じた。

ここには本だけではなく、挿絵や大きな絵も展示されていた。

ついさっきまで風車の丘を歩いていたぼくにとっては、この絵がものすごくリアルに感じられた。

博物館の展示を見終えて、改めて村の広場へと戻っていく。

エル・トボソ村の広場にはドゥルシネーア姫と彼女にひざまずくドン・キホーテの像がある。

ドゥルシネーア姫といっても、実際は姫でもない。

というより、実はこの女性はそもそもドゥルシネーアですらない。

この女性は従士のサンチョ・パンサの嘘によって姫君に仕立て上げられたただの百姓娘。

ドン・キホーテの想像する姫とは全くの別人なのだ。

サンチョはドゥルシネーアが魔法使いによって醜い百姓娘に姿を変えさせられたと主人のドン・キホーテに信じ込ませようとした。

そして疑心暗鬼ながらもしぶしぶ姫君に対してひざまずいたのがこの二つの像の姿なのだ。

これ以上は込み入ってしまうのでお話はできないが、『ドン・キホーテ』ゆかりの地エル・トボソ村を満喫することができた。

正直、『ドン・キホーテ』に思い入れがある人でなければここを目的地として選ぶのはリスキーな選択かもしれない。

カンポ・デ・クリプターナは『ドン・キホーテ』に詳しくなくとも、その風景の美しさを楽しむことができる。

しかしエル・トボソ村は『ドン・キホーテ』の知識がなければ、博物館で観光してもさっぱりピンと来ないだろうと思う。

ラ・マンチャのハイライトはやはりカンポ・デ・クリプターナであろうとぼくは思う。

とは言え、アクセスも悪くなかなか行くことが難しい場所ではあったがここに来れてよかったなと思う。

次の記事ではここまで述べてきた小説『ドン・キホーテ』は何がすごいのか、何がおもしろいのかということをざっくりとではあるがぼくなりにお話ししていきたい。

続く

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