目次
金子啓明『もっと知りたい興福寺の仏たち』概要と感想~お寺巡りにおすすめのガイドブックシリーズ!
今回ご紹介するのは2009年に東京美術より発行された金子啓明著『もっと知りたい興福寺の仏たち』です。
早速この本について見ていきましょう。
■興福寺には、阿修羅像をはじめとした天平時代の傑作、天竜八部衆像や十大弟子像のほか、運慶を代表とする慶派の作った鎌倉時代の仏像など
日本の仏教美術史上、最高峰に位置する仏像がそろっている。しかし、平氏の南都焼き討ちなど幾度も罹災し堂宇が失われ
現在は国宝館の中に安置されている仏像や、廃仏毀釈により流出した仏像もある。
■本書は、鎌倉時代の「興福寺曼荼羅図」や調査結果を手がかりに、現存する仏像が本来どのお堂に安置されていたのか、誰が何のため造像し 意味するものは何であったのかを歴史と信仰を踏まえ解明。興福寺仏像ガイド本としても最適。
Amazon商品ページより
本書は東京美術の「もっと知りたい」シリーズの興福寺版になります。
この「もっと知りたい」シリーズ(正式には「アート・ビギナーズ・コレクション」)は私も大好きなガイドブックで、私がフェルメールを好きになったのもこのシリーズがきっかけでした。
あわせて読みたい
『もっと知りたいフェルメール 生涯と作品』あらすじと感想~17世紀オランダ絵画の時代背景も学べるおす...
この本ではフェルメールが活躍した17世紀オランダの時代背景も詳しく知ることができます。
この時代のオランダ社会は、当時芸術界の中心だったローマとはまったく異なる様相を呈していました。
その社会事情の違いがオランダ絵画に独特な発展をもたらすことになります。その流れがとても面白く、一気にこの本を読み込んでしまいました。
東京美術さんのこのシリーズは内容が濃いながらコンパクトに絵画を学んでいけるのでとてもおすすめです。
本書『もっと知りたい 興福寺の仏たち』でも興福寺の歴史やその仏像の由来や特徴、魅力がわかりやすく解説されます。写真も実に素晴らしいです。
そしてありがたいことに、この「もっと知りたい」シリーズでは興福寺だけでなく、法隆寺や薬師寺、東大寺、東寺などその他のお寺についても出版されていますので、ぜひ合わせて読まれることをおすすめします。京都、奈良旅行の力強い相棒になってくれること間違いなしのおすすめガイドブックです。
西洋美術の入門書としてこのシリーズのおすすめ本を当ブログで紹介しましたが、どれも入門に最適な本となっています。以下も参考にして頂けましたら幸いです。
以上、「金子啓明『もっと知りたい興福寺の仏たち』概要と感想~お寺巡りにおすすめのガイドブックシリーズ!」でした。
あわせて読みたい
『もっと知りたいラファエッロ 生涯と作品』あらすじと感想~『システィーナの聖母』を描いたルネッサン...
この本では一枚一枚の絵を解説付きでじっくりと見ていくことになります。ラファエロの生涯を辿りながら時代順に作品を見ていくので作風の変化なども感じることができます。
ラファエロの作品や生涯を辿る入門書として本書は非常におすすめです。
あわせて読みたい
『もっと知りたいエル・グレコ 生涯と作品』あらすじと感想~トレドの偉大な画家とギリシア正教のイコン...
エル・グレコといえばスペインのトレドで活躍した、独特のタッチが特徴の画家です。
彼はギリシア正教のイコン画の影響を強く受けていた画家でした。
西欧美術の本場イタリアの伝統とは異なる土壌で修行をしたエル・グレコだからこそこうした独特な絵を生み出すことができたというのは非常に興味深かったです。
あわせて読みたい
『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』あらすじと感想~代表作『ラス・メニーナス』で有名!印象派画...
後に世界を席巻するフランス印象派の成立にスペインの宮廷画家ベラスケスの影響があったというのは非常に興味深かったです。
この本ではそんなベラスケスの作品をたっぷり味わうことができます。解説もわかりやすく、当時の時代背景も学ぶことができるのでとてもありがたい入門書でした。
あわせて読みたい
『もっと知りたいカラヴァッジョ 生涯と作品』あらすじと感想~《聖マタイの召命》で有名なローマバロッ...
カラヴァッジョと言えばバロック美術を代表する『聖マタイの召命』が非常に有名ですが、世界で最も有名なキリスト教絵画のひとつを描いたその人物が、殺人まで犯し逃亡していたというのはかなりの衝撃でした。
当時の時代背景まで学べるこの本は私にとっても非常にありがたいものがありました。おすすめの入門書です!
あわせて読みたい
『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』あらすじと感想~不思議な絵画で有名なマグリットのおすすめガ...
この本ではマグリットの生涯と作品の解説をじっくりと見ていくことができます。解説もとても面白く、それこそ食い入るように読み込んでしまいました。東京美術さんの『もっと知りたいシリーズ』は私も大好きでどれも楽しく読ませて頂いているのですが、この本はその中でもトップクラスに面白い1冊でした。
ぜひぜひおすすめしたい1冊です!
あわせて読みたい
『もっと知りたいターナー 生涯と作品』あらすじと感想~クロード・ロランに影響を受けたイギリスの大画家
この本ではターナーの生涯と作品の解説を時系列順に見ていくことができます。彼の作風の移り変わりやその意味するところがとてもわかりやすく解説されています。
ターナーがシェイクスピアに比するほどイギリスで評価されている人物だというのは初めて知りました。イギリス絵画についてほとんど知らなかった私でしたが、これは驚きでした。
あわせて読みたい
『ブリューゲル ネーデルラント絵画の変革者たち』あらすじと感想~ブリューゲルの風景画の特徴と北方ル...
この本は北方ルネッサンス、ネーデルラント絵画の大家ブリューゲルの作品とその特徴を知るための格好の入門書となっています。
この本の中でも特に印象に残っているのは「ネーデルラント絵画の特徴」について書かれた箇所です。その部分を参考に、イタリアの絵画とは全く異なる画風の源泉はどこにあるのかをこの記事では紹介していきます。
あわせて読みたい
『レーピンとロシア近代画家の煌めき』あらすじと感想~ドストエフスキーも生きたロシア19世紀絵画の...
この本は19世紀ロシアを代表する画家レーピンを中心に、この時代のロシア絵画界の全体像を眺めることができるおすすめのガイドブックです。
そしてこの本のありがたいのは当時のロシアの時代背景も知れる点です。これらの画家がどのような社会に生き、何を求めて絵を描き続けたのか、闘い続けたのかを知ることができます。とてもおすすめな1冊です!
Amazon商品ページはこちら
もっと知りたい 興福寺の仏たち
次の記事はこちら
あわせて読みたい
長谷川公茂『円空 微笑みの謎』概要と感想~なぜか心惹かれる不思議な魅力!こんな仏像があったのか!!
この本の表紙にありますように、何とも味わい深い微笑みが円空仏の特徴です。
この本を読んで私もその魅力にすっかり引き込まれてしまいました。その表情だけでなくおよそ仏像に向かないような木の切れ端が見事な仏像に変身する神秘にも驚かされました。「こんな仏像が日本にあったのか!」この一言に尽きます。
関連記事
あわせて読みたい
根立研介『もっと知りたい 慶派の仏たち』概要と感想~運慶快慶の仏像のおすすめガイドブック!
運慶仏像の写真集で何かいいものはないかと私は様々な本や写真集を手にしたのですが、結果的にこの本が私にとってはベストです。快慶に関しては後の記事でも紹介する『快慶作品集』という素晴らしい写真集があったのですが、運慶に関してはこの本が私のお気に入りです。
あわせて読みたい
金子啓明『運慶のまなざし 宗教彫刻のかたちと霊性』あらすじと感想~衝撃の名著!運慶にあのベルニーニ...
最高です。この本には参りました。まさに脳内スパーク。この本は仏教美術の本の中で最も感銘を受けた作品と言っても過言ではありません。
単に仏教美術だけの話ではなく、時代背景や運慶の人間性にも深く切り込む本書は素晴らしい名著です。
あわせて読みたい
吉川真司『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』あらすじと感想~奈良時代の歴史と仏教の流れを知るの...
この本の後半で語られる平城京から平安京遷都の経緯の箇所はとても刺激的でした。平城京から平安京への遷都は仏教勢力から距離を置くためとよく言われますが、実際にはそうではなく、天皇の皇統転換が大きな要因だったというのは興味深かったです。
あわせて読みたい
奈良時代の仏教と歴史・時代背景を学ぶのにおすすめの参考書12選!
この記事では仏教が日本に本格的に根付いていくことになる奈良時代の仏教やその歴史・時代背景を学ぶのにおすすめの参考書を紹介していきます。
あわせて読みたい
木本好信『奈良時代』概要と感想~奈良時代の政治の流れを知るのにおすすめの参考書
知っているようで知らない奈良時代の歴史を新たに学べる素晴らしい一冊です。参考図書も多数掲載されていますのでもっと奈良時代について学びたいという方にも有用です。
あわせて読みたい
東野治之『鑑真』概要と感想~日本に戒律を伝えた唐の高僧の生涯と日本への影響を知るのにおすすめの参考書
本書を読めば当時の日本仏教の実情やなぜ鑑真を日本は強く求めたのかという時代背景も知ることもできます。鑑真を通して8世紀の日本仏教の姿を知ることができる本書はとても刺激的です。
著者の語りも丁寧でわかりやすく、とても読みやすいのもありがたいです。
あわせて読みたい
杉本一樹『正倉院宝物 181点鑑賞ガイド』概要と感想~正倉院展のおすすめガイドブック!聖武天皇の繊細...
本書は奈良時代の至宝たる正倉院宝物を学ぶのにうってつけのガイドブックです。
この本では正倉院の所蔵の様々な物品をフルカラーで見ていくことができます。毎年10月下旬から11月上旬頃にかけて開かれる正倉院展のガイドブックとしても非常に役立つ一冊となっています。