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長縄光男『評伝ゲルツェン』あらすじと感想~おすすめ伝記!ロシアの革命家の波乱の人生とは

目次

おすすめ伝記!長縄光男『評伝ゲルツェン』概要と感想~ロシアの革命家の波乱の人生とは

今回ご紹介するのは2012年に成文社より発行された長縄光男著『評伝ゲルツェン』です。

早速この本について見ていきましょう。

トム・ストッパードの長編戯曲「コースト・オブ・ユートピア──ユートピアの岸へ」の主人公、アレクサンドル・ゲルツェンの本邦初の本格的評伝。十九世紀半ばという世界史の転換期に、「人間の自由と尊厳」の旗印を高々と掲げ、ロシアとヨーロッパを駆け抜けたロシア最大の知識人の壮絶な生涯を鮮烈に描く。生誕二〇〇年記念出版。


成文社HPより
ゲルツェン Wikipediaより

ゲルツェン(1812-1870)はロシアを代表する思想家、革命家です。彼の代表作には『過去と思索』があります。

上の本紹介で出てきたトム・ストッパードは以前当ブログでも「トム・ストッパード『ロックンロール』あらすじと感想~クンデラやハヴェルに影響を受けた名作劇」の記事で紹介しました。

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ゲルツェンはその『コースト・オブ・ユートピア──ユートピアの岸へ』の主人公として最近は特に知られるようなったそうです。

このゲルツェンですがドストエフスキーやツルゲーネフなど、ロシアの文豪のことを調べていると必ず出てくる人物でありますし、今更新を続けているマルクスにも関係のある人物です。

というわけで、私はゲルツェンとはいかなる人物なのか、そして彼が生きた時代背景、社会状況はどのようなものだったのかを知るためにこの伝記を手に取ったのでありました。

この伝記はかなり分厚いです。上下二段組で550頁以上あります。かなり盛りだくさんの内容です。

ですが、ものすごく面白くて読むのはまったく苦ではありませんでした。

物語の語り口が絶妙で全く飽きさせません。そしてゲルツェンその人の波乱万丈ぶりもまた面白い!

さらになぜゲルツェンがそのような思想に至ったのか、その時何が起きていたのか、また当時のロシア事情もわかりやすく解説してくれます。

特に私が興味深く感じたのはロシアの文学青年たちに影響を与えたゲーテ、シラー、ヘーゲル、フォイエルバッハなどのドイツの作家、思想家の存在です。

これはゲルツェンだけでなくドストエフスキーやマルクスを考える上でも非常に興味深いものでした。

ドイツ、ロシア、フランス、イギリスの社会情勢ともリンクして学べるこの伝記は非常におすすめです。これまで断片的に知っていた知識が繋がっていくような、そんな感覚を味わうことができます。

ゲルツェンはマルクスや、ドストエフスキー、トルストイなどと比べると確かに知名度も低く、どんな人物なのかということはあまり知られていません。私もこの本を読むまではほとんど知りませんでした。

ですが、これは読んでよかったなと心から思える作品でした。ものすごく面白いです!

本当は紹介したい箇所が山ほどあるのですが、この記事では紹介しきれないのでぜひ興味のある方はこの本を手に取って頂ければなと思います。意外な事実が驚くほど出てきます。革命家ゲルツェンがとてつもない大金持ちで、その資産運用をロスチャイルドに委託していたという事実も出てきます。これには私もびっくりでした。そういう事実がどんどん出てきます。人間としても危険な革命家というわけではなく、あくまで穏健で理性的な人だったということも明らかになります。

私たちが素朴にイメージしてしまう革命家像とはかなり違った現実を知ることになり、とても興味深い話を聞くことができます。

ぜひぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「長縄光男『評伝ゲルツェン』おすすめ伝記!ロシアの革命家の波乱の人生とは」でした。

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評伝ゲルツェン

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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