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⑴ドストエフスキーが愛する妻に捧げた小説、それが『カラマーゾフ』だった

カラマーゾフの兄弟を読む
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⑴ドストエフスキーが愛する妻に捧げた小説、それが『カラマーゾフ』だった

さて、早速ですが、私は表紙をめくってすぐに「ああ!」と額に手をやらずにはいられませんでした。

なぜ私がこんなことになってしまったかといいますと、これが原因です。

これの何がすごいのかきっとポカンだと思いますが、私にとってはこれは痛恨過ぎる発見でした。

「わが妻アンナ・グリゴーリエヴナに捧ぐ」

『カラマーゾフ』に出会ってすでに15年・・・。何度も何度も読み返したこの名作でありましたが、ここに来て私は初めてこの言葉に気がついたのです。

私自身、この言葉自体は確実に何度も目にしていたはずです。しかし私は見落としていたのでありました。つまり、心に刻まれていなかったのです。

では今回、この言葉の何に私が衝撃を受けたのでしょう。

これから私なりに思うところをお話ししていきたいと思います。

まず、この『カラマーゾフ』はドストエフスキーの集大成となる作品です。ドストエフスキーがこれまで抱えてきた創作上のテーマを全てつぎ込んだ最高傑作です。その『カラマーゾフ』を妻アンナ・グリゴーリエヴナに捧げたのです。

アンナ・ドストエーフスカヤ(1846-1918)Wikipediaより

ドストエフスキーとアンナ夫人のおしどり夫婦ぶりは有名ですが、このアンナ夫人に捧げるというのが私には何ともたまらないのです!

私はこの夫婦の大ファンです。

この二人が『カラマーゾフ』を完成させるまで、どれほどの苦難を耐え忍ばなければならなかったのかは筆舌に尽くがたいものがあります。

まさに二人三脚、いや、アンナ夫人の超絶的な大活躍によりドストエフスキーはここまで来ることができたのです。そのアンナ夫人に自身の最高傑作を捧げたというのはもう悶絶です。最高すぎます。

そんな重大事をこれまで見逃していたなんて何たる痛恨の極み・・・!

これには我ながらショックを受けたのでありました。

私がこれほどまでに夫妻の関係性に思い入れを持つようになったのはアンナ夫人の回想記がきっかけです。

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この本で語られる二人の波乱万丈な道のりと愛の深さに私はすっかり参ってしまったのです。

そして二人が強い絆で結ばれることになったヨーロッパ旅行を追体験するために私は2022年、ヨーロッパを旅しました。この旅の記録が以下の旅行記になります。

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私にとってはそれほどこの夫妻に対する思い入れがあったのです。

そんな私がこの重大な言葉を見逃していたというのは恥ずかしながら自分でも驚きの事件でありました。

こういうわけで、私はこの本を手に取って早々衝撃を受けることになったのです。私がこの「カラマーゾフを読む」を書こうと思い立った大きなきっかけがこの言葉でもあります。

『カラマーゾフ』は最愛の妻に捧げる作品でもありました。

こう考えてみると、重くて難しそうな『カラマーゾフ』が少しロマンチックな作品にも思えてきませんでしょうか。しかも実際、この作品には妻との夫婦生活で体験した出来事も反映されています。特に、上巻の前半部分で説かれる「子を失った母親の嘆き」はまさにドストエフスキー夫妻が体験した絶望そのものです。

後の記事で改めてその箇所を紹介していきますが、何度読んでもその箇所には心震わされます。プライベートな話で申し訳ないのですが、私も昨年の4月に第一子が生まれ、初めて親という存在になりました。やはりなってみないとわからない感覚というものがありますよね。親になってから初めて読む『カラマーゾフ』はやはりこれまでとは違いました。子を失った母親の嘆きがより深く胸に刺さるのです。

時代を超えて愛される作品というのは読み手の環境の変化によってもその味わいが変わっていきます。『カラマーゾフ』が何度読んでも面白いのはこうした名作たる奥行きの広さがあるからでしょう。

まさか小説の本編に入る前に一記事書くことになろうとは思ってはいませんでしたが、次の記事からいよいよ物語を読んでいくことにしましょう。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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