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(12)マデルノの聖セシリア像に感動!~サンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ聖堂の傑作彫刻をご紹介

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【ローマ旅行記】(12)マデルノの聖セシリア像に感動!~サンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ聖堂の傑作彫刻をご紹介

今回ご紹介するのはサンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ教会。

テヴェレ側の向こう岸に位置するトラステヴェレ地区にある由緒ある教会だ。

私がここに来たのはある彫刻を観に来たかったからだ。

それが以前の記事「(10)サン・カリストのカタコンベを訪ねて~カタコンベの歴史と死と祈りの街としてのローマを考える」で紹介した『聖セシリアの殉教』だ。

サン・カリストのカタコンベの聖セシリアの墓 Wikipediaより

この彫刻のオリジナルがここサンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ聖堂に納められているのである。

聖セシリア(サンタ・チェチリア)は二世紀頃のローマ帝国の殉教者で、音楽家と盲人の守護聖人として有名。処刑された際に受けた首の傷がこの像にも残されている。

この像自体は1600年にステファノ・マデルノによって制作された。1599年に彼女の墓が開けられた際、遺体が元のままの姿で残っていたため、ローマ中が「奇跡」として沸いたという。そしてマデルノはそこで見た聖セシリアの姿そのままを彫刻にしたと言葉に残している。

私はカタコンベで見たこの像に強烈なインパクトを受け、どうしてもそのオリジナルの姿を見たくなったのである。

夕暮れ時に訪れたのでほとんど私一人しか聖堂内にはいなかった。何という幸運!

薄暗い聖堂内は荘厳そのもの。しーんと静まり返った堂内。なんと美しい・・・!

そしてその中央祭壇の下部に私の求めた『聖セシリアの殉教』が安置されていた。こういう構造の教会はほとんど見たことがない。

これがマデルノによるオリジナルの彫刻である。

マデルノは天才か・・・!私はこの像の前で凍り付いてしまった。何が私をここまで惹きつけるのかはわからない。だがただただこの像に釘付けになってしまった。

どう言えばいいだろうか・・・

まずこれが石であることから信じられない。いや、石だというのは頭ではわかる。だが石という物体をはるかに超えた何かがある。人間の質感、柔らかさ、丸みがある。死んでいることすら感じさせない。ただ力が完全に抜けているという「感覚」が伝わってくる。そう、何か伝わってくる「感覚」があるのだ。

今この写真を見返してみてもこの彫刻の並々ならぬ「感覚」を感じる。

ローマにはベルニーニやミケランジェロなどが遺した優れた彫刻が数多ある。だが今回のローマ滞在で私が最も衝撃を受けたのはこの『聖セシリアの殉教』だ。時間の都合上一度しかこの聖堂を訪れることができなかったのが心残りで仕方がない。もう一度でいいからこの像を見たいと、この記事を書いている今も胸が苦しくなる。

なぜここまでこの像に夢中になったかはうまく説明できない。しかしこの像の持つ圧倒的な力に私は文字通りすっかり打ちのめされてしまった。それほどこの像は圧倒的だったのである。

そして「(10)サン・カリストのカタコンベを訪ねて~カタコンベの歴史と死と祈りの街としてのローマを考える」の記事でもお話ししたがこの聖セシリアはラファエロの絵画でも有名だ。ボローニャ絵画館に所蔵されているこちらの『サンタ・チェチリア』はロシアの文豪ドストエフスキーも好んでいたことで知られている。(「(23)色彩豊かな芸術の都ヴェネツィアを訪ねて~美しき水の都にドストエフスキーは何を思ったのだろうか」の記事参照)

音楽の守護聖人ということでこの絵には楽器が描かれている。だが、音楽の守護聖人なのに壊れた楽器が無造作に置かれているという何とも不思議な構図である。一人一人の顔やポーズ、服の描写はやはりラファエロらしさがある。無類のラファエロ好きのドストエフスキーにはやはりどんぴしゃな作品だったのだろう。

この教会を去らねばならないのは非常につらいものがあった。帰国した今もなお名残惜しい。それほどまでにこの彫刻は素晴らしかった。ローマに来られる際はぜひこの教会に来られることをおすすめしたい。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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