浄土真宗

仏教の思想8中国仏教と思想・歴史

『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』~曇鸞、道綽、善導の思想と生涯、時代背景も知れるおすすめ参考書!

本書では曇鸞、道綽、善導の思想だけでなく彼らの生涯や時代背景も知ることができます。当時の中国の政治情勢あってこその仏教ということがよくわかります。度重なる戦乱や仏教弾圧の中で中国浄土教が発展し、善導の時代には繁栄極める国際都市長安の繁華街で善導浄土教が支持を受けていくという流れは非常に興味深かったです。やはり歴史に名を残す偉人たちと時代背景のつながりというのは面白いです。浄土真宗僧侶としてはどうしても親鸞や法然と向き合う時間が長くなってしまいがちですが、その源流を辿るというのもやはり大きな意味を感じます。源流を辿るからこそ親鸞の特徴や独自性が見えてくるというものです。

そういう意味でも本書は親鸞を学ぶ上でも非常に貴重な作品ということができるでしょう。

仏教の思想5日本仏教とその歴史

『仏教の思想5 絶対の真理〈天台〉』~法華経の思想や中国、日本の天台の流れを知れるおすすめ解説書!

天台といえば私たち日本人は比叡山延暦寺の最澄が開いた天台宗をイメージしますが、その源流は紀元1世紀から2世紀にかけてインドで生まれた『法華経』にあります。『法華経』の教えはインドから中国を経て日本に伝えられました。

本書ではそんな『法華経』の歴史や思想内容について知れるおすすめ作品です。

また、本書では時代背景なども絡めて語られますので、大きな視点から天台仏教を見ていけるのも魅力です。日本仏教の基礎を考える上でも天台宗や法華経を学ぶことは非常に重要であると私も思います。本書はその入り口として最適の一冊です。ものすごく面白いです。

新アジア仏教史11日本仏教とその歴史

『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!

まず言わせてください。

本書『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はものすごく面白いです!

これまで当ブログでは『新アジア仏教史』シリーズの第一弾である『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』から何冊も紹介してきましたが、その全てが「え!?そうなの!?」という驚きが満載の参考書でした。

そしてその中でも今作『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はトップクラスに刺激的で興味深い内容が語られていました。

日本仏教の基礎を学ぶ上でこの本は非常に素晴らしい一冊です。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

〈文化〉としてのインド仏教史インドにおける仏教

奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』~葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著!

この本は「僧侶としてのあり方に悩む方」にぜひおすすめしたい作品です。

文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。

僧侶以外の方でも、仏教における儀礼の意味に興味のある方には多くの発見がある作品です。

ぜひぜひおすすめしたい名著です。著者の信念が伝わってくる素晴らしい一冊でした。

大乗の仏の淵源インドにおける仏教

新田智通「大乗の仏の淵源」~ブッダの神話化はなかった!?中村元の歴史的ブッダ観への批判とは。『シリーズ大乗仏教 第五巻 仏と浄土—大乗仏典Ⅱ』より

今作では浄土経典について説かれるということで浄土真宗僧侶である私にとって非常に興味深いものがありました。

特に第二章の新田智通氏による「大乗の仏の淵源」は衝撃的な内容でした。これは仏教を学ぶ全ての人に読んで頂きたい論文です。

「シリーズ大乗仏教」は2010年代初頭当時における最新の研究が反映されています。かつては主流だった仏教理解が今や通用しなくなっているということを肌で感じた作品でした。

新田智通氏の衝撃的な論文が収録された『シリーズ大乗仏教 第五巻 仏と浄土—大乗仏典Ⅱ』は仏教を学ぶ全ての方におすすめしたいとてつもない一冊です。このシリーズの中でも圧倒的に印象に残った作品です。

ヒマラヤの寺院スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品

本書はネパールの宗教建築に特化した作品になります。これはかなりマニアックな本です。ですがネパールの独特な宗教建築について詳しく知りたい方にはまたとない作品となっています。

ネパールの雰囲気や宗教建築はインドとも中国とも違います。

そして木がたくさん使われているというのは日本人にとって馴染みのものなのかもしれません。私もいずれネパールを訪ねる予定ですのでその時はじっくり見てきたいと思います。

写真も豊富ですので現地の様子もイメージしやすいです。

かなりマニアックな本ですがネパールの宗教や建築に興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。

ネパール仏教スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

田中公明/吉崎一美『ネパール仏教』~日本と同じ妻帯する仏教が根付く国!その教えと歴史を知るのにおすすめ

この本はものすごく貴重な逸品です。

私たち日本人にとってネパールといえばヒマラヤ山脈というイメージが強くありますが、この国の宗教は何なのかというとほとんどわからないというのが実際のところではないでしょうか。私自身もつい最近までこの国についてほとんど何も知りませんでした。

ですが、この国の宗教事情は知れば知るほど面白い・・・!

まずこの国がヒンドゥー教が主でありながらも今なお仏教が息づいているという点。しかもこの国の仏教の中には私達日本の仏教と同じく妻帯している仏教もあるというのです。これは興味深いです。

インドともスリランカともタイとも中国とも違う独特な仏教の歴史をこの本では知ることができます!おすすめです!

インド宗教興亡史インド思想と文化、歴史

保坂俊司『インド宗教興亡史』~仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャイナ教などとの相互関係も知れる参考書!

この本はインドの宗教を学ぶ上で非常にありがたい参考書です。

と言いますのも、この本ではインドに多数ある宗教をそれぞれ別個に見ていくのではなく、その相互関係に着目して語っていく点にその特徴があるからです。

インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。宗教は宗教だけにあらず。歴史や文化、政治経済すべてが関わります。この本ではそんな歴史のダイナミズムを感じることができる非常に刺激的な作品です。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

近藤俊太郎『親鸞とマルクス主義 闘争・イデオロギー・普遍性 』~ 真宗教団とマルクス主義の関わりを知るのにおすすめの参考書

この本の中で「マルクス主義にも宗教的なところがあるのではないか」という指摘がなされるのですが、まさにこのことこそ当ブログでもずっと考え続けてきたことであります。

マルクス主義にも宗教的側面があるのではないかと私が考えていたことと、この本で語られていることがリンクしていくようで非常に興味深く読ませて頂きました。

私はどちらかというと真宗教団の研究からマルクスへ向かうのではなく、マルクスそのものやその思想背景、時代背景から宗教へと向かって行ったのでこの本のアプローチとはちょうど反対向きということになると思います。

マルクス・エンゲルス著作と関連作品

プラトン『ソクラテスの弁明 クリトン』あらすじと感想~ソクラテス・プラトン師弟と法然・親鸞師弟の類似に驚く・・・

プラトンが『国家』を書いたのは、尊敬する師ソクラテスが不当に処刑されてしまったことに対する反発からでした。

そしてそのソクラテスがなぜ処刑されねばならなかったのかについて書かれているのがこの『ソクラテスの弁明』という作品です。

親鸞自身もプラトンと同じように、尊敬する師が理不尽にも処罰を受けなければならないのを身をもって体感しています。

親鸞もそうした理不尽に反論するために主著『教行信証』を書いたという側面があります。

プラトンと親鸞が体験した「無念」という共通点が私にはドキッとくるものがありました。