スジャータゆかりの地とネーランジャラー川へ~瀕死のブッダを救ったミルク粥奉納の地
【インド・スリランカ仏跡紀行】(86)
スジャータゆかりの地とネーランジャラー川へ~瀕死のブッダを救ったミルク粥奉納の地
前正覚山の洞窟寺院を訪れた私が次に向かったのはスジャータ寺院。
ブッダはブッダガヤ近郊のウルヴェーラーで6年に及ぶ苦行を続けていた。
パキスタン、ラホール美術館の断食仏 pic.twitter.com/uhRICnFOo5
— 上田隆弘@函館錦識寺 (@kinsyokuzi) March 13, 2024
ブッダの6年間の苦行生活は想像を絶するほどのストイックさで行われた。有名なガンダーラの断食仏像を見てみると、その壮絶さが伝わってくる。
だが、ブッダはその極限の苦行では悟りに至れないことをある日直感する。苦行という極端な修行をしても自身の煩悩を完全に断ち切ることは不可能だと確信したのだ。
こうしてブッダは断食をやめ、托鉢をするために村へと下りていった。
前回の記事の最後に紹介したこの写真はまさに前正覚山から村方面を眺めた一枚だ。そして写真真ん中あたりを細く茶色い線が横切っているのが見えると思う。これがブッダが沐浴しスジャータと出会うことになったネーランジャラー川だ。
ネーランジャラー川は現在ファルグ川という名前になっている。私が訪れたのは二月の乾季だったためすっかり水が干上がってしまっていた。
ブッダは山を下り、まずはこの身体で沐浴し身体を清めた。しかし厳しい苦行のため身体はもはや限界。このままでは衰弱死してしまうというその時、ちょうど森の神様にお供え物を奉ずるためにやって来たスジャータがブッダを発見する。そして衰弱しきった身体ながらも並々ならぬ神々しさを感じさせるその聖者に彼女はミルク粥を施したのだ。
このミルク粥のおかげでブッダは力を取り戻し、復活を遂げたのである。
日本のスープの会社スジャータがまさにこの逸話からその名前が来ているというのは有名なお話だ。私もスジャータのコーンスープが大好きでよく飲んでいる。
さて、スジャータ・テンプルへとやって来た。団体客目当ての地元民がやんややんやと何かを売っている。
スジャータが実際にどこでブッダにミルク粥を奉納したのかはわかっていない。しかしその伝説を記念してこの寺院は建てられている。この寺院はミャンマー仏教教団によって作られたのだそうだ。
こちらは最近作られたらしい新たなモニュメント。
スリランカでもお話ししたが、やはりどうしても日本人である私には馴染みの薄い仏教文化である。自分との文脈の違いをやはり感じてしまう。(詳しくは「(29)なぜ私はスリランカの聖地や仏跡に感動できなかったのだろうか~宗教と「人生の文脈」について考える」の記事参照)
スジャータのミルク粥を再現したライスプディングなるものも売っていた。インド食にトラウマがある私には恐ろしくて手を出せなかったが勇気のある人は試してみるのもよいかもしれない。(どうなっても責任を持てないが)
そしてこの寺院の近くにはスジャータを記念したストゥーパも立っている。1973-74年、2001-2006年にかけて調査が行われたようで、この仏塔は8世紀から9世紀頃のものではないかとされている。もちろん、ここも埋まっていたのだが現在はこうして遺跡公園化されている。
ネーランジャラー川対岸に見える尖塔はブッダガヤの大塔だ。
ミルク粥で復活したブッダが深い瞑想の境地に入り、ついに悟りを開いたその聖地である。
次の記事ではそのブッダガヤを紹介する前にガヤーという街についてお話ししていきたい。日本人にはガヤーという街はほとんど知られていないが、インド人にとっては最も重要なヒンドゥー教聖地のひとつなのである。
実はブッダガヤという地名も、ガヤーという街においてブッダが悟った地ということでブッダガヤなのである。ブッダガヤあってのガヤーではなく、ガヤーあってのブッダガヤなのだ。ここは仏教聖地になる以前からヒンドゥー教の聖地として有名だった。ここは様々な修行者や宗教者が集まる宗教的な土地だったのである。だからこそブッダもこの近郊で苦行を続けていたのだ。
というわけでブッダガヤの様子を紹介する前にまずはそのガヤーのヒンドゥー教聖地について次の記事でお話ししていく。私自身、ここでの体験は非常に残っている。私は特別に聖地の最奥部まで入らせてもらったのである。そしてそこでも異様な熱気を体感してきた。ぜひその体験をお話ししていきたい。
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※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
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