有馬哲夫『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』あらすじと感想~歴史と裏側を知れるおすすめディズニーランド通史!
有馬哲夫『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』概要と感想~歴史と裏側を知れるおすすめディズニーランド通史!
今回ご紹介するのは2001年に日本経済新聞社より発行された有馬哲夫著『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』です。
早速この本について見ていきましょう。
日本人による初の本格的ディズニーランド通史。創業者ウォルトとロイ、歴代経営者、それを取り巻く人たちは、いかに「夢の王国」を創造したのか。米国、日本、欧州、中国…それはテーマパークの進化の歴史でもある。「一度来たらまた来たくなる」の魅力の秘密に迫る。
Amazon商品紹介ページより
本書は1955年にカリフォルニア、アナハイムで開業したディズニーランドからフロリダ、東京、パリ、香港とディズニーランドの歴史を概観できるおすすめの解説書です。
本書の特徴は単にそれぞれのディズニーランドの歴史を見ていくのではなく、そこに人間ドラマがふんだんに盛り込まれている点にあります。ディズニーランドという巨大なプロジェクトを進めるにあたり、そこには様々な人間ドラマがありました。このことについて本書冒頭で次のように述べられています。
テーマパーク・プロジェクトというものは、その途方もない規模ゆえに、本性的に大きな危険をはらんでおり、いくつかの危機を乗り越えることによってしか達成できないものだ。それは、一九五四年にウォルトがアナハイムで最初のディズニーランドの建設を始めたときから少しも変わっていない。この最初の現代的テーマパークが構想されて以来、テーマパーク・プロジェクトは、大企業が社運をかけ、さらに自治体やパートナー企業も巻き込まなければならないほどの巨大プロジェクトになった。
テーマパーク・プロジェクトは、いつも関係者のあいだに激しい議論を巻き起こし、厳しい対立を生んだ。そのプロジェクトの巨大さが、彼らの感情的行き違いを増幅し、対立を抜き差しならないものにしてきた。巨大プロジェクトは経営首脳同士の関係だけでなく、経営陣と部下たち、そして経営首脳と事業パートナーとの関係を異常な緊張状態に置いた。そのプロジェクトの成否に会社の存立と自分たちの明日がかかっていたのだから当然だろう。また、プロジェクトが巨大であるがゆえに、人の能力や性格や適性がいやがおうにもクローズアップされ、それが結果に結びつくことになる。
ウォルトと兄ロイとの関係を決定的に悪化させたのは、ディズニーランドのプロジェクトが原因だった。ウォルトの死後、ロイと次世代の経営陣のあいだの権力闘争もディズニー・ワールド建設が引き金を引いた。ディズニー・ワールドのエプコット・センターにはウォルトの使徒をもって任じるカード・ウォーカーの性格が色濃く反映されている。東京ディズニーランドの裏舞台を面白くしたのは、オリエンタルランド社社長高橋政知の人柄とその親会社三井不動産との確執だ。フランスのユーロ・ディズニーにはアイズナーの強気な性格がにじみ出ている。
テーマパーク・プロジェクトほど人間ドラマが浮き彫りになるものはない。
日本経済新聞社、有馬哲夫『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』P16-17
「テーマパーク・プロジェクトほど人間ドラマが浮き彫りになるものはない」
これぞ本書の面白さの真髄です。ディズニーランドの歴史そのものもものすごく面白いのですが、これがあるからこそ本書は一挙に刺激的な作品となっています。私も一気に読み込んでしまいました。
そしてもう1点。
以前当ブログでもアナハイムのディズニーランドに特化したリチャード・スノー著『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』をご紹介しましたが、本書ではアナハイム、フロリダ、東京、パリ、香港の相互作用に注目していきます。これがまた面白い!同じく著者は冒頭で次のように述べています。
ウォルトとその後継者たちが取り組んだ八つのテーマパーク・プロジェクトが、それぞれどのような危機と直面したのか、そしてそれをどう乗り越えたのか、そこにどのような人間ドラマが展開したのか―それらがウォルトの始めた会社をどのように変えていったのか、あるいはそれらが周辺自治体の姿をどのように変えたのか―という物語は、テーマパーク・ビジネスに関心の薄い人にも十分楽しめるだろう。
また、これまでのディズニーのテーマパーク・プロジェクトを時系列順に追うことによって、プロジェクト同士がどのように影響し合っていたのか、テーマパーク・ビジネスが時代とともにどう変わっていったのかもはっきりと見えるようになる。
たとえば、ディズニー・プロダクションズが東京ディズニーランド建設でとった態度は、ディズニー・ワールドのエプコット・センターをめぐる状況を見ればよく理解できる。ユーロ・ディズニーでディズニー社がとった戦略も、ディズニー社首脳がいう「東京ディズニーランドの失敗」の教訓から生まれている。ユーロ・ディズニーでの失態がなかったならば、ディズニー社経営陣はディズニーズ・アメリカのプロジェクトを無理に進める必要はなかっただろう。そして、ユーロ・ディズニーとディズニーズ・アメリカの大失敗のトラウマがなければ、香港ディズニーランドの計画はもう少し早く具体化していたかも知れない。
ディズニーのすべてのテーマパーク・プロジェクトは、前のプロジェクトから何らかの形で影響を受けていた。
一九〇一年に生まれたウォルトが一九五五年に生み出したものがその後どのような発展と変化を遂げてニ〇〇一年に至っているのか。その裏にはどんな戦いがあり、人間の生きざまがあったのか。時代や社会や文化はそこにどのように反映されているのか。ディズニーのテーマパークの歴史とともにこれらを見ていこう。
日本経済新聞社、有馬哲夫『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』P19-20
この本を読んでいると東京ディズニーランドがいかに特異な存在なのかに驚きます。そして本書でも触れられているのですがディズニー誘致の並々ならぬ戦いは非常に刺激的です。私もこの東京ディズニーランドの物語に興味が湧き、早速野口恒著『「夢の王国」の光と影』も読んでみることにしました。こちらも実に刺激的な作品ですのでセットで読まれることをおすすめします。
また、同じく有馬哲夫著『ディズニー千年王国の始まり メディア制覇の野望』もおすすめです。本書『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』ではディズニーランドの通史が語られますが、こちらではディズニーのメディア戦略が詳しく語られます。この本でも人間ドラマが克明に描かれており、巨大会社といえどやはり「人」が大きなポイントになってくるのだなと感じさせられます。
『ディズニーランド物語 LA-フロリダ-東京-パリ』は文庫で気軽に手に取れる作品でありながら中身は非常に濃厚です。ディズニーファンだけでなく、ビジネスやノンフィクションに興味のある方にもぜひおすすめしたい一冊です。
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