冷戦

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

W・シャブウォフスキ『踊る熊たち 冷戦後の体制転換にもがく人々』~旧共産圏の人々に突然訪れた自由。自由は重荷なのか。

この本は旧共産圏のブルガリアに伝わる「踊る熊」をテーマに、旧共産圏に生きる人々の生活に迫る作品です。

この本もすごいです・・・!

ロシアに関する本は山ほどあれど、旧共産圏のその後に関する本というのはそもそもかなり貴重です。

しかも、その地に伝わってきた「熊の踊り」というのがまさに旧共産圏から「自由」への移行劇を絶妙に象徴しています。

「踊る熊」を通して私たち自身のあり方も問われる衝撃の作品です。これは名著です。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

A・スルタノヴァ『核実験地に住む―カザフスタン・セミパラチンスクの現在』~ドストエフスキーも滞在していた地がソ連の核実験場になっていた・・・

前回、前々回の記事でチェルノブイリ原発についてお話ししましたが、今回は原子力に関連してソ連のカザフスタン核実験場について書かれた本をご紹介します。

この本はカザフスタン出身の著者アケルケ・スルタノヴァさんによって書かれた作品です。

この本では旧共産圏のカザフスタンの核実験場、セミパラチンスク(現セメイ)で起きた悲劇について語られます。

かつてドストエフスキーも滞在していたこの地で起こった悲劇をこの本では知ることになります。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

「戦争反対声明」~ロシア・ウクライナ危機へ思うこと

私は戦争に断固反対です。武力侵攻にも断固抗議します。

ですが、私は戦争における善悪の単純化を恐れます。

単純化は問題の解決にはなりえません。たとえ一時解決したかのように見えても必ずどちらかに禍根を残します。そしてそれが将来の争いの種になります。

だからこそ相手の歴史や文化を学び、それまで見えていた恐怖に打ち克たねばなりません。与えられた情報や自分で作り上げた恐怖のイメージで相手を見ている内はその実態が見えてきません。

一刻も早くこの悲劇が終わることを心から祈っています。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り 未来の物語』~原発事故の被害者の声を聴く世界的名著

著者はこの事故に関わるひとりひとりの声を丁寧に聴いていきます。歴史という大きなくくりにおいては失われてしまう個々の声。それをこの作品では聴くことができます。

あの当時、あそこで何が起こっていたのか、人々はそれに対し何を思い、何を語るのだろうか。

それを知れるのがこの本の最大の特徴です。

特に、この本の最初に出てくる、事故で亡くなった消防士の妻リュドミーラ・イグナチェンコの物語は何度読んでも凄まじいです・・・私はいつも涙が出そうになります。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

E・H・カー『歴史とは何か』要約と感想~歴史はいかにして紡がれるのかを問う名著

E・H・カーの『歴史とは何か』は私たちが当たり前のように受け取っている「歴史」というものについて新鮮な見方を与えてくれます。

歴史を学ぶことは「今現在を生きる私たちそのものを知ることである」ということを教えてくれる貴重な一冊です。この本が名著として受け継がれているにはやはりそれだけの理由があります。ロシア・ウクライナ情勢に揺れている今だからこそ読みたい名著中の名著です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

クラウス・ドッズ『新しい国境 新しい地政学』~今世界で何が起きているのか、危機的な国際情勢を学ぶためのおすすめ参考書

今ウクライナ危機で世界はとてつもなく揺れていますが、世界はそもそもあまりに危険な状態にさらされていたことがこの本でわかります。いつどこで何が起きてもおかしくないような、そんなぎりぎりのバランスで世界は成り立っていたのだということを痛感します。

この本ではそんなぞっとするような現実がひたすら語られます。正直、かなり怖い本です。

現代ロシアとロシア・ウクライナ戦争

小泉悠『「帝国」ロシアの地政学 「地政学」で読むユーラシア戦略』~ウクライナ侵攻、北方領土問題を考えるのにおすすめ

ウクライナ問題が危機的な状況にある今、なぜこのようなことになってしまったのかを考える上でこの本は非常に参考になります。

この本ではロシアがなぜウクライナにこだわるのか、そもそもロシアは何をもって領土問題を考えようとしているのかがわかりやすく解説されます。

北方領土問題についても詳しく解説されていますので、ぜひおすすめしたい作品です。

マルクスは宗教的な現象か

歴史家トニー・ジャットによるマルクス主義への見解~「伝統的なキリスト教の終末論との共通点」とは

世界的な歴史家トニー・ジャットは「マルクス主義は世俗的宗教である」という決定的な言葉を述べます。

その理由は記事内で述べる通りですが、マルクス主義は宗教的な要素がふんだんに取り込まれており、それがあるからこそマルクス主義が多くの人に信じられたという見解が語られます。

ディストピア・SF小説から考える現代社会

おすすめSF・ディストピア小説16作品一覧~SF・ディストピアから考える現代社会

SF小説はその面白さは言うまでもありませんが、現在を生きる私たちに大きな問いを投げかけます。

楽しんで読むもよし。

今の世界をじっくり考えながら読むもよし。

色んな楽しみ方ができるのがSF小説のいいところだと思います。

この記事ではそんな私のおすすめ小説15作品をご紹介します。

ディストピア・SF小説から考える現代社会

伊藤計劃『虐殺器官』あらすじと感想~ぜひおすすめしたい私の最も好きなSF小説!

この作品はここ数年で私が最も愛した作品と言ってもいい小説です。

タイトルが『虐殺器官』という、およそ僧侶のブログではまず馴染まないであろうフレーズということもあり、ここまでなかなかこの作品を紹介する機会がないまま来てしまいましたが、独ソ戦、冷戦、ディストピア小説と来た今の流れならいけるであろうと、いよいよ勇んでの紹介になります。