2023年

潮騒三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『潮騒』あらすじと感想~古代ギリシャをモチーフに書かれた恋愛小説。三島らしからぬディズニー的物語がここに

『潮騒』は「平和で静穏な小説であり、この作家としては例外的に、犯罪も血の匂いも閉め出された世界なのである」と解説されるほど三島らしからぬ異質な作品です。

舞台は伊勢の海に浮かぶ歌島という孤島。本土から隔たれたこの美しい島で、二人の若者の清らかな恋が語られます。

三島由紀夫といえば『金閣寺』や『仮面の告白』のえげつない内面描写や『憂国』の血のしたたりというイメージがあります。しかし、彼は『潮騒』のような純粋無垢なディズニー的な作品も書けてしまうのです。

「あの三島由紀夫がディズニー的な作品を書いていた」

私にとってはこれはかなりの衝撃でした。

南インドインド思想と文化、歴史

辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!

今作『世界歴史の旅 南インド』は北インドとは異なる文化を持つ南インドのおすすめのガイドブックです。

本書の特徴は何と言っても写真が満載な点にあります。素晴らしい写真を見ながら南インドの歴史を辿っていくと、自分も南インドにぜひ行ってみたくなります。

私達はインドというと、ひとつのインドを思い浮かべてしまいがちですが、インドは広い!(笑)

日本でも関東と関西では文化が違うように、インドも北と南、いや全方位においてそれぞれの文化があります。

この本を読めば南インドの雰囲気が伝わってきます。 写真も満載ですので南インド入門に格好のガイドブックとなっています。

三島由紀夫三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫、芥正彦他『三島由紀夫VS東大全共闘 1969-2000』~あの伝説の討論は何だったのか。学生達の思想、関係性も知れるおすすめ作品!

結局、あの東大全共闘は何だったのか・・・安田講堂に立てこもり火炎瓶を投げつけた学生達や内ゲバを繰り返したセクトたちと何が違うのか・・・。

私にはこれがどうしてもわからなかったのです。三島由紀夫と討論した彼らは一体何者だったのか。彼らも内ゲバや暴力をしていたのだろうか・・・。

そんな疑問を抱えていた私にとって本書はあまりにありがたい作品となりました。

いや~ものすごい本です。計15時間にも及ぶ濃密な討論がこの本で文字化されています。東大全共闘とは何だったのか、三島由紀夫との対談は何だったのかということを知るのにこの本は最高の資料になります。この時代の雰囲気を感じるためにもぜひぜひこの本はおすすめしたいです。

仮面の告白三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『仮面の告白』あらすじと感想~三島の自伝的小説。幸福を求めあがいても絶対に得られないという絶望がここに…

今作『仮面の告白』は三島由紀夫の初の長編となった作品です。しかもそうした「始まりの作品」でありながらこの小説はかなりどぎついです。後の三島を予感させる内面の苦悩、葛藤、嵐がすでにここに描かれています。

本作の主人公は同性愛的傾向を持ち、さらには若い男の流す血に性的興奮を持ってしまうという、特異な少年です。ですが、彼はそのことに煩悶し、世間一般の幸福を望んでもいました。

しかし、やはり彼にはそのような平穏は許されていなかった・・・

この作品は三島由紀夫の自伝的な小説と呼ばれています。三島自身は妻を持ち子もいますので完全には小説そのままではありませんが、彼の抱えていた悩みやその生育過程が今作に大きな影響を与えたとされています。

不道徳教育講座三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『不道徳教育講座』~逆説とユーモア溢れる名エッセイ集!三島節の真骨頂を体感!

本書に収録されているエッセイには三島由紀夫のユーモアが溢れています。

『金閣寺』や『憂国』を読んだ後にこのエッセイを読んだ私ですが、三島由紀夫ってこんなに面白い人なんだ!と新鮮な驚きを感じながらの読書となりました。

また、本書の後半には三島由紀夫の筋肉論が掲載されています。

三島は30代に入ってから肉体改造に取り組み、ボディ・ビルに勤しんでいました。その三島の筋肉論を聴けるのも本書の醍醐味でもあります。この三島の筋肉の美学には痺れます!近年の筋肉ブームを考えると、この三島の筋肉論が一種のムーブメントに発展してもおかしくありません。

近現代南インドのバラモンと賛歌インド思想と文化、歴史

小尾淳『近現代南インドのバラモンと賛歌』~タミル人とバクティ信仰。南インドの文化を学ぶのにおすすめ

インドの宗教や文化について数多くの本はあれど、南インドの音楽に特化して書かれた本は貴重です。私もこの視点からインド文化を考えたのは初めてのことでとても新鮮な気持ちでこの本を読むことができました。

私自身、最近ガンジス川上流の聖地ハリドワールやリシケシでヒンドゥー教の祈りの音楽を聴くことになりました。

そのメロディーが今でも耳に残っています。なぜか忘れられない印象的なメロディーでした。初めて聴く私ですらこうなのですからインドの方にとったらどれだけ愛着のあるものだったことでしょう。

本書は当時の音楽家達やその音楽について語られるのでかなりマニアックですが、北インドとは異なる南インドならではの空気感が感じられる興味深い作品です。

葉隠入門三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『葉隠入門』あらすじと感想~「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」の真意とは。三島思想の支柱を知れる作品

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」

誰もが知るこの言葉の元となった『葉隠』を三島由紀夫は生涯愛しました。そして彼自身この作品を発表した3年後にまさに武士のように自刃しています。この本が三島に与えた影響が並々ならぬことは間違いありません。

特に『「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」というその一句自体が、この本全体を象徴する逆説なのである。わたしはそこに、この本から生きる力を与えられる最大の理由を見いだした。』という言葉は三島がこの書から受け取った真髄が現れていると思われます。

三島由紀夫のあまりに壮絶な人生の秘密がこの本には記されています。『憂国』と合わせてぜひこの『葉隠入門』はおすすめしたいです。

憂国三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『憂国』あらすじと感想~後の割腹自殺を予感?三島のエキスが詰まったおすすめの名作!

「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」

三島自身がこう述べるほどの作品が『憂国』です。私自身、最初の三島体験となった『金閣寺』の次にこの作品を読んだのですが、この『憂国』を読んで私はいよいよ三島の魔力に取り憑かれてしまったのでした。

『憂国』は三島作品の中でも特におすすめしたい作品です。30ページほどの物語の中に三島由紀夫のエッセンスが凝縮されています。

金閣寺三島由紀夫と日本文学

三島由紀夫『金閣寺』あらすじと感想~「金閣寺を焼かねばならぬ」。ある青年僧の破滅と内面の渦

「金閣寺を焼かねばならぬ」

なぜ青年僧はそう思わねばならなかったのか。それを幼少期からその決行まで我々は見ていくことになります。

そしてこの作品を読んでいてふと思ったのは、『金閣寺』はドストエフスキーの『罪と罰』と対になる作品かもしれないということでした。

私は『罪と罰』をかつて「ドストエフスキーの黒魔術」と呼びました。ドストエフスキーの作品は私たちに異様な感化力を以て襲いかかってきます。

そしてまさに三島由紀夫の『金閣寺』もそのような作品だと確信しました。この文体。この熱量・・・!恐るべき作品です。これから三島由紀夫の作品を読んでいくのが楽しみになりました。

いや~ものすごい作品でした。

思想としての全共闘世代三島由紀夫と日本文学

小阪修平『思想としての全共闘世代』~60年代からの時代精神を著者個人の語りから感じることができるおすすめ作品

学生紛争とは何だったのか。

あの時代を知らない私からすれば、あまりに不思議でどう理解してよいかもわからぬ複雑怪奇な存在でした。

本書は著者の個人的な語りを通して全共闘や赤軍まで見ていきます。

全共闘や学生紛争についての入門として本書は非常におすすめです。この時代を知らない私達若い世代こそこの本を読むべきではないかと思います。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。