和田朋之『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』~スリランカ内戦の経緯が詳しくまとめられたおすすめ作品!

スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

和田朋之『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』概要と感想~スリランカ内戦の経緯が詳しくまとめられたおすすめ作品!

今回ご紹介するのは2021年に彩流社より発行された和田朋之著『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』です。

早速この本について見ていきましょう。

商社マンだった私は、海外出張の帰り、ハイジャックに遭遇、
無事に生還したが、30年以上の後、その犯人セパラを捜し出すことが
出来、スリランカに会いに行った。そして交友を続ける中、事件後、
英雄となっていた犯人の半生を知り、図らずも、スリランカの複雑な歴史
と社会構造が炙り出されることとなり、このノンフィクションを上梓する
こととなった。

シンハラ人とタミル人の血で血をあらう凄惨な殺戮・テロ・内戦が
長年にわたり続いたスリランカ。2009年、分離独立を掲げて
武装闘争を繰り広げたLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)の
北部支配地域をスリランカ政府軍が武力制圧することで内戦が終結した
とされている。
1983年、のちに「暗黒の7月」と呼ばれる
スリランカ全土を巻き込んだ大騒動から内戦が始まったとされるが、
背景には、かつての植民地の影響や、
複数の民族・言語・宗教・カーストなど、複雑な歴史的・社会的な事情
が存在した。著者の遭遇したハイジャック事件は、このような背景が
ありながらも、ちょっと変わった理由で起きたのである。

Amazon商品紹介ページより
戦闘の激化により避難する人々(2009年) Wikipediaより

本作『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』は1983年から2009年まで続いたスリランカ内戦について知るのに非常におすすめの作品です。

タイトルにありますように、著者自身が遭遇したハイジャックを縁に著者はスリランカへと向かうことになります。ハイジャック犯のセパラという人物とスリランカの現代史が絶妙にクロスして語られるのが本書です。

このハイジャック犯は直接的にはスリランカ内戦に大きく関わったとは言えません。むしろ受動的な存在とすら言えます。ただ、彼のことを深く知ろうとすれば当時のスリランカの時代背景も読み解かなければなりません。というわけで著者は現代スリランカの複雑な政治経済事情を追っていくことになります。

本書を読み始めてすぐにこの本の読みやすさ、面白さに私は驚くことになりました。著者の和田朋之さんは何者なのだろうか!著者プロフィールを見てみるとスリランカの専門家でも学者さんでもなく商社マンであったとのこと!このことにさらに衝撃を受けることになりました。

本書で書かれている内戦の経緯はかなり詳しいです。これまでスリランカの内戦について当ブログでも杉本良男著『仏教モダニズムの遺産』や川島耕司『スリランカと民族―シンハラ・ナショナリズムの形成とマイノリティ集団』『スリランカ政治とカースト—N.Q.ダヤスとその時代 1956~1965―』を紹介しましたが専門家が書いた著作とはまた違った読み味の作品となっています。

まさに学術書というよりノンフィクション!内戦の経緯が一般読者にもわかりやすくかつ臨場感たっぷりに語られます。ぐいぐい読ませます。私も一気に読み切ってしまいました。ものすごく面白いです。

スリランカ内戦についてはくしくも同じ彩流社から2010年に澁谷利雄著『スリランカ現代誌』が刊行されています。

こちらの本も内戦についてわかりやすく解説されているのですが、文化と宗教がいかに内戦に結びついたかという点に着眼点があります。スリランカの文化、宗教の専門家による作品ですのでその専門的な知見が生きた素晴らしい一冊です。

本書『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』とセットで読めばさらに深くこの内戦を学べること間違いなしです。

スリランカの内戦が具体的にどのように進んでいったのか、その中心人物はどう動き、どのような事件や戦闘があったのかということが時系列に沿ってわかりやすく語られます。これはものすごい一冊です。

学者さんとは違うビジネスの現場で長く活躍された和田朋之さんだからこその視点が生きている作品と言えるかもしれません。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「和田朋之『ハイジャック犯をたずねて—スリランカの英雄たち』~スリランカ内戦の経緯が詳しくまとめられたおすすめ作品!」でした。

次の記事はこちら

前の記事はこちら

関連記事

HOME